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    憂鬱

    はるち

    DONE雨の日には憂鬱が良く似合う。
    雨を見くびるな 雨の日には孤独が似合う。
     起きた時から憂鬱だった。寝台で煙草を吸うのはやめろと注意したのは誰だったか。子どもたちがいた頃はやめていたが、皆がこの事務所以外の居場所を見つけてからは、もうそれを気にする必要もなくなった。起き抜けに火をつける。ひっきりなしに雨粒が窓ガラスを叩き、一人きりの部屋を満たしていく。朝のせいか気圧のせいか、それともこの紫煙のせいか。頭は雨水を吸ったように重くなり、それが体中に広がる前になんとか寝台を抜け出す。
     最低限の身支度を整えて、事務所を出る。料理をすることは嫌いではないが、今は自分以外の誰かが作った料理を食べたい気分だった。天気の悪い日に行く場所は決まっている。行きつけの喫茶店だ。この時代にも関わらず喫煙者に優しいその喫茶店は、全席が喫煙席だった。まるで分煙のされていないその店は、そのせいで賑わっているようには見えなかったが、しかしやっていけないほどではないらしい。自分のような人間は、この街には少なからずいるのだろう。紫煙が薄く烟っているような薄暗い店内は、嫌いではない。時として人は自らを照らす太陽よりも、傷を隠してくれる闇と、それに寄り添うよう月に親しみを覚えるのだ。
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    Kana_BoS

    DONE高2の冬の金東。バレンタインデーに事件が起こる!
    季節外れだけど!新刊が出ることが大事だよね!幼馴染から恋人へのステップアップってむずかしいよなあ。


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    2021.12.18 松方WEBオンリー
    バレンタインデー憂鬱症
    A6/38P/¥400※送料・手数料は除く※
    ネット頒布中
    【金東】バレンタインデー憂鬱症【サンプル】 どことなく浮かれた空気が漂う。朝練終わりにちらりと見かけた三年生の一部は、将来をかけての試験前でピリピリとしていた。この季節の空気のように乾いて冷え切っていて、気がついたらどこか怪我してしまいそうなそんな張り詰めた空気。
     来年は俺もあの一員なのだろうか。それともなんとか推薦を貰えて、後輩の邪魔にならないように野球の練習に励んでいるのだろうか。
     廊下や他所のクラスの教室から感じる空気からどうにか意識を切り離して、後ろで騒がしい奴らも無視を決め込んで自分のクラスへ黙々と足をすすめる。

    「あ、信二」
    「東条、お前先行くなら言えよ」
    「あー……、ごめん。ちょっと、」

     視線を斜め上へと逃して乾いた笑いを浮かべる東条に、眉が寄る。でもすぐにその理由がわかってしまえば、東条なりの気遣いだとわかる。自分の体に隠すようにして持っている紙袋。そこから覗く愛らしいラッピング。
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