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    屋上

    フォ……

    DONE彼との記念日を楽しむために

    お題「時計」「屋上」
    司類ワンドロ23

    2479文字(所要時間約5分)
    ひやりと肌を刺す冬の季節も終わりを告げて、今、季節は花開く春にさしかかっていた。
     司は高校へ向かう朝の道すがら、少しばかり胃の痛い悩みを抱えていた。

     彼が目指しているのは六月。恋人である類の誕生日についての事だった。
     彼と司が恋人同士になったのはつい二ヶ月前のバレンタイン。
     司が告げて、彼がその気持ちを受け止めた。
     だから、これから迎える彼の誕生日は、二人にとっての初めての誕生日となるのだった。

     まだあと二ヶ月ある。けれど、もう二ヶ月しかないとも言える。
     『スター』たる天馬司にとって初めての恋人を祝う誕生日。
     もちろんその前には自分自身の誕生日もあるのだが、こと『演出家』として華々しい計画を立ててくる恋人がその相手とあれば、少しばかり思考を凝らすのが早かったとて、問題はないのだろう。

    『司くん。司くんが好きなのは魚料理だったかい?』

     つい先日、ふと『何となく』を装って問いかけられた類の言葉を思い出す。
     その言葉の真意に気づかなかったふりをして言葉を返しつつ、類も、動いているのだなと少しばかりの焦りを感じたのだった。

     類は、司にとって何でもできるスペシャリ 2586

    きたはら/しま

    DONEはみ通をよんで我慢できなくて書いた
    部屋ではなく屋上で寝ているアーロンと、なにかものを買ってあげたいルークの話
    アーロンにとって、世の中には嫌いなものばかりだ。餓え、争い、怪我、略奪、銃撃、腐ったパン、泥水。

    いつだったか。「アーロンはどうしていつもそんなに怒っているんだ?」と聞かれたことがある。決まっている、アーロンの世界には許せないことばかり目に入ってきたからだ。怒らなければ、立ち上がらなければとっくの昔に死んでいただろう。

    いつだったか。潜入した国で情報をあさるために図書館で情報収集していたとき。迷子になった子供になぜか懐かれて、絵本を読んでやったことがある。古ぼけた図書館の、これまた古ぼけた木枠ががたついている窓ガラスは、表面があめ玉みたいに波打っていた。そこから入り込む午後の光は揺らめいていて、机にぼんやりとした影を落とす。それがあんまりにも砂漠の日差しと違いすぎて、アーロンの気が迷ったのだ。その子供が、死んでしまった仲間と同じ髪の色をしていたのもいけない。
    アーロンはそのとき読んだ話も大嫌いになった。三兄弟がそれぞれ家を建て、狼が襲いに来るというおとぎ話。わらの家と木の家は吹き飛び、煉瓦の家だけが安全だったという、くだらない夢物語。

    コンクリートとガラスで出来ていた砂漠の家は、 2522

    mayu_og3

    DONE屋上デートする🌪🌱この街で一番空に近い庭園は、沈みかける夕日を浴びて茜色に染まっていた。夜の気配を漂わせた空に伸びる緑の木々の間、しゃがみ込んだシルエットが長く伸びている。
    「よう、ウィル」
    驚かせないように、ゆっくりと近づくガストの声にウィルが振り向いた。夕映に金色の髪がキラキラと輝き、小さく揺れる。
    「アドラーか。何か用か?」
    「いや、ここに来れば会えるかなぁ…って思ってさ」
    ガストの軽口に呆れたようにため息をついて、ウィルは立ち上がった。
    「ノースセクターのルーキーは随分と暇なんだな」
    皮肉めいた言葉も、声をかければ顔をしかめられ、話をすることさえ拒否されていた数ヶ月前からすれば、格段の進歩だ。ゆっくりと近づいてくるウィルの顔を眺めながら、ガストの胸は高まり、自然と頬が緩む。嫌悪からほんの少しの信頼へ、ウィルの自分に対する気持ちが変わり始めた冬を超えて、いつの間にか一方的な友情から片想いへと変わった気持ちを胸に隠しながら、彼のお気に入りの場所へ立ち寄ることが、ガストにとってささやかな幸せを感じる時間になっていた。

    春の気配が近づいてきているといえ、夕暮れの風まだは冷たい。隣に並ぶウィルが小さく肩 2696