加州
あめお
训练果実を間引く話愛にあこがれる「愛とは何だと思う、坊主」
パチンパチンと剪定鋏を動かしながら一文字則宗は言った。
「えー? なにー?」
樹の反対側で同じく剪定鋏を操る加州清光が聞き返す。本日の畑当番である二振りは、桃の摘果作業を任されていた。より良い実を実らせるために、邪魔になるものを摘み取るのだ。
「何か言った?」
「愛とは何だろうなぁと」
「……それ今このタイミングで訊く?」
清光は一旦作業の手を止め、則宗のいる方を覗いた。「甲府でしてた話の続きなの?」その顔は訝しげだ。
「よく分かんないこと言って考えろってさ、刃生の課題みたいにしたのじじいだろ。まさかの途中経過も聞いてくるわけ?」
「そんなに重く受け止めてくれたか。嬉しいなぁ」
「別にじじいが言ったからじゃないし」
1255パチンパチンと剪定鋏を動かしながら一文字則宗は言った。
「えー? なにー?」
樹の反対側で同じく剪定鋏を操る加州清光が聞き返す。本日の畑当番である二振りは、桃の摘果作業を任されていた。より良い実を実らせるために、邪魔になるものを摘み取るのだ。
「何か言った?」
「愛とは何だろうなぁと」
「……それ今このタイミングで訊く?」
清光は一旦作業の手を止め、則宗のいる方を覗いた。「甲府でしてた話の続きなの?」その顔は訝しげだ。
「よく分かんないこと言って考えろってさ、刃生の課題みたいにしたのじじいだろ。まさかの途中経過も聞いてくるわけ?」
「そんなに重く受け止めてくれたか。嬉しいなぁ」
「別にじじいが言ったからじゃないし」
あめお
训练ひよこと沖田組と御前たまごかなケーキかな 卵を採るために飼育している、要するに雌鳥ばかりの集団だったはずなのだが。
ピヨピヨ鳴く可愛らしい声。
「こんなことってある?」
安定は小さなヒヨコを眺めながら言った。薄い黄色をした小さなヒヨコは足元をちょこまかと動き回っている。
「ニワトリってオスとメスで結構見た目違うはずなんだけどね……」
うーん、と清光は唸った。
どこで迷い込んだのか、騒ぎになった後で端から端まで探したがそれらしき雄鶏は見当たらず、みんなで首を傾げた。ヒヨコが生まれてしまったものは仕方ないので、相談して飼育できる環境を整えたのだった。
その甲斐あってかヒヨコは元気にピヨピヨピヨと。
「……可愛い」
清光は屈んで視線を低くする。手のひらを上に向けて差し出すと、ヒヨコは清光めがけて走ってきてちょこんと手のひらに乗った。
1284ピヨピヨ鳴く可愛らしい声。
「こんなことってある?」
安定は小さなヒヨコを眺めながら言った。薄い黄色をした小さなヒヨコは足元をちょこまかと動き回っている。
「ニワトリってオスとメスで結構見た目違うはずなんだけどね……」
うーん、と清光は唸った。
どこで迷い込んだのか、騒ぎになった後で端から端まで探したがそれらしき雄鶏は見当たらず、みんなで首を傾げた。ヒヨコが生まれてしまったものは仕方ないので、相談して飼育できる環境を整えたのだった。
その甲斐あってかヒヨコは元気にピヨピヨピヨと。
「……可愛い」
清光は屈んで視線を低くする。手のひらを上に向けて差し出すと、ヒヨコは清光めがけて走ってきてちょこんと手のひらに乗った。
あめお
训练自撮りで盛る話可愛いをつくらなくても 小顔補正、色調修正、目の拡大。頬紅だって指先ひとつでまるで恋する少女のように。
「さすが、清光は覚えるのが早いわねぇ。やっぱり若い子は違うわね」
「俺いちおー主より先に生まれてるんだけど?」
笑う清光は満更でもなさそうだ。
政府から配布されたタブレットに真っ先に興味を持ったのは清光だった。機械に疎い審神者が清光に操作を任せ、好きなアプリを自由にインストールしてもよいと言うので、清光は「ずっとやってみたかったんだー」とカメラアプリをダウンロードしてきた。
審神者と自撮りして、一緒に画面を覗き込んでああだこうだと指を滑らせる。肌がつるんとして顔が縮んだり膨れたり、目が大きくなったり小さくなったり。
なるほどこれが「盛る」というやつかと楽しくなってきたところで、
1093「さすが、清光は覚えるのが早いわねぇ。やっぱり若い子は違うわね」
「俺いちおー主より先に生まれてるんだけど?」
笑う清光は満更でもなさそうだ。
政府から配布されたタブレットに真っ先に興味を持ったのは清光だった。機械に疎い審神者が清光に操作を任せ、好きなアプリを自由にインストールしてもよいと言うので、清光は「ずっとやってみたかったんだー」とカメラアプリをダウンロードしてきた。
審神者と自撮りして、一緒に画面を覗き込んでああだこうだと指を滑らせる。肌がつるんとして顔が縮んだり膨れたり、目が大きくなったり小さくなったり。
なるほどこれが「盛る」というやつかと楽しくなってきたところで、
あめお
训练駄菓子屋に行く話お安い御用 買い出しに出掛けた帰り道、可愛らしい小間物屋の前で足を止めていたから、てっきり欲しいものでもあるのかと思ったのだ。
だが加州清光がそれらを眺める眼差しは、どこか憂いを帯びていた。
何か買ってやろうかと一文字則宗が声を掛けるより早く加州は再び歩き出し、則宗はそれを黙って見送った。
こまごました装飾品を好んで身に付ける彼と店先での様子がうまく結びつかず、帰城後に審神者に訊いてみた。審神者曰く、加州はあまり店というものに良い思い出は無いらしい、と。嫌いではなさそうとのことだが。
それとなく濁されたが、どうやらただの刀であった頃の記憶が関係しているらしかった。
(昔のことは、僕にはどうにもできないが……)
1826だが加州清光がそれらを眺める眼差しは、どこか憂いを帯びていた。
何か買ってやろうかと一文字則宗が声を掛けるより早く加州は再び歩き出し、則宗はそれを黙って見送った。
こまごました装飾品を好んで身に付ける彼と店先での様子がうまく結びつかず、帰城後に審神者に訊いてみた。審神者曰く、加州はあまり店というものに良い思い出は無いらしい、と。嫌いではなさそうとのことだが。
それとなく濁されたが、どうやらただの刀であった頃の記憶が関係しているらしかった。
(昔のことは、僕にはどうにもできないが……)
あめお
训练畑当番をサボる御前冬ごもり終了のお知らせ「おいこら一文字則宗! 畑当番!」
スパンと勢いよく襖を開けた加州清光は声を荒げた。
「やあ坊主。威勢がいいな」
怒鳴られてもびくともしない一文字則宗はまるで高みの見物でもしているかのように呑気に笑うが、高みどころか他人事でもない。正真正銘、畑当番の当事者である。
「炬燵でぬくぬくしてる場合? 内番すっぽかさないでよ」
「坊主も入るか?」
「入るわけないでしょーが。まったく、獅子王も南泉もとっくに集合して働いてんのにさー」
「うはは。隠居のじじぃだ、大目に見てもらおう」
「獅子王の方があんたより年上じゃん……」
はあ、と加州はため息をついた。
この手のやり取りはしょっちゅうしている。もともと内番をすっぽかすじじい連中を連行する係に任命されがちだった加州だが、一文字則宗が来てから明らかに仕事量が増えた。
1032スパンと勢いよく襖を開けた加州清光は声を荒げた。
「やあ坊主。威勢がいいな」
怒鳴られてもびくともしない一文字則宗はまるで高みの見物でもしているかのように呑気に笑うが、高みどころか他人事でもない。正真正銘、畑当番の当事者である。
「炬燵でぬくぬくしてる場合? 内番すっぽかさないでよ」
「坊主も入るか?」
「入るわけないでしょーが。まったく、獅子王も南泉もとっくに集合して働いてんのにさー」
「うはは。隠居のじじぃだ、大目に見てもらおう」
「獅子王の方があんたより年上じゃん……」
はあ、と加州はため息をついた。
この手のやり取りはしょっちゅうしている。もともと内番をすっぽかすじじい連中を連行する係に任命されがちだった加州だが、一文字則宗が来てから明らかに仕事量が増えた。
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完毕加州に連れられ、本丸の中を移動する。訳も分からず、ただ付いていくしかない審神者が辿り着いた場所は…。
※何でも許せる人向け
※暗いお話
Twitterの再掲作品
「 」の手記「ねぇ!どこ行くの⁉待って、清光!」
日が傾いてきた黄昏時。いつもは聞こえるみんなの声も、今日は遠征で人が少ない事もあり、しんとしている。私はというと、清光に手を引かれている。清光は歩くのが早く、私は付いていくことで精一杯。
「待たない。早くしないと…。それに…待ったら主は逃げちゃうでしょ?」
こちらを見ずに、そう告げた清光。何を急いでいるのだろうか。私がいた納屋から、畑、庭から裏口を通って廊下へ。そのまま居間と厨の前を通る。おかしい、どうして誰とも会わないのだろうか。疑問に思いつつ、階段を上って奥の奥まで行けば…。
「…私の部屋?」
問いかけに答えるでもなく、清光はそのまま進んでいく。私から見えるのは、彼の背中のみ。清光がどのような表情をしているのかなんて、こちらからは知る由もない。ここで何をするのか、など皆目検討もつかない。
2908日が傾いてきた黄昏時。いつもは聞こえるみんなの声も、今日は遠征で人が少ない事もあり、しんとしている。私はというと、清光に手を引かれている。清光は歩くのが早く、私は付いていくことで精一杯。
「待たない。早くしないと…。それに…待ったら主は逃げちゃうでしょ?」
こちらを見ずに、そう告げた清光。何を急いでいるのだろうか。私がいた納屋から、畑、庭から裏口を通って廊下へ。そのまま居間と厨の前を通る。おかしい、どうして誰とも会わないのだろうか。疑問に思いつつ、階段を上って奥の奥まで行けば…。
「…私の部屋?」
問いかけに答えるでもなく、清光はそのまま進んでいく。私から見えるのは、彼の背中のみ。清光がどのような表情をしているのかなんて、こちらからは知る由もない。ここで何をするのか、など皆目検討もつかない。
906
完毕ちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の獅子王×加州SSです。本編メインカプは🍯🌰ですが、こちらは🌰の高校の先輩獅子王くんと🍯さんの同僚加州くんの話。チラチラ本編のネタばれアリ。また、D/S初心者の勝手な解釈がてんこ盛りの何でも許せる方向けの極みですので、自衛お願いたします。
ちゅきこさん、いつもありがとうございます✨
カサナル、ココロ「痛っ・・・!」
思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。
一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。
何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
3678思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。
一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。
何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
seki
供养休憩時間に暇してる加州くんがたまたま来た肥前くんとお茶して駄弁る話、または肥前くんの絶望は加州くんの希望という話。※CPなし
※刀時代に折れていることに触れています(刀剣男士としての破壊描写はありません)
※独自解釈を多量に含んでいます
隣の芝生は青くて綺麗、だからここには素敵な花を咲かせましょう 空の色も星の瞬きも覚えている。鼓舞する言葉にひりつく緊張感、響き渡る怒号とすぐに消えていく悲鳴。翻る浅葱色の向こう側に広がる真っ赤な血は一体誰のものなのか。確認しようとしたのに、気がつけば辺り一面〝くらやみ〟の中。
それが俺の見た最期の景色。
本丸の昼下がりは静かでいい。
目が回るほど忙しくてあっという間に過ぎ去った午前の当番と、物量の鬼といえる昼餉の後片付けと掃除を終わらせた加州清光は、食堂の片隅でしばしの休息に耽っていた。卓の上に突っ伏して片側の頰をぺたりとつけて、時折り目を瞑ってはまた開ける。
さっきまで同じ卓で茶を啜っていた獅子王と松井江は本日の業務終了、それぞれ別の用事へ出掛けていった。軽快なリズムが蝉の大合唱に混じって聞こえてくるから、江の面々は恒例のレッスン中なのだろう。
3234それが俺の見た最期の景色。
本丸の昼下がりは静かでいい。
目が回るほど忙しくてあっという間に過ぎ去った午前の当番と、物量の鬼といえる昼餉の後片付けと掃除を終わらせた加州清光は、食堂の片隅でしばしの休息に耽っていた。卓の上に突っ伏して片側の頰をぺたりとつけて、時折り目を瞑ってはまた開ける。
さっきまで同じ卓で茶を啜っていた獅子王と松井江は本日の業務終了、それぞれ別の用事へ出掛けていった。軽快なリズムが蝉の大合唱に混じって聞こえてくるから、江の面々は恒例のレッスン中なのだろう。