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    嗅覚

    miyase003

    DOODLEちまい雷兄弟。
    ‪身内から畏怖され敬遠されてきたためにパーソナルスペースを侵されることに慣れていない兄と嫌がられていることを物ともせず野生の嗅覚でどこまでも兄を探し出す弟‬の話。
     飼われた動物はよく鳴くという。
     無論躾次第ではあるだろう。よく訓練された馬は嘶くことも少ない。ただ、愛玩動物は鳴き声一つとっても愛らしいというから、それを躾として態々制限するものではないかもしれない。餌を強請る時や主人の手を欲する時に喉から鳴らす鈴を転がしたかのような音はヒトの耳には心地よく、とりわけ仔どもは格別だという。
    「あにじゃー」
     仔ども。つまり、幼少を指す。
    「あにじゃー」
     ヒトもまた動物だろう。
    「あにじゃー」
     甘えた声で呼ばれれば飛んでいくという親戚の話を聞いたが、果たしてそれは本当だろうか。むしろ自分は逆だ。
    「あにじゃー」
     弟が今日も兄を求めて探し回っている。ただただ繰り返される自分を呼ぶ声に、ライコウは微動だにせず、ただ耳をそばだてていた。それにどれ程の意味があるかは考えるだけ頭が痛かったが、どうしたってライコウにはそれしかできなかった。物音一つ立てるだけで、この部屋を特定されてしまう。つまり、同時に逃げ道を封じられるも同じだった。
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