坊ちゃん
すなの
DONE庭ナニ+ウォーロック坊ちゃん揺籃のばら「それ、どうするの?燃やしちゃうの?」
声をかけられて手を止める。顔を上げると屋敷の坊ちゃんがすっかり枝葉を落として裸になった薔薇の木を心配げに見下ろしていた。
冬支度のために全部葉をむしって、要らない枝を切り落としたところだった。春が来ればまた新しい花をつけるようになるが、幼い彼には枯れ木にしか見えないだろう。
「フランシスは……」コートの襟の内側で曖昧に名を呼ばれる。続きを待っていると少年はちらりとこちらを見、はふ、と白い息だけを吐いた。
「どうしましたかな? ウォーロック坊ちゃん」
庭師はぱっぱっと手に着いた泥を払って作業の手を完全に止めた。しゃがんだままウォーロックに向き直ると、大きな目が探るようにみつめてくる。
1633声をかけられて手を止める。顔を上げると屋敷の坊ちゃんがすっかり枝葉を落として裸になった薔薇の木を心配げに見下ろしていた。
冬支度のために全部葉をむしって、要らない枝を切り落としたところだった。春が来ればまた新しい花をつけるようになるが、幼い彼には枯れ木にしか見えないだろう。
「フランシスは……」コートの襟の内側で曖昧に名を呼ばれる。続きを待っていると少年はちらりとこちらを見、はふ、と白い息だけを吐いた。
「どうしましたかな? ウォーロック坊ちゃん」
庭師はぱっぱっと手に着いた泥を払って作業の手を完全に止めた。しゃがんだままウォーロックに向き直ると、大きな目が探るようにみつめてくる。
4omacaron
DONEリクエストカイト・伊織・響也の浴衣
リクエストいただいたのが真夏なのですが完成が真冬になってしまい大変申し訳ありませんでした!!!
夢カンの坊ちゃんたちの組み合わせですね…夏祭りの謎テンションでお揃いの光るブレスなんか買ってたら面白いなという妄想込みです(3人とも翌朝、なんでこんなの買ったんだ…てなるところもかわいい)
リクエストありがとうございました!
sabasavasabasav
PASTルク→←坊。フォロワさんの坊ちゃんをお借りしました。(性に奔放な坊ちゃんです、多くのキャラと関係を持っています)
▽
特徴的な足音を耳にして、ルックは俯いていた顔を上げた。視線の先に、しゃなりしゃなりと歩く愛しい人の姿が見えた。彼の導線には背後にある石板がある。ルックの元へ歩みを進めているのは明白だった。
「それはどうしたの」
ただ、名を呼ぶ前にルックがそう問うてしまったのは、彼の腕の中にあるものがあまりにも意外なものだったからだ。
フィリアーデ・マクドール。かの戦争で英雄と呼ばれるようになった人。一線から退いているというのに戦争真っ只中の都市同盟の本拠地に滞在しているのは、ここの軍主にその腕を買われたかららしい。
曰く、利害が一致したから参加しているとのこと。
2361特徴的な足音を耳にして、ルックは俯いていた顔を上げた。視線の先に、しゃなりしゃなりと歩く愛しい人の姿が見えた。彼の導線には背後にある石板がある。ルックの元へ歩みを進めているのは明白だった。
「それはどうしたの」
ただ、名を呼ぶ前にルックがそう問うてしまったのは、彼の腕の中にあるものがあまりにも意外なものだったからだ。
フィリアーデ・マクドール。かの戦争で英雄と呼ばれるようになった人。一線から退いているというのに戦争真っ只中の都市同盟の本拠地に滞在しているのは、ここの軍主にその腕を買われたかららしい。
曰く、利害が一致したから参加しているとのこと。
よるのなか
DONE2023/11/25〜26開催幻水2webオンリー「始まりの宴」展示作品です。開催おめでとうございます、ありがとうございます!しぶ転記済みですが、こちらもパスワード外しました。。英雄イベント直後から始まる二人の話。これから主坊になっていく途上の話のため、色気はありませんすみません…ルックとナナミもいます。
坊ちゃん→アルト、2主→ミラン
高い高い、空の下で一
空が高く感じる。暑い夏が過ぎ去って、秋が来たんだなとミランは空を見上げながら思った。
こんな空の高い日にはゲンカクはどの辺りにいるのだろうと、考えることがある。ゲンカクを弔った日、ナナミが言っていた。じいちゃんのお墓はここにあるけれど、きっとじいちゃんは空の上で、わたし達のことを見守りながら空の旅を楽しんでいるんだろうと。本当のところはわからない。だが、あの頃はそう思うことで、ミランもナナミも少しだけ前向きになれていた。ナナミはいつも、そうやってミランに光を与えてくれる。今日のような日は、ゲンカクもいつもよりも高いところにいるのだろうか。
そんなことを考えながら、空を見上げながら歩いているミランの耳に、流れ込んできたものがあった。これは。
13088空が高く感じる。暑い夏が過ぎ去って、秋が来たんだなとミランは空を見上げながら思った。
こんな空の高い日にはゲンカクはどの辺りにいるのだろうと、考えることがある。ゲンカクを弔った日、ナナミが言っていた。じいちゃんのお墓はここにあるけれど、きっとじいちゃんは空の上で、わたし達のことを見守りながら空の旅を楽しんでいるんだろうと。本当のところはわからない。だが、あの頃はそう思うことで、ミランもナナミも少しだけ前向きになれていた。ナナミはいつも、そうやってミランに光を与えてくれる。今日のような日は、ゲンカクもいつもよりも高いところにいるのだろうか。
そんなことを考えながら、空を見上げながら歩いているミランの耳に、流れ込んできたものがあった。これは。
なしお
DOODLEモブディル未遂 ただの性癖モブに下卑た評価される坊ちゃん(セレベンツの成人したて坊ちゃんならイケるよ)が見たかっただけの捏造・妄想
多分18歳とかの坊ちゃんがモブおじさんに勝ってます 2
すなの
DONE庭ナニ+ウォーロック坊ちゃんFluite 結論から言えばウォーロック・ダウリングは反キリストではなかったが、かと言って凡夫というわけでもなかった。父譲りの野心と母譲りの豪胆さは周りの子どもたちから彼を際立たせたし、素直で賢く、恵まれていた。そして、彼を見守ってきた天使と悪魔を五年も騙しおおせた程に悪魔的ないたずらっ子でもあった。
事の発端は六歳になったウォーロックが探偵もののドラマにハマったことだった。ウォーロックの家には何人もの使用人が暮らしていたが、その中にフランシスという庭師の男がいた。フランシスは少し浮世離れしている変わり者だったが、彼がこの家に来てからというもの庭の薔薇はまるで天使に祝福されたかのように美しく咲き誇り、屋敷に住む者の目を楽しませるようになった。ウォーロック少年もこの男を気に入っていた。彼の身なりは粗末だったが、土に汚れたポケットの中にはなぜかいつも似つかわしくない高級店のバタークッキーやチョコレートが入っているのだ。さて、ウォーロックは探偵ごっこの最中、このフランシスの手元に興味深い謎を発見した。最初は花壇の土に混ざった石の欠片かと思ったが、どうもそうではない。キラキラした細かな輝きが庭師の指に付いている。一体あれはなんだろうか。あの人の善い庭師が屋敷の誰にも秘密で触れているなにか。それは何なのか? ウォーロックは不思議な庭師の秘密を掴めるかもしれないとわくわくした。
3692事の発端は六歳になったウォーロックが探偵もののドラマにハマったことだった。ウォーロックの家には何人もの使用人が暮らしていたが、その中にフランシスという庭師の男がいた。フランシスは少し浮世離れしている変わり者だったが、彼がこの家に来てからというもの庭の薔薇はまるで天使に祝福されたかのように美しく咲き誇り、屋敷に住む者の目を楽しませるようになった。ウォーロック少年もこの男を気に入っていた。彼の身なりは粗末だったが、土に汚れたポケットの中にはなぜかいつも似つかわしくない高級店のバタークッキーやチョコレートが入っているのだ。さて、ウォーロックは探偵ごっこの最中、このフランシスの手元に興味深い謎を発見した。最初は花壇の土に混ざった石の欠片かと思ったが、どうもそうではない。キラキラした細かな輝きが庭師の指に付いている。一体あれはなんだろうか。あの人の善い庭師が屋敷の誰にも秘密で触れているなにか。それは何なのか? ウォーロックは不思議な庭師の秘密を掴めるかもしれないとわくわくした。
sabasavasabasav
DONEテッドの日おめでとうございます。坊ちゃんとのとある日。紋章に囚われているテッド。
▽
「テッド、狩りに行くんだろう? 僕も連れて行ってくれないか」
「えっ? お前を?」
突拍子もないことを言い出すのは今に始まったことではなかったが、まさかそう言われるとは思わず、テッドはティアを指差し怪訝な表情を浮かべた。
「手助けはできないだろうけど、テッドが狩りをするところが見てみたいんだ。それに、狩りをするなら街の外に出るだろう? 僕、大きくなってからはまだ、この街から出たことないから……外を見てみたい」
ああ、成る程。
街の外に出てみたいという興味なら、ティアの提案にも合点がいく。
心身ともに鍛え上げられながらも、綺麗に整備された街から出してもらえない五将軍の嫡男は、遠出がしてみたいと何度かグレミオに言っていたことがある。
4207「テッド、狩りに行くんだろう? 僕も連れて行ってくれないか」
「えっ? お前を?」
突拍子もないことを言い出すのは今に始まったことではなかったが、まさかそう言われるとは思わず、テッドはティアを指差し怪訝な表情を浮かべた。
「手助けはできないだろうけど、テッドが狩りをするところが見てみたいんだ。それに、狩りをするなら街の外に出るだろう? 僕、大きくなってからはまだ、この街から出たことないから……外を見てみたい」
ああ、成る程。
街の外に出てみたいという興味なら、ティアの提案にも合点がいく。
心身ともに鍛え上げられながらも、綺麗に整備された街から出してもらえない五将軍の嫡男は、遠出がしてみたいと何度かグレミオに言っていたことがある。
緊縛師ボンレス(ル×ガの民)
DONE10/01眼鏡の日とのことで、ガイさん眼鏡をば。いつもの丸眼鏡じゃなくてウェリントンにしました。パパ度が上がる気がする。
2枚目お坊ちゃんは欠伸しながら起きた感じです。 2
sabasavasabasav
DONEカミュ坊。カミュー×坊ちゃんです。なんでもいいです!と言われると奇を衒いたくなる。
でろんでろんに甘くしました。下手なR指定ものより恥ずかしい。
▽
頁を捲る。文字を辿る。
時間を忘れられる本を読むという行為が、ティアは好きだった。
言の葉は話半分に聞け。目で触れる情報は最大限集めろ。
かの五将軍に属していたテオ・マクドールはその戦果と威厳とは裏腹に、息子に対して己と同様の人生を歩むことを強制しなかった。屋敷に滞在する時間は決して多くはなかったが、そんな貴重な時間を子供を諭し愛でることに最大限使用する、人としてできた父親だった。
不明瞭さと、代え難い貴重なもの。ティアが父親から教えを受けた数少ない教訓の一つが、情報収集の重要性だった。
それに倣い、時間を見付ければ足を運び、書物に目を通す癖がついた。
4312頁を捲る。文字を辿る。
時間を忘れられる本を読むという行為が、ティアは好きだった。
言の葉は話半分に聞け。目で触れる情報は最大限集めろ。
かの五将軍に属していたテオ・マクドールはその戦果と威厳とは裏腹に、息子に対して己と同様の人生を歩むことを強制しなかった。屋敷に滞在する時間は決して多くはなかったが、そんな貴重な時間を子供を諭し愛でることに最大限使用する、人としてできた父親だった。
不明瞭さと、代え難い貴重なもの。ティアが父親から教えを受けた数少ない教訓の一つが、情報収集の重要性だった。
それに倣い、時間を見付ければ足を運び、書物に目を通す癖がついた。
戸森鈴子☆とらんぽりんまる
DOODLEとあるカップル(坊ちゃんとメイドさん「坊ちゃまの髪はサラサラですね」
「俺なんかより、メイドさんの方が綺麗だ」
「まぁ……そんな」
完璧な二人の世界
実際は名前呼び
書き貯めしたら公開予定の和風ファンタジー小説のキャラ二人 3
sabasavasabasav
DONEサンチェスの心境とマッシュとの関係。好き勝手に妄想しました。
彼はどうしてああいうことをしたのか。個人的解釈です。
▽
反乱軍と会議で名を付けられた、反勢力の集団を監視してほしい。
それは皇帝閣下直々の命ではなくアイン・ジードたっての願いだった。国の重鎮が表立って動くことがあっては帝国の──バルバロッサの威厳に関わるということらしい。概ねその提案は理由を含めて同調できるものだったため、サンチェスは少し思考を巡らせた後、同意した。
今思えば、そのときのアインは何とも言えぬ複雑な表情を浮かべていた。諜報員だと知れればこの身がどうなるか分からない。危険な任務を与えた故の思慮だと思っていたのだが、サンチェスは遠くないうちにその表情の意味を理解することになった。
反乱軍リーダーと遭遇したのは、寂れた街の酒場の一角であった。
4126反乱軍と会議で名を付けられた、反勢力の集団を監視してほしい。
それは皇帝閣下直々の命ではなくアイン・ジードたっての願いだった。国の重鎮が表立って動くことがあっては帝国の──バルバロッサの威厳に関わるということらしい。概ねその提案は理由を含めて同調できるものだったため、サンチェスは少し思考を巡らせた後、同意した。
今思えば、そのときのアインは何とも言えぬ複雑な表情を浮かべていた。諜報員だと知れればこの身がどうなるか分からない。危険な任務を与えた故の思慮だと思っていたのだが、サンチェスは遠くないうちにその表情の意味を理解することになった。
反乱軍リーダーと遭遇したのは、寂れた街の酒場の一角であった。
緊縛師ボンレス(ル×ガの民)
TRAINING服飾ブランドさんのお写真(https://www.instagram.com/p/CwXlp1MNmcM/)をお坊ちゃんでポーズ模写。二ヶ月弱ぶりに絵を描きました(ポーマニを除く)。hotate_151
DOODLEつよつよメイドさんと坊ちゃん。しちかるなんでもうありとあらゆることを教え込むメイドちゃん。下の世話までするよ!!!そんなハートフルでちょっぴりえちちなハードボイルドストーリーが始まるとか始まらないとか😌sabasavasabasav
DOODLE主坊。王様ED設定。デュナンの民を人質にして坊ちゃんをその場に縛り付けるにす、に滾って書いたもの。にす、少し狂うととんでもないことをしでかしそうな危うさがあっていいですね……
▽
──人の息吹を感じる。
喧騒から隔離された部屋で、歓声が遠くで聞こえた。
この国は都市同盟という名を捨て、デュナンとして産声を上げた。その、建国を祝して式典が行われている最中だ。
そんな中でティアは一人、部屋で本の頁を捲っている。
この部屋に鍵はかけられていない。見張りが立てられているわけでもない。だというのに、ティアはこの部屋を牢獄のようだと称した。
足下を見遣ると、存在しないはずの鎖が巻き付いているのが見える。雁字搦めにされたそれは、この部屋の先、明るい未来を夢見て王に期待する民草に繋がっていた。
約束の地にてジョウイと武器を交え、彼の想いとともに片割れの紋章を宿したリアンは、削られていた寿命が戻ってきただけではなく、強大な力の副産物としてティアと同じく体の成長を止めることとなった。
4494──人の息吹を感じる。
喧騒から隔離された部屋で、歓声が遠くで聞こえた。
この国は都市同盟という名を捨て、デュナンとして産声を上げた。その、建国を祝して式典が行われている最中だ。
そんな中でティアは一人、部屋で本の頁を捲っている。
この部屋に鍵はかけられていない。見張りが立てられているわけでもない。だというのに、ティアはこの部屋を牢獄のようだと称した。
足下を見遣ると、存在しないはずの鎖が巻き付いているのが見える。雁字搦めにされたそれは、この部屋の先、明るい未来を夢見て王に期待する民草に繋がっていた。
約束の地にてジョウイと武器を交え、彼の想いとともに片割れの紋章を宿したリアンは、削られていた寿命が戻ってきただけではなく、強大な力の副産物としてティアと同じく体の成長を止めることとなった。
ekaki
DOODLE坊ちゃんの独占欲カスミちゃんに組み手で勝ったらつき合えるみたいな噂が出て
やたら熱心に訓練うけるようになったモブ兵たちに
このぐらい強くないと勝てないよっていうのをわからせる坊ちゃんみたいなね…うん…(カスミちゃんもぼんやりとは噂を知りつつも、熱心だからいいかって思ってる) 5
月刊歩行水銀
PROGRESSseisのサンプルにあげる用の冒頭で、原稿の進捗です。全く推敲していないので注意。もう付き合い済みのseisで、seのがいいとこの名家のお坊ちゃんということを知る、ドタバタ話です
※its家を大幅に捏造しています。原作のits家とは全くもって関係ありません。
※seが実家では袴を着ているという設定があります。(薄味通り越して香る程度です) 2553
lanthan_57
DOODLE(擬注意)🐯→お坊ちゃんだからいいもの着てる
🥷→おしゃれになる努力を惜しまない
💪→何着ても似合う
トラスクは全員おしゃれさんなイメージだけど、全員違ったベクトルだなあと思ったりする。
ame
DOODLEルク坊です。エアスケブありがとうございます!!この坊ちゃんはマオと言います。
解放戦争から数百年後、群島諸国のどこかの島で小料理屋をしているマオ。
店が有名になると人が集まってしまうため人気になる手前で夜逃げする…戦乱を呼ぶソウルイーターがあるためである。
そんな数十回目の引越しを終えたある日、追いかけて来たルックに捕まってしまう。
「やっと見つけた、僕のマオ」
sabasavasabasav
DOODLE幻水2王様ED後の坊ちゃんとルック。真の紋章を宿した副産物とも呼べる不老の話。 ▽
“約束の地”へと向かったリアンが戻ってきたのは、一ヶ月ほど前のことだった。
軍主を責務から解放したものとばかり思っていた宿星達は、彼の右手の甲に煌めく、以前にはない雰囲気を醸し出している真の紋章を見、それを持つ意味を察した。
最愛の姉を喪った、これ以上の地獄を味わおうと言うのか。それとも、進む道が地獄へと続いていることに気付いていないのか。その質問すら、既に問いかける価値すらない。引き返せない道を進んでしまった相手に声をかけられるほど、ルックは感情を捨てきれなかった。
守りたかったはずの親友を手にかけ、リアンは絶対的な能力と不老の体を手に入れた。その事実はルックの中にもう一つ、癒えぬ傷をつけた。
2827“約束の地”へと向かったリアンが戻ってきたのは、一ヶ月ほど前のことだった。
軍主を責務から解放したものとばかり思っていた宿星達は、彼の右手の甲に煌めく、以前にはない雰囲気を醸し出している真の紋章を見、それを持つ意味を察した。
最愛の姉を喪った、これ以上の地獄を味わおうと言うのか。それとも、進む道が地獄へと続いていることに気付いていないのか。その質問すら、既に問いかける価値すらない。引き返せない道を進んでしまった相手に声をかけられるほど、ルックは感情を捨てきれなかった。
守りたかったはずの親友を手にかけ、リアンは絶対的な能力と不老の体を手に入れた。その事実はルックの中にもう一つ、癒えぬ傷をつけた。
sabasavasabasav
DOODLEテッドと坊ちゃん。二個前の話の続き。幻水1より1年ほど前。
▽
釣り糸を垂らすのが、いつしか二人の会話の終焉になっていた。
僅かに鳴った水の音など、すぐに川のせせらぎが流していく。後に残るのは、木々のざわめきと、鳥が鳴く声、絶え間なく流れる水音。
これがただの遊びならば会話でも何でもしながら和やかに嗜むが、ティア相手ではそういうわけにもいかない。
魚を釣った量で競う──釣り竿を手にしたときには必ず発生する勝負事がある。
ある日、釣りで競争しないかと提案したら、意外にもティアは話に乗ってきたのである。始めの頃は経験があるからとハンデを付けて楽しんでいたこの遊びも、最近は本気で挑まねば負けそうになることすらあった。
2324釣り糸を垂らすのが、いつしか二人の会話の終焉になっていた。
僅かに鳴った水の音など、すぐに川のせせらぎが流していく。後に残るのは、木々のざわめきと、鳥が鳴く声、絶え間なく流れる水音。
これがただの遊びならば会話でも何でもしながら和やかに嗜むが、ティア相手ではそういうわけにもいかない。
魚を釣った量で競う──釣り竿を手にしたときには必ず発生する勝負事がある。
ある日、釣りで競争しないかと提案したら、意外にもティアは話に乗ってきたのである。始めの頃は経験があるからとハンデを付けて楽しんでいたこの遊びも、最近は本気で挑まねば負けそうになることすらあった。
sabasavasabasav
DOODLE幻水総選挙応援のために書いたもの。坊ちゃん無双。 ▽
ぱち、と火花が散る。
時折、火が弱くならないよう拾った枝を焼べながら、ティアはゆらゆらと揺れる焚火を見ていた。
炎は不思議なものだ。生き物から全てを奪う存在でありながら、こうして暖め癒やしてもくれる。
様々なことが脳裏を過るこの時間が、辛く、愛おしいものになってからどれくらいの年月が経っただろうか。どうにも時間の感覚が鈍くなってしまうのは、真の紋章を宿す弊害の一種なのかもしれない。次、誰かに出会ったら尋ねてみようかと思い立つ。
ティアは乱雑に数本の枝を投げ入れると、両腕を上げ大きく伸びをした。
瞬間、風が通り過ぎる木々のざわめきと、枝が折れる音。
2821ぱち、と火花が散る。
時折、火が弱くならないよう拾った枝を焼べながら、ティアはゆらゆらと揺れる焚火を見ていた。
炎は不思議なものだ。生き物から全てを奪う存在でありながら、こうして暖め癒やしてもくれる。
様々なことが脳裏を過るこの時間が、辛く、愛おしいものになってからどれくらいの年月が経っただろうか。どうにも時間の感覚が鈍くなってしまうのは、真の紋章を宿す弊害の一種なのかもしれない。次、誰かに出会ったら尋ねてみようかと思い立つ。
ティアは乱雑に数本の枝を投げ入れると、両腕を上げ大きく伸びをした。
瞬間、風が通り過ぎる木々のざわめきと、枝が折れる音。
sabasavasabasav
DOODLEカイ師匠と坊ちゃん幻水2後、再び旅に出る前の小咄
▽
闇の中に、絵の具を一滴垂らしたようにひとつの黄金が輝く夜であった。
既に眠りに落ちているだろう兵士達を起こさぬように足音を消し、己を闇に潜ませながら、カイはトランの城を歩んでいた。眼下に望む城の入口には煌々と光が灯っている。
久々に着込んだ胴着ではない正装に、年のせいか前屈みになることが増えた背筋がシャンと伸びる心地がする。緊張感はない。己の身に沸き立つのは、ただ高揚した心だけだった。肩に担ぐ手に馴染んだ棍が酷く軽く感じるほどに。
トラン共和国の武術指南役となってからの日々は、カイにとって何不自由なく過ごすことができる穏やかなものだった。
英雄を輩出したこともあってか、トランの兵士達は誰も彼も、向上心をもってカイの精神と業を教え乞うていた。不真面目な者は皆無な上、良い太刀筋のものも少なくはない。
3346闇の中に、絵の具を一滴垂らしたようにひとつの黄金が輝く夜であった。
既に眠りに落ちているだろう兵士達を起こさぬように足音を消し、己を闇に潜ませながら、カイはトランの城を歩んでいた。眼下に望む城の入口には煌々と光が灯っている。
久々に着込んだ胴着ではない正装に、年のせいか前屈みになることが増えた背筋がシャンと伸びる心地がする。緊張感はない。己の身に沸き立つのは、ただ高揚した心だけだった。肩に担ぐ手に馴染んだ棍が酷く軽く感じるほどに。
トラン共和国の武術指南役となってからの日々は、カイにとって何不自由なく過ごすことができる穏やかなものだった。
英雄を輩出したこともあってか、トランの兵士達は誰も彼も、向上心をもってカイの精神と業を教え乞うていた。不真面目な者は皆無な上、良い太刀筋のものも少なくはない。
sabasavasabasav
DOODLEルク坊違いを愛する坊ちゃんと全て同じになりたいルック
▽
何もない空を見て安らぐと言った、ティアの横顔が忘れられない。
その言葉を聞いたとき、ルックの全てを占めたのは悲しみだった。何もない空を見上げて寂しいと感じていたからだ。相反する感想は、気持ちの共有ができないことを知る瞬間でもあった。
何事も一緒でいたいと思うことは不思議なことではない。その相手が、愛おしくて堪らない存在であれば尚更だ。
住む場所や周りの人間関係が異なれば、それは互いが思いもよらない思考回路を持っていたとしても不思議ではないし、ルックとティアが別の存在であるように、考え方が異なるのは当たり前だ。
脳が違うからだ。二人の人間にはそれぞれ一つの脳があって、いくら愛し合ってもその脳を二人が共有して生活することはできない。
2815何もない空を見て安らぐと言った、ティアの横顔が忘れられない。
その言葉を聞いたとき、ルックの全てを占めたのは悲しみだった。何もない空を見上げて寂しいと感じていたからだ。相反する感想は、気持ちの共有ができないことを知る瞬間でもあった。
何事も一緒でいたいと思うことは不思議なことではない。その相手が、愛おしくて堪らない存在であれば尚更だ。
住む場所や周りの人間関係が異なれば、それは互いが思いもよらない思考回路を持っていたとしても不思議ではないし、ルックとティアが別の存在であるように、考え方が異なるのは当たり前だ。
脳が違うからだ。二人の人間にはそれぞれ一つの脳があって、いくら愛し合ってもその脳を二人が共有して生活することはできない。