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DONEグエラウ スノーフレイクス 冬の地球出張での話スノーフレイクス 今回の出張には、グリップ力の高いソールの靴を選んでおいて正解だった。歩幅はいつもより小さく慎重に、足裏全体を地面に付け、重心は少し前気味に、手の振りも控えめに。
いわゆる『ペンギン歩き』という歩き方だ。初等部五年生のとき、家族で訪れたウィンタースポーツのリゾートで、南半球に生息する飛べない鳥の名がついた歩き方があると兄に教えてもらったのだ。
常日頃から自信に満ちた歩き方をする兄が、小またでちょこちょこと歩いている。そのギャップがかわいらしくて、つい笑みを漏らしてしまったことを今でも覚えている。
そして、そのペンギン歩きがもっとも雪道に適しているのだと、ラウダは尻もちの痛みでもってすぐさま理解することになったのだが。
3047いわゆる『ペンギン歩き』という歩き方だ。初等部五年生のとき、家族で訪れたウィンタースポーツのリゾートで、南半球に生息する飛べない鳥の名がついた歩き方があると兄に教えてもらったのだ。
常日頃から自信に満ちた歩き方をする兄が、小またでちょこちょこと歩いている。そのギャップがかわいらしくて、つい笑みを漏らしてしまったことを今でも覚えている。
そして、そのペンギン歩きがもっとも雪道に適しているのだと、ラウダは尻もちの痛みでもってすぐさま理解することになったのだが。
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DONEグエラウ 夜明けは君の色 まだ眠たくてぽやぽやの弟と過ごす休日の話夜明けは君の色 ダイニングテーブルの真ん中にスライスレモンの小皿と蜂蜜の瓶を置くと、ラウダがとろりとした半目を数回瞬かせた。朝陽で艶めく蜂蜜をぼんやりと眺めてから、どうしたのかと尋ねるように俺の顔を見上げてくる。
その眠たげな琥珀色から胸元へと視線を落とすと見える、無垢な眼差しとは対照的な生々しい赤褐色。パジャマの襟からのぞく範囲だけでも四つの痕がある。そのうちの一つは、昂りすぎて数年ぶりに残してしまった噛み痕だ。
正直、昨日はまったく自制が利かなかった自覚がある。無我夢中で何時間も貪ったのは自分のくせに、一晩経って蛮行の証拠を突きつけられると、あまりの強欲ぶりと自分勝手さにいたたまれなくなる。
じっと見つめるのがためらわれて、つい目を逸してしまう。まだ準備の途中だからと己を正当化して、逃げるようにキッチンに引き返した。
2893その眠たげな琥珀色から胸元へと視線を落とすと見える、無垢な眼差しとは対照的な生々しい赤褐色。パジャマの襟からのぞく範囲だけでも四つの痕がある。そのうちの一つは、昂りすぎて数年ぶりに残してしまった噛み痕だ。
正直、昨日はまったく自制が利かなかった自覚がある。無我夢中で何時間も貪ったのは自分のくせに、一晩経って蛮行の証拠を突きつけられると、あまりの強欲ぶりと自分勝手さにいたたまれなくなる。
じっと見つめるのがためらわれて、つい目を逸してしまう。まだ準備の途中だからと己を正当化して、逃げるようにキッチンに引き返した。
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DONEグエラウ あなたがここにいてほしい籍を入れて間もない時期の兄弟の話
あなたがここにいてほしい バターをまとった賽の目切りのにんじん、たまねぎ、じゃがいもがパチパチと音を立てて狐色に色づいてくる。あらかじめ加熱済みのためか思いのほか火の通りが早い。
「……このくらいで十分か」
鍋底をヘラで返す度にバターと野菜の優しい香りがふわりと立ちのぼる。
起床して帰ってきてから、まだ固形物を口にしていない。つい空腹に負けて、じゃがいもを二片、ヘラですくった。息で軽く冷ましてからころころと舌の上で味わう。噛むとしっとりした食感とほのかな甘み、焼き目の香ばしさが広がる。
淡白な食材を包み込むバターの風味に、ふと、昨晩のレストランで供されたムニエルを思い出した。
昨日は仕事終わりに親交の深いテック企業の会長さんとの会食があった。結婚式は行わなかったから親しい人達には書面で婚姻の報告を済ませていたけど、直接会ってお祝いをさせてほしいと、わざわざ食事の場まで設けていただいた。
6677「……このくらいで十分か」
鍋底をヘラで返す度にバターと野菜の優しい香りがふわりと立ちのぼる。
起床して帰ってきてから、まだ固形物を口にしていない。つい空腹に負けて、じゃがいもを二片、ヘラですくった。息で軽く冷ましてからころころと舌の上で味わう。噛むとしっとりした食感とほのかな甘み、焼き目の香ばしさが広がる。
淡白な食材を包み込むバターの風味に、ふと、昨晩のレストランで供されたムニエルを思い出した。
昨日は仕事終わりに親交の深いテック企業の会長さんとの会食があった。結婚式は行わなかったから親しい人達には書面で婚姻の報告を済ませていたけど、直接会ってお祝いをさせてほしいと、わざわざ食事の場まで設けていただいた。
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MAIKINGグエラウ 3年後からそこそこ経った頃、酔った兄さんのお悩み相談をしてあげるけれすさんの話 途中まで 6/6加筆 飲み干したモヒートのグラスをそっとコースターに置くと、そいつは――グエル・ジェタークは、腑抜けて丸まっていた背筋を一直線に伸ばした。酔っぱらいとは思えぬ流麗な所作でソファに座り直して、軽く咳払いをする。
「ケレスさん。聞いてくれませんか」
ようやくか、長かったな。お前のその台詞はこれで二回目だ。一回目は約二時間前の退店後間もなくだった。
商談中いつになく眉間の皺が深かったから、気分転換にでもと気に入っているショーパブに誘ってみたのだが。ショーの最中も、キャストに話を振られても、大真面目な顔で酒を飲んではチラチラと端末を気する姿は異様としか言いようがなく、厄介事に首を突っ込んだと悟った時には離脱する機会は失われていた。
5876「ケレスさん。聞いてくれませんか」
ようやくか、長かったな。お前のその台詞はこれで二回目だ。一回目は約二時間前の退店後間もなくだった。
商談中いつになく眉間の皺が深かったから、気分転換にでもと気に入っているショーパブに誘ってみたのだが。ショーの最中も、キャストに話を振られても、大真面目な顔で酒を飲んではチラチラと端末を気する姿は異様としか言いようがなく、厄介事に首を突っ込んだと悟った時には離脱する機会は失われていた。
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DONEグエラウ もどかしい夜を越えたら 二年時、兄さんがホルダーになって少し経った頃のジェ兄弟の話もどかしい夜を越えたら「今日は俺のせいで不快な思いをさせて、すまなかった」
「……謝らなきゃいけないのは兄さんじゃなくて、僕の方だろ」
下げていた頭をゆっくりと戻していく。固く握られた両の拳が目に入って、それ以上顔を上げることを躊躇してしまう。
「フェルシーとペトラがついていないんだから、僕がもっと注意しておくべきだった。あの女をやすやすと兄さんに近づけてしまった僕の失態だ。兄さんは悪くない」
うつむいたままの俺に合わせるかのように、俺の前に立っていたラウダが膝を折って座った。ベッドに腰掛けた俺よりも低い位置からこちらを見上げてくる。
目が合う。うっすらと細められた琥珀色に潜む気遣いに胸が痛くなる。
「僕はあの言葉、気にしてないから」
2685「……謝らなきゃいけないのは兄さんじゃなくて、僕の方だろ」
下げていた頭をゆっくりと戻していく。固く握られた両の拳が目に入って、それ以上顔を上げることを躊躇してしまう。
「フェルシーとペトラがついていないんだから、僕がもっと注意しておくべきだった。あの女をやすやすと兄さんに近づけてしまった僕の失態だ。兄さんは悪くない」
うつむいたままの俺に合わせるかのように、俺の前に立っていたラウダが膝を折って座った。ベッドに腰掛けた俺よりも低い位置からこちらを見上げてくる。
目が合う。うっすらと細められた琥珀色に潜む気遣いに胸が痛くなる。
「僕はあの言葉、気にしてないから」
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MAIKINGグエラウ 僕が想うよりずっと#1でたすと後遺症で数カ月入院した後、自宅療養中に外出したラくんの話
4/5変更と追加
僕が想うよりずっと#1 車窓越しの橙色に瞳を貫かれて、ラウダは思わず固く目を瞑った。
メインシャフトを降下中の一瞬の閃きだったにもかかわらず、夕日の残像が網膜に焼き付いて離れない。視神経を通して強烈な不快感が脳へと伝わり、頭の中が不規則に揺れる感覚がより一層強くなる。
間を置かず胃の底が不自然に引き攣り出した。とっさに両手で口元を押さえる。意思に従わない消化器が肋骨の檻の内で好き勝手に蠢いている。みぞおちから込み上げてくる異物感に、全身がぞわりと総毛立った。
腹の中が落ち着きを取り戻し、喉の奥でわだかまる苦痛が緩和される頃には、体中にじっとりと冷や汗をかいていた。
吹き出た汗が薄手のインナーを突き抜けてカーディガンにまで達している。膝上に置いた買い物袋の下では行き場を失った熱がこもって太腿にまとわりついていた。座席の背もたれの狭間で、柔らかな布地が肌に張り付く感触が気持ち悪い。
2987メインシャフトを降下中の一瞬の閃きだったにもかかわらず、夕日の残像が網膜に焼き付いて離れない。視神経を通して強烈な不快感が脳へと伝わり、頭の中が不規則に揺れる感覚がより一層強くなる。
間を置かず胃の底が不自然に引き攣り出した。とっさに両手で口元を押さえる。意思に従わない消化器が肋骨の檻の内で好き勝手に蠢いている。みぞおちから込み上げてくる異物感に、全身がぞわりと総毛立った。
腹の中が落ち着きを取り戻し、喉の奥でわだかまる苦痛が緩和される頃には、体中にじっとりと冷や汗をかいていた。
吹き出た汗が薄手のインナーを突き抜けてカーディガンにまで達している。膝上に置いた買い物袋の下では行き場を失った熱がこもって太腿にまとわりついていた。座席の背もたれの狭間で、柔らかな布地が肌に張り付く感触が気持ち悪い。
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DONEグエラウ 凍える指先#2 グループ解体から約3週間後、データストームによる後遺症をケレスさんに隠しきれなくなってしまうラウダくんの話凍える指先#2 不意にカトラリーを握る指先の異変を察知した。爪の先からすっと冷えていく感覚。ここ最近、毎日のように襲われている症状だ。
どうしてこのタイミングで――そう歯噛みしたくなるのをこらえて、ラウダは音を立てぬようナイフとフォークをプレートに置いた。白くてい丸い磁器の上には、白身魚のムニエルとミモザサラダがまだ半分近く残っている。
また今日も食事を残すことになるのかと、飲食すらままならない自分の体に失望する。ここ一週間、外食時に完食できたためしがない。
同席しているブリオン社のCTOとジェターク社のCTOは早々に食事を終えて、タブレットを手に共同開発する新規MSの設計の話をしている。数年先のことではあるが、学園を再建させた暁には、新しいMSを実習用の機体として納入する計画になっていた。
5168どうしてこのタイミングで――そう歯噛みしたくなるのをこらえて、ラウダは音を立てぬようナイフとフォークをプレートに置いた。白くてい丸い磁器の上には、白身魚のムニエルとミモザサラダがまだ半分近く残っている。
また今日も食事を残すことになるのかと、飲食すらままならない自分の体に失望する。ここ一週間、外食時に完食できたためしがない。
同席しているブリオン社のCTOとジェターク社のCTOは早々に食事を終えて、タブレットを手に共同開発する新規MSの設計の話をしている。数年先のことではあるが、学園を再建させた暁には、新しいMSを実習用の機体として納入する計画になっていた。
@あこ
DONE初めての決闘で興奮が抜けずでも解消法が分からなくて更衣室でしちゃダメな顔をしてたら兄さんが抜き方教えてくれたよ!な竿合わせグラ(ウブ弟) ここから純粋に弟に性教育していた兄さんに知らず仕込まれていくラくんかわいんでは〜!?そのうちえちえち弟に育ちます‼️過程も描きたい1213追加(1枚)
兄さんのがデカすぎちゃったいいの兄さんは大きいの自覚してるから前戯3時間してくれるので 3
flor_feny
DONEグエラウ てのひらのうえ ラくんが煽り耐性のない兄さんを誘ったり、翻弄されたり、惑わしたりする話二人の香水にスパイスのクローブがお揃いで使われているの、セクシーな色気があってすごく良いと思う 10294
flor_feny
DONEグエラウ 儚さと優しさを噛みしめる 一緒にラーヌードルを食べるジェタ兄弟の話儚さと優しさを噛みしめる 真っ白な器に注がれた黄金色に透き通ったスープ。しっかりと茹でられてスープの底の方を泳ぐ細めの麺。切り落としのベーコンのようなチャーシューに、白身部分がほんのり茶色に色づいた半熟の味玉。少し長めにカットされたメンマに、ツンとした鮮やかな香気を放つ白髪ねぎ。
メニューにある中で一番安い故かもしれないけど、これが比較的オーソドックスかつシンプルな塩ラーヌードルの構成らしい。
僕は器を上から覗きこんで、わざと芳醇な香りの直撃をくらいに行った。ほかほかと立ちのぼる白い湯気を吸い込めば、鶏出汁の豊かな匂いで鼻腔の奥まで満たされる。
一度食欲をそそる香りを嗅いでしまったらもう、目の前のラーヌードルのことしか考えられなくなってしまう。長時間の商談の疲れと空腹で回らなくなっている脳が、いいから早く食べろとせっついてくる。何時間も空っぽの胃が刺激されてぐうと唸った。
5105メニューにある中で一番安い故かもしれないけど、これが比較的オーソドックスかつシンプルな塩ラーヌードルの構成らしい。
僕は器を上から覗きこんで、わざと芳醇な香りの直撃をくらいに行った。ほかほかと立ちのぼる白い湯気を吸い込めば、鶏出汁の豊かな匂いで鼻腔の奥まで満たされる。
一度食欲をそそる香りを嗅いでしまったらもう、目の前のラーヌードルのことしか考えられなくなってしまう。長時間の商談の疲れと空腹で回らなくなっている脳が、いいから早く食べろとせっついてくる。何時間も空っぽの胃が刺激されてぐうと唸った。
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DONE「23話まで」の本編情報から情報を整理しよう的な自分の兄弟解釈漫画10P
23話でもグエルはラウダが怒る理由を理解してなかったよね
グエラウグエでも兄弟愛・ブロマンスの範疇だが
苦手な人は自己責任で
自分はラはペを妹のように見てる派
寮は家族の比喩っぽい 10
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DONEグエラウ Route extra 4年後以降、地球の工場視察後に海を眺めに行く兄さんとラくんの話Route extra 朝から工場の視察続きで疲れたから、寄り道しないで早くホテルに戻りたい。そう訴えて最後まで運転席で渋っていたラウダの手を取って、半ば強引に砂浜まで連れ出した。
一歩踏み出す毎に、素足の裏に、昼間の日差しを蓄えた砂の温度を感じる。ビーチサンダルという水辺御用達のアイテムはこの車には積んでいない。今あるのは私服用のスニーカーとローファー、スーツに合わせた革靴だけだ。帰りの道中、窓越しに海岸線沿いの景色に魅せられた俺が、唐突に海を見ようと言い出したのだから当然だ。
「わっ」
ラウダが驚いて右足を大きく上げる。足元には緑色のガラス片が転がっていた。よく見ると角がとれて丸くなっている。いわゆるシーグラスというやつだろうか。
4161一歩踏み出す毎に、素足の裏に、昼間の日差しを蓄えた砂の温度を感じる。ビーチサンダルという水辺御用達のアイテムはこの車には積んでいない。今あるのは私服用のスニーカーとローファー、スーツに合わせた革靴だけだ。帰りの道中、窓越しに海岸線沿いの景色に魅せられた俺が、唐突に海を見ようと言い出したのだから当然だ。
「わっ」
ラウダが驚いて右足を大きく上げる。足元には緑色のガラス片が転がっていた。よく見ると角がとれて丸くなっている。いわゆるシーグラスというやつだろうか。
AO_
DONE以前話したグエラウ、シャディラウ漫画をpixivへ上げてきました。興味のある方はご覧ください〜。
余談
描き上げるまでにずいぶんかかったので、これ面白いのか?絵が下手すぎでは?上げない方が良いのでは?と思ったりしましたがええいグエラウシャディラウの件数に貢献するんじゃ〰〰い!と勢いで上げてきました。
お目汚しですが、(当社比)頑張りました。
flor_feny
DONEグエラウ 凍える指先 グループ解体から2週間後、データストームによる後遺症をグエルに隠しながら仕事をしているラウダくんの話凍える指先 シャトルの窓際のシートに体を深く預けると、ラウダはできるだけゆっくりと、意識して細長く息を吐き出した。頭の中でざわついてリフレインする思考を追い出すように、そっとまぶたを閉じる。肺の中を空にするイメージを浮かべる。何も気体を含まずに閉じた肺を、時間をかけて、再び空気で満たして広げていく。
二回深呼吸を繰り返してから、静かにまぶたを開いた。胸の中心に手を当てる。
発作の前駆症状は、今のところ感じられない。
過呼吸のような発作に、ここ最近で三度襲われている。いずれも一人で行動している時に発症しているが、幸いなことに症状は重くない。呼吸のリズムを整えるよう気をつけていれば、息苦しさはものの数分で消えていく。
3869二回深呼吸を繰り返してから、静かにまぶたを開いた。胸の中心に手を当てる。
発作の前駆症状は、今のところ感じられない。
過呼吸のような発作に、ここ最近で三度襲われている。いずれも一人で行動している時に発症しているが、幸いなことに症状は重くない。呼吸のリズムを整えるよう気をつけていれば、息苦しさはものの数分で消えていく。