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    一人称

    g_arowana2

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    「俺は医者だ」をローさんの中心に据えてなんか書いてみようとして断念したもの。
    「自分の決めたことを理不尽なまでに実践する人間」って切り口から、ローさんと黒足さんの組み合わせに挑戦しようとしていた、今となってはレアな代物です。黒足さん視点で一人称。
     蝉の声が耳に突き刺さるような夏だった。
     細長い敷地に無理やり収まった、テーブル二つとカウンターで一杯の店が、念願叶って手に入れたおれの城だ。頭の天辺が陽に焦げるのも構わず浮かれて店構えを眺めていたおれは、ふと気配を感じて坂上を仰ぐ。
     真上の太陽に影の縮こまった住宅地。長身の人影がポツンと一つ、幽鬼じみて黒かった。白んだ世界でそこだけぽっかり昏い男が、陽炎の立つ坂を下りてくるところだった。
     足が店前で止まる。男はメニューの黒板が不在のイーゼルに目をやり、それから、おれへと視線を移す。

     カミサマがどんだけ気合いれてノミ振るったんだか、と呆れてしまうような彫刻的な面立ちで、まぁ野郎の顔面が整っていようがひしゃげていようがどうでもいいのだが、彫りの深さに目元が翳りを帯びていた。レディが浮足立ちそうな面だなこの野郎、と思わなくもないのだが、いかんせんびっくりするほどダウナーな面相のせいで隈にしか見えない。
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    wamanaua

    DOODLEラウグエラウ
    ※捏造幼少期、一人称僕、鶏の食肉加工
    ちぬま はじめて落としたのは鶏の首。びくびくと跳ね回る体から噴き出る血が足を汚し、真っ白な靴下と真っ白な靴が赤く、黒くなる。生暖かく不快なそれを僕は多分忘れないが、だから黒い靴下を履いているということはいつか思い出せなくなる。あれは子供のちょっとした背伸びだった。
     にいさんと僕は、同時期に僕たちを産んだ母たちが、また同時期に癇癪を起こして死んで、それを思うとむしゃくしゃしてたまらない父にほっぽられたのだ。子供が住むには良いとされる……クソ田舎の……娯楽だか療養だかのコロニーに預けられ、そこでほとぼりが冷めるまで過ごすことになった。
     僕は母が近々死ぬことに変な確信を持っていたのであまりショックではなかったが、兄は年相応に(その通りだ、僕たちはまだ手を繋いで寝ていたぐらいの年だ)悲しんでいたと思う。よく癇癪を起こし、物を投げたり壊したりするのは僕で、にいさんはどちらかといえばそんな僕を宥めすかす役だったが、あの頃は立場が逆転していた。夜になると泣いて起きるにいさんを撫でて共に寝、朝は起きるのが怖いというにいさんをくすぐって起こした。昼は人工太陽を見るのも嫌だというにいさんを引っ張って、いつもそこらの原っぱを転げ回っていた。
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