杏
水無瀬 瑞穂
MAIKING支部に上げる予定の、ハロウィン小ネタの文章化まあ、ここまでは前振りで、本番(小ネタ文章化)はこれからなんだけどね
それに加えて、小ネタにいない杏ちゃんが、このあとちょい役で出ます
寧々「ハロウィンのイタズラって、意地とプライドかけるものだっけ……?」 758
こみや
DONEせんずろくんグッズがなかなか出ないのは、兄上の許可がおりてないからっていうふざけた話です
「さらなる商品化? 駄目だ」
夏の爽やかな風も思わず声を潜める拒否が隠たちに突きつけられた。現炎柱である煉獄杏寿郎のものだ。普段多忙で捕まらない彼を休暇中の生家まで追いかけてきてまだ五分と経っていなかった。
だがここで左様ですかと引き下がるつもりなら、わざわざ休暇先まで追いかけてきてはいない。隠には隠なりの理由もあるのだ。――この炎柱の愛弟、煉獄千寿郎にまつわるものである。
鬼殺隊ではこの頃、隊や隊士になぞらえた様々な商品を作っている。例えば食器をはじめ日常品、服装品、果てには手のひらにすっぽり収まる愛らしいぬいぐるみまで。
だが鬼殺隊は政府ですら非公認の集団であり、その存在と意義を知る一般人も決して多くはない。よって商品も一般には流通しておらず手に取るのは主に隊士たちとその家族、関係各所などに限られるが、売り上げはそれなりに上々ではあった。始めの触れ込みもまたそうさせた。鬼の被害に遭った市井の人々が、再び心と体の平穏を取り戻していく資金の足しとするのが目的なのだ。
3721夏の爽やかな風も思わず声を潜める拒否が隠たちに突きつけられた。現炎柱である煉獄杏寿郎のものだ。普段多忙で捕まらない彼を休暇中の生家まで追いかけてきてまだ五分と経っていなかった。
だがここで左様ですかと引き下がるつもりなら、わざわざ休暇先まで追いかけてきてはいない。隠には隠なりの理由もあるのだ。――この炎柱の愛弟、煉獄千寿郎にまつわるものである。
鬼殺隊ではこの頃、隊や隊士になぞらえた様々な商品を作っている。例えば食器をはじめ日常品、服装品、果てには手のひらにすっぽり収まる愛らしいぬいぐるみまで。
だが鬼殺隊は政府ですら非公認の集団であり、その存在と意義を知る一般人も決して多くはない。よって商品も一般には流通しておらず手に取るのは主に隊士たちとその家族、関係各所などに限られるが、売り上げはそれなりに上々ではあった。始めの触れ込みもまたそうさせた。鬼の被害に遭った市井の人々が、再び心と体の平穏を取り戻していく資金の足しとするのが目的なのだ。
別冊きゃら版
INFO団地妻♡杏寿郎の続編です⭐️💎🔥ですが話の都合上、モブ内縁の夫とその他キャラが登場します。(性的接触はなし)
🔥さんが団ビッチ♡であること大前提でお読みください🤗❤️
20歳以上で🔥さんのTバックは好きですか?
(yes or no) 5882
ki_m426
DONEリクエストありがとうございました✨転生して兄弟じゃない2人で兄だけ記憶があるお話+アイドルパロ
来世は他人だった 見間違いではなかった。髪は短いし、ファッションもパーカーにジーンズと些か過去のイメージと異なるものではあったが、その姿は確かに千寿郎そのものだった。歌う青年の傍ら、俯き気味にアコースティックギターを鳴らす。オリジナルの楽曲なのだろうか、聴いたことがないそれはどこかロック調で、本当はエレキギターを掻き鳴らしたいのではないかと思った。
出張先、いつもと違う街、いつもと違う駅。偶然に偶然が重なって訪れたこの駅前に、前世で俺の弟だったあの子がいた。
「あっ、お久しぶりです」
左手を軽く振れば千寿郎も応えるように小さく手を振ってくれる。一人千円、少ないだろうがあまり多く入れても畏まってしまうからと、俺は二人の前に置かれたギターケース二千円を入れた。そうすれば視界の端で俺を捉えた千寿郎の目が細くなる。それからは、少し離れたところで二人の演奏を見守った。
9202出張先、いつもと違う街、いつもと違う駅。偶然に偶然が重なって訪れたこの駅前に、前世で俺の弟だったあの子がいた。
「あっ、お久しぶりです」
左手を軽く振れば千寿郎も応えるように小さく手を振ってくれる。一人千円、少ないだろうがあまり多く入れても畏まってしまうからと、俺は二人の前に置かれたギターケース二千円を入れた。そうすれば視界の端で俺を捉えた千寿郎の目が細くなる。それからは、少し離れたところで二人の演奏を見守った。
阿鼻地獄へようこそ
DONE『名もなき忍びが杏も君を想う』Webイベント開催おめでとうございます。
なにか違うかもしれませんが、ぎこちない二人の姿を少しでも描けていればと思いながら重ねました。お楽しみいただければ幸いです。 10
sena
REHABILIなんか短い話を書きたくて、ちょっと書いてみた。兄上を膝枕しながら、ゆらゆら団扇で扇いであげる千くんがテーマ。なんか最後が不穏なのは性癖です。
夏の嘘つき近年稀にみる猛暑に見舞われた、七月某日。打ち水など一瞬で干上がりそうな日差しの中、俺は”特等席”で涼をとっていた。
「お隣の斉藤さんも、先日倒れたそうで」
眩しいほどの日差しが照り付ける庭の、縁側にて。ゆるりと団扇を扇ぐ千寿郎が、兄上も気を付けてくださいね、なんて気遣わしげに告げる。その言葉は、そのままお前に返そう。ついそんな言葉が口をつきかけたが、何とか踏みとどまる。弟の膝を枕にしている身分では、どうも説得力に欠けるのだ。結局、兄の威厳を取り戻す間もなく、千寿郎は小さな子どもに言い聞かせるように笑った。
「それにしても、外での鍛錬も程々にして下さいね」
「…うむ」
「兄上、暑いの苦手なんですから」
そうでしょう?と同意を求める声に、曖昧に頷く。すると機嫌をよくした千寿郎が、団扇を扇ぐ手を止めないまま、俺の額に滲む汗を拭ってくれる。いつから用意していたのか、水を含んだ手拭いはひんやりと冷たくて。その気持ちよさに、俺は目を閉じた。
1495「お隣の斉藤さんも、先日倒れたそうで」
眩しいほどの日差しが照り付ける庭の、縁側にて。ゆるりと団扇を扇ぐ千寿郎が、兄上も気を付けてくださいね、なんて気遣わしげに告げる。その言葉は、そのままお前に返そう。ついそんな言葉が口をつきかけたが、何とか踏みとどまる。弟の膝を枕にしている身分では、どうも説得力に欠けるのだ。結局、兄の威厳を取り戻す間もなく、千寿郎は小さな子どもに言い聞かせるように笑った。
「それにしても、外での鍛錬も程々にして下さいね」
「…うむ」
「兄上、暑いの苦手なんですから」
そうでしょう?と同意を求める声に、曖昧に頷く。すると機嫌をよくした千寿郎が、団扇を扇ぐ手を止めないまま、俺の額に滲む汗を拭ってくれる。いつから用意していたのか、水を含んだ手拭いはひんやりと冷たくて。その気持ちよさに、俺は目を閉じた。
阿鼻地獄へようこそ
MENU『名もなき忍びが杏も君を想う』Webイベント開催おめでとうございます。こちらイベントのお品書きです。
(やっぱり遅刻癖が出てまだ書いてます。ごめんなさいm(._.)m)
今夜、皆様とお会いできたら嬉しいです。
よろしくお願いします。 2
染井悉
MEMO❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏𝘾𝙖𝙡𝙡 𝙤𝙛 𝘾𝙩𝙝𝙪𝙡𝙝𝙪
❚ 花葬標本
作:染井悉
❚ 𝙆𝙋𝘾 / 𝙆𝙋
芦ヶ谷 芽白 / 染井悉
❚ 𝙋𝘾 / 𝙋𝙇
橡本 杏璃 / ののぴ
➳ 𝙀𝙉𝘿-葬
❏┈┈┈┈┈┈┈┈┈❏
mia_amamiya
MOURNING現パロで、兄は三十路過ぎ、弟は二十歳ぐらい。すでにお付き合い済み。杏千版ドロライのお題から着想を得たものの、お題に沿ってないことに気付きお蔵入りしたもの(そんなのばっかりですね)
なので「遠くない未来に」とちょっと被る部分があります。
あなたのとなり埋もれそうなほどの量の課題を抱え、パソコンのキーボードを黙々と叩く。
定期試験を翌月に控え、四月五月と様子を見ていた教員達は、こぞって学生に負荷をかけてきた。最近は学内で誰と話していても「あの先生はヤバい」「課題提出締切が早すぎる」と教員達への恨みつらみがひとつやふたつ出てくる有様だ。
かく言う千寿郎も、必修科目に加え、選択科目、さらには学芸員課程と、取っている単位数は周囲と比べて多めで、今日も深夜までこうして課題に取り組む羽目になっている。だが、こうして忙しい学生生活を送っていると、千寿郎はいつも兄の事を思い出す。千寿郎と同じ年の頃、兄は教職課程を取っていたし、バイトもして、友人達とも適度に遊んで、何より年の離れた弟との時間も極力確保してくれていた。あの頃、「もっとあにうえとあそびたい!」と我儘を言っていた自分のことが、今更ながら恥ずかしい。兄は忙しい日々の中で、最優先と言っていいほど、千寿郎との時間を大切にしていてくれていたことが、今になって漸く理解できたのだった。
3725定期試験を翌月に控え、四月五月と様子を見ていた教員達は、こぞって学生に負荷をかけてきた。最近は学内で誰と話していても「あの先生はヤバい」「課題提出締切が早すぎる」と教員達への恨みつらみがひとつやふたつ出てくる有様だ。
かく言う千寿郎も、必修科目に加え、選択科目、さらには学芸員課程と、取っている単位数は周囲と比べて多めで、今日も深夜までこうして課題に取り組む羽目になっている。だが、こうして忙しい学生生活を送っていると、千寿郎はいつも兄の事を思い出す。千寿郎と同じ年の頃、兄は教職課程を取っていたし、バイトもして、友人達とも適度に遊んで、何より年の離れた弟との時間も極力確保してくれていた。あの頃、「もっとあにうえとあそびたい!」と我儘を言っていた自分のことが、今更ながら恥ずかしい。兄は忙しい日々の中で、最優先と言っていいほど、千寿郎との時間を大切にしていてくれていたことが、今になって漸く理解できたのだった。
ki_m426
PROGRESSお題箱より、遅くてすみません。転生して兄弟じゃない二人で兄だけ記憶がある+アイドルパロ
です。完成までは今しばらくお待ちください。
来世は他人だった 見間違いではなかった。髪は短いし、ファッションもパーカーにジーンズと些か過去のイメージと異なるものではあったが、その姿は確かに千寿郎そのものだった。歌う青年の傍ら、俯き気味にアコースティックギターを鳴らす。オリジナルの楽曲なのだろうか、聴いたことがないそれはどこかロック調で、本当はエレキギターを掻き鳴らしたいのではないかと思った。
出張先、いつもと違う街、いつもと違う駅。偶然に偶然が重なって訪れたこの駅前に、前世で俺の弟だったあの子がいた。
「あっ、お久しぶりです」
左手を軽く振れば、千寿郎も応えるように小さく手を振ってくれる。俺は二人の前に置かれたギターケースに二千円を入れると、少し離れたところから演奏を見守った。
7190出張先、いつもと違う街、いつもと違う駅。偶然に偶然が重なって訪れたこの駅前に、前世で俺の弟だったあの子がいた。
「あっ、お久しぶりです」
左手を軽く振れば、千寿郎も応えるように小さく手を振ってくれる。俺は二人の前に置かれたギターケースに二千円を入れると、少し離れたところから演奏を見守った。
リルノベリスト
PROGRESSユメジャン箱イベ三つ目 杏バナーいつアイドルっぽいファンとの交流書くん
今選ぶ、背中合わせの君を
奏はどうやら、雫のことも病室に一度連れてきたらしい。眠る男の瘦せ細った手を握って涙を流す、美しく、しかし憐れな光景だったと言う。憐れなのはその涙に馴染んだ奏もだろう、と杏は思うけれど、何も言わない。
「ね、お見舞いのあとウチ来ない?」
「……? カフェ?」
「じゃなくて、フツーに遊びに来ない?ってこと。街のみんなにもまた顔見せたいし、私ばっか奏のプライベート空間に踏み込んでるからさ」
「ああ……いいのに、そんなの」
いつもの看護師がすれ違いざまにこんにちはと挨拶してきた。二人揃って挨拶を返し、忙しそうな彼女の背を見送って変わらず廊下を進んでいく。ダンス練習のあとに病院まで歩く道のり、誰もいないより隣に杏がいてくれる方がいい。なにより、臆病な自分が踏み込めないところも踏み込める杏は、自分にも父にも、影響を与えてくれる。良くも悪くも、かもしれないが今のところは良い影響ばかりである。
22630奏はどうやら、雫のことも病室に一度連れてきたらしい。眠る男の瘦せ細った手を握って涙を流す、美しく、しかし憐れな光景だったと言う。憐れなのはその涙に馴染んだ奏もだろう、と杏は思うけれど、何も言わない。
「ね、お見舞いのあとウチ来ない?」
「……? カフェ?」
「じゃなくて、フツーに遊びに来ない?ってこと。街のみんなにもまた顔見せたいし、私ばっか奏のプライベート空間に踏み込んでるからさ」
「ああ……いいのに、そんなの」
いつもの看護師がすれ違いざまにこんにちはと挨拶してきた。二人揃って挨拶を返し、忙しそうな彼女の背を見送って変わらず廊下を進んでいく。ダンス練習のあとに病院まで歩く道のり、誰もいないより隣に杏がいてくれる方がいい。なにより、臆病な自分が踏み込めないところも踏み込める杏は、自分にも父にも、影響を与えてくれる。良くも悪くも、かもしれないが今のところは良い影響ばかりである。
saksak1100
PROGRESShttps://poipiku.com/119217/8917949.htmlの続きです。
※注意※
反転世界。 鬼→鬼殺隊 鬼殺隊→鬼
超自由設定
杏寿郎のIQが2
文章書くの苦手です。日本語が不自由!
漫画にする事を前提に書いているので色々雑ですが、それでもよいという方はどうぞ
👹寿郎と❄柱のお話 その2「杏寿郎、これは何かわかるか?」
懐から壊れないように布に巻いてもってきた風鈴を取り出して、猗窩座は杏寿郎の前に差し出した。
首を傾げた後、吊り下げられて揺れる風鈴を杏寿郎は指先で突っついた。
チリンと透明な音が鳴る。
杏寿郎は面白そうに何度も風鈴をつついて子どものように笑った
「綺麗だろう。お前にやる」
手渡された風鈴を目の前に掲げて杏寿郎は飽きる事なくそれを眺めては突いてを繰り返している。
数日前に調査に出かけた街で開催された縁日を歩いていると、綺麗な桔梗の文様が描かれた風鈴を見かけた。夏の暑さに清涼感を運んでくるその音色を聞いた時、何故か猗窩座は杏寿郎の顔を思い出して、気が付けば風鈴を買い求めていた。
6014懐から壊れないように布に巻いてもってきた風鈴を取り出して、猗窩座は杏寿郎の前に差し出した。
首を傾げた後、吊り下げられて揺れる風鈴を杏寿郎は指先で突っついた。
チリンと透明な音が鳴る。
杏寿郎は面白そうに何度も風鈴をつついて子どものように笑った
「綺麗だろう。お前にやる」
手渡された風鈴を目の前に掲げて杏寿郎は飽きる事なくそれを眺めては突いてを繰り返している。
数日前に調査に出かけた街で開催された縁日を歩いていると、綺麗な桔梗の文様が描かれた風鈴を見かけた。夏の暑さに清涼感を運んでくるその音色を聞いた時、何故か猗窩座は杏寿郎の顔を思い出して、気が付けば風鈴を買い求めていた。
hayuru47
PROGRESS息抜き漫画、描きたいところだけ描いてたのですがじわじわ増えて来ました😇初夜が描きたくて…もっと早く完成させられると思ったんだけどな…元々遅いというのもありますが🐢💦
🎴くんが裸なので一応ワンクッションしてみました☺️💦 2
mia_amamiya
MOURNING大正軸両片想い杏千。ちょっとだけ流血表現があります。EGOIST「あ」と思った時には遅かった。
打ち込み稽古に使用している木製の打ち込み台が、千寿郎の一撃で細かく割れ、鋭い破片が千寿郎目掛けて飛んでくる。
ここ数日ミシミシと嫌な音を立てていたので、新しいものを作らなくては、と思っていたのに。やらなければならないことを後回しにするなんて、と反省しているうちに、左眉の上にピリリと痛みが走った。次いで、生温かくどろりとした感触が瞼を伝い、目の前が赤く染まる。
「……やってしまった」
情けなく萎んだ声で傷口を抑えると、そのまま井戸端へ向かう。桶に水を汲み、水面に己を映せば、ぼたぼたと赤い雫が指の隙間から垂れ落ちた。痛みに眉を顰めながら傷口を洗い、然程深くはないことに一先ず安堵する。きっと数日もすれば傷は塞がるだろうし、一週間もすれば何事もなかったように跡形もなく消えているのではないだろうか。掌に付着する血に、先日帰宅した兄の身体に新たに刻まれていた傷がまざまざと思い出される。「大したことは無い。蝶屋敷に寄るほどの傷でもなかった」そう言って笑った兄の腕に巻かれていた包帯には、じわりと血が滲んでいた。あの時に千寿郎の胸に走った痛みと比べれば、取るに足らないものだ。
2087打ち込み稽古に使用している木製の打ち込み台が、千寿郎の一撃で細かく割れ、鋭い破片が千寿郎目掛けて飛んでくる。
ここ数日ミシミシと嫌な音を立てていたので、新しいものを作らなくては、と思っていたのに。やらなければならないことを後回しにするなんて、と反省しているうちに、左眉の上にピリリと痛みが走った。次いで、生温かくどろりとした感触が瞼を伝い、目の前が赤く染まる。
「……やってしまった」
情けなく萎んだ声で傷口を抑えると、そのまま井戸端へ向かう。桶に水を汲み、水面に己を映せば、ぼたぼたと赤い雫が指の隙間から垂れ落ちた。痛みに眉を顰めながら傷口を洗い、然程深くはないことに一先ず安堵する。きっと数日もすれば傷は塞がるだろうし、一週間もすれば何事もなかったように跡形もなく消えているのではないだろうか。掌に付着する血に、先日帰宅した兄の身体に新たに刻まれていた傷がまざまざと思い出される。「大したことは無い。蝶屋敷に寄るほどの傷でもなかった」そう言って笑った兄の腕に巻かれていた包帯には、じわりと血が滲んでいた。あの時に千寿郎の胸に走った痛みと比べれば、取るに足らないものだ。