Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    本丸

    いなばリチウム

    PROGRESS・本丸が襲撃されている
    ・襲撃されたら本丸を消滅させることになってるみたいな感じ
    ・審神者は死ぬ
    ・肥前は間に合わない
    ・最期は一緒
    バッドエンドルート主肥  俺の片腕を切り落し、腹の深くまで刃を通した異形は、それで満足したのか、べっとりと赤にまみれた刃を一振りすると、低い咆哮を一つ、あとは振り向きもせず立ち去った。ばかだな、と思う。俺の刀達なら、確実に息の根を止めて、息絶えたのを確認してからその場を後にするだろう。生き残った敵が、例え致命傷を負っていたとしても息がある限りは何をしでかすか分かったもんじゃないのに。そういう小さなミスが命取りなんだよな。こっちからすれば、今はありがたいけど。

     実際のところ、出血量は半端なくて足元は血の海だったし、意識も朦朧としてはいたけれど、でも、俺はまだ生きていた。生きていて、利き腕は動いたので、緊急用に支給されている鎮痛兼止血兼気付薬兼、まあその他色々の、とりあえず為すべきことを為すまで動けるようになる薬を自分に投与する。緊急用で審神者一人につきひとつしか支給されないとあって、効果は絶大だった。痛みは引いて、遠のきかけていた意識もはっきりしてきた。出血もとりあえずは止まったようだ。とはいえ、ただそれだけで、なくなった腕は生えてこないし、流した血が戻ってくるわけではないからふらつくし、裂かれた腹から赤黒い何かが見えてるのはちょっとまずいと思うけど。幸い、執務室だったのでそのへんを探せば使えそうなものは出てきた。救急セットの中に包帯が入っていたけど、片手じゃうまいこと固定できないし、とりあえず中身が出なければいいかと判断して、腹にガムテープをぐるぐると巻き付けた。包帯で巻くよりはやりやすかったけど、片手でするには時間のかかる作業だった。四苦八苦しながらどうにか穴を塞いで、廊下に出る。腕って実は結構重かったんだな。うまくバランスがとれなくて、腕がある方に傾いてしまう。よたよたと歩きながら、ひどい有様の我が本丸を眺める。あちこち火があがってるし、皆で一生懸命耕していた畑もぐちゃぐちゃ、花壇もどこまで花が植えてあったのかわからないくらい踏み荒らされている。かなしい、かなしいなあ、と思うけれど、最悪ではない。俺は俺の手でこの本丸を終わらせられるし、いくつかの部隊に分かれたうちの主戦力は、今頃別々のゲートを抜けて政府管轄の安全地帯に到着しているはずだ。辿り着けば、審神者が消えても面倒な手順をいくつか踏めば顕現は解かれず政府管轄の刀剣男士となる。歴史遡行軍に対する戦力は減らないままだ。ざまあみ
    2666