Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ラッキースケベ

    きろう

    DONEラッキースケベコメディ比治沖(桐)
    スカートの中は天国廃工場の棚の前で比治山は梯子を支えながらただただ地面を見つめることに徹していた。

    「おい、沖野。まだ見つからんのか」
    「暗くてよく見えないんだよ。もう少し……。こんなに奥に置いたかな……」

    何しろ沖野は「桐子さん」の姿のままで梯子に上がって棚の奥に手を伸ばしている。
    つまり顔を上げてしまえばスカートの裾がチラチラと揺れる無防備な足が比治山の視線に晒されてしまうのだ。
    ええい落ち着け隆俊。沖野は男だ。男の足など見ても何ということはない。
    例えばこれが股引を履いた姿だったらどうだ。男の尻など見たくはないが比治山は堂々と顔を上げていられるだろう。
    いや待てしかしそこにいるのは沖野である。桐子の姿で比治山の心を射止めてしまった彼の尻を冷静に見られるだろうか。慶太郎であればどうだ。比治山はきっと何も感じない。彼の安全以外に考えることはないだろう。だが沖野に対して果たしてその心地でいられるだろうか。いられないとすればその理由は何だ。ただの男の尻であって桐子さんの尻ではあるまい。そもそも桐子さんはそのような無防備な姿で人前に出るなどしない。彼女は大胆な素振りもするが、肝心なところでは淑やかな女性だった。もんぺ姿であれば彼女もそれくらいしただろうし、実際に工廠でそのように高い所へ登る場面も見た事があるが、彼女は必要があってやっていたのであって、そこで尻に目を向けるなどというのはこちらの不埒に他ならないのでやはり桐子さんは貞淑な人だった。
    1891