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    コナカ

    maybe_MARRON

    MOURNING左馬一
    くっつけよ!!って思ってしまうので書いてこなかったセフレしてる話です
    仮タイトルは「BET」もしくは「臆病者の賭けと本音」だったのですが、左馬刻の本心を図る話から両片思い自覚済みの話に変わったので「モラトリアム」になりました
    モラトリアム ギシ、とベッドが軋んで目が覚めた。薄く開いた視界は隣の男が降りた姿を見とめる。寝たふりをしたまま耳をそばだてていると、カチャリとドアが開く音がした。脱衣所あたりだろうか。話し声が聞こえるのでおそらく電話だろう。小さくため息を吐いて再び瞼を下ろした。
     日が昇る前に左馬刻がいなくなることは、別に珍しくない。
     ただ、いなくなる現場を見ることになるのは初めてだった。仕事柄、気配を殺して動くことなんてこの男ならば雑作もないだろう。きっと今まではそうやっていた。今日は失敗したのか、それとも自分の眠りが浅かったのか。……戻ってきた左馬刻に、声を掛けるべきか否か。ぐるぐる、ゆるゆると、思考は止まらない。
     再び静かにドアが開いて足音を忍ばせた男が近づいてくるのを、瞼を閉じたまま出迎える。ベッドが軋むことはなく、代わりに衣ずれの音だけがした。落ちていたシャツを羽織って細身のデニムを履いて、きっと何事もなかったかのように出ていくのだろう。こんな深夜にご苦労なことだ。ヤクザの若頭様も大変だなと心にもないことを思う。
    1915