chiocioya18
DONEタケ漣冬の収穫祭!でネップリ公開していたバレンタイン話です。たい焼きデート。 芸能界は常に行事を先取りしている。テレビやラジオは放送日の何ヶ月も前に録ることもざらにあるから、季節の巡りがカレンダーよりも先走っているように感じてしまう。
バレンタインデーの特番収録をこなしたのが先月のこと。ファンのみんなからのチョコは連日事務所に届いていて、だから今日が二月十四日当日だということも、きっとコイツは忘れているに違いない。レッスンからの帰り道、来るかと訊けばのこのこと家へついてくるのもただの気まぐれなんだろう。
コイツにとってバレンタインデーは特別な日ではない。それはわかっているけれど、それでも。カバンの中に忍ばせたチョコレートを、渡すタイミングを見計らっている。
ちゃんと綺麗な箱に入った、コイツのために用意したチョコだ。小さくて量は大して入ってないから、果たしてコイツが喜ぶのかは想像できない。買った直後もここ数日間も、やっぱり渡すのはやめておこうかと何度も何度も思ったが、買う時にどれだけ恥ずかしかったかを振り返ると悔しくて、諦めきれずに持ってきてしまった。そのくせまだ渡せずに持ち歩いているのが情けない。
1719バレンタインデーの特番収録をこなしたのが先月のこと。ファンのみんなからのチョコは連日事務所に届いていて、だから今日が二月十四日当日だということも、きっとコイツは忘れているに違いない。レッスンからの帰り道、来るかと訊けばのこのこと家へついてくるのもただの気まぐれなんだろう。
コイツにとってバレンタインデーは特別な日ではない。それはわかっているけれど、それでも。カバンの中に忍ばせたチョコレートを、渡すタイミングを見計らっている。
ちゃんと綺麗な箱に入った、コイツのために用意したチョコだ。小さくて量は大して入ってないから、果たしてコイツが喜ぶのかは想像できない。買った直後もここ数日間も、やっぱり渡すのはやめておこうかと何度も何度も思ったが、買う時にどれだけ恥ずかしかったかを振り返ると悔しくて、諦めきれずに持ってきてしまった。そのくせまだ渡せずに持ち歩いているのが情けない。
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DONEタケ漣。片思いの朝。寝顔見つめる推しカプ書きすぎでは?と思いつつ…もう手癖みたいなもんなのでゆるしてください。
カーテンを透かす青白い朝の光に目を覚ます。掛け布団はかろうじて端だけが身体を覆っていた。引き寄せようとすればクイと逆側からわずかな抵抗を感じて、仕方なく肌寒さに耐えることを選ぶ。首だけを巡らせてベッドの壁側を見れば、こちらはしっかりと布団を被った男のあどけない寝顔が間近に飛び込んできた。布団を取られた恨めしい気持ちよりも間抜けな寝姿への胸騒ぎが勝るなんて、いよいよ重症だとこっそり嘆息する。
いつのまにか、俺はコイツに恋をしているらしい。
この横暴で喧しくてやることなすこと滅茶苦茶な男のどこにだとかなんでだとか、自分でもわからない。自覚したからといってコイツに優しくしようなんて思わないし、口を開けばケンカするし。以前より多少は歩み寄るようになったかもしれないが、表向きにはなにも変わっていないはずだ。この想いを伝える気はない、気づいて欲しいわけでもなかった。
1479いつのまにか、俺はコイツに恋をしているらしい。
この横暴で喧しくてやることなすこと滅茶苦茶な男のどこにだとかなんでだとか、自分でもわからない。自覚したからといってコイツに優しくしようなんて思わないし、口を開けばケンカするし。以前より多少は歩み寄るようになったかもしれないが、表向きにはなにも変わっていないはずだ。この想いを伝える気はない、気づいて欲しいわけでもなかった。
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DONEタケル誕記念 タケ漣です突発的サプライズプレゼントな話
なんとかしてプライベート二人旅させたい欲があけすけ
「年の瀬」というものは世の中がやたらとソワソワせかせかするものらしい。街中はクリスマスセールだ年末売り尽くしだとどの店も騒がしいし、アイドル業もいつにも増してスケジュールがぎっしりだ。漣からすれば月が変わろうが年が明けようが、どうということもない寒い日が続くだけなのに。
加えて漣のまわりが一層ソワソワしていたのは、同じユニットの年下の男の誕生日もこの時期にあったからだ。何日も前からプレゼントだ祝いの料理の準備だと手を回しており、不干渉を決め込んでいた漣もついに巻き込まれ今日は予約していたケーキを店まで取りに行かされた。
毎年恒例でもはやサプライズにもならない儀式にそれでもタケルはあの仏頂面を綻ばせ、照れた様子で集まった面々に祝福を受けていた。
2359加えて漣のまわりが一層ソワソワしていたのは、同じユニットの年下の男の誕生日もこの時期にあったからだ。何日も前からプレゼントだ祝いの料理の準備だと手を回しており、不干渉を決め込んでいた漣もついに巻き込まれ今日は予約していたケーキを店まで取りに行かされた。
毎年恒例でもはやサプライズにもならない儀式にそれでもタケルはあの仏頂面を綻ばせ、照れた様子で集まった面々に祝福を受けていた。
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DONEタケ漣 はじめてのちゅう(でぃーぷ)れんの無知シチュどれくらいまで許されるかしら…の試行錯誤です
ちゅーしかしてません
はじめての恋人がコイツになるだなんて、思ってもみなかった。それについてはコイツだって同じだろうけど。
お互い恋愛には疎い人生だったから、付き合うといってもぎこちなく探り探りだ。それでもなんとかキスまではこぎつけた。唇を触れ合わせるだけの生易しいキスは、それはそれで幸福感はあるが、最近はちょっとだけもの足りない。
「おい」
「あァ? なんだよ…」
今日も俺の部屋に上がり込み適当にテレビをザッピングしていたコイツに呼びかける。恋人同士になっても相変わらず口を開けば喧嘩腰だが、黙って見つめていれば気配を読むのが上手いコイツは察して目を泳がせだす。「チッ」とひとつ舌打ちをよこすと、ぎゅっと目を瞑って身を硬くした。いわゆるキス待ち顔、というには力が入りすぎているけれど、大人しく待つようになっただけこれでも慣れてきた方だ。
2396お互い恋愛には疎い人生だったから、付き合うといってもぎこちなく探り探りだ。それでもなんとかキスまではこぎつけた。唇を触れ合わせるだけの生易しいキスは、それはそれで幸福感はあるが、最近はちょっとだけもの足りない。
「おい」
「あァ? なんだよ…」
今日も俺の部屋に上がり込み適当にテレビをザッピングしていたコイツに呼びかける。恋人同士になっても相変わらず口を開けば喧嘩腰だが、黙って見つめていれば気配を読むのが上手いコイツは察して目を泳がせだす。「チッ」とひとつ舌打ちをよこすと、ぎゅっと目を瞑って身を硬くした。いわゆるキス待ち顔、というには力が入りすぎているけれど、大人しく待つようになっただけこれでも慣れてきた方だ。
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DONE夏のタケ漣。アイスと花火。推しカプいちゃいちゃしろの妄念です。
さっきまで明るかった空は目を離した隙にすっかり日が落ちていた。夏の夜は急に訪れて、昼の暑さは冷める暇もない。涼しいコンビニから一歩外に出た俺たちは、とたんにわだかまる熱気に迎えられた。
「だぁ〜〜〜暑っちい……」
「暑いのは家出る前からわかってただろ。オマエがどうしてもアイス買いに行くって言うから」
「チビだってついてきたくせに、いちいちうっせえな」
ビニール袋をがさがさと揺らしながら二人で家路に着く。家まで待てずにスイカの形のアイスバーをかじり出すコイツに倣ったわけじゃないが、俺も歩きながらアイスを開封した。あまり行儀は良くないが、家に着くまでに溶けてしまっては困る。
ソーダ味の氷菓は口の中をキンと冷やして、一時の涼しさを与えてくれる。隣りのコイツも食べている間はさすがに静かだ。シャク、シャク、食べ進める音が足音に重なる。そこにかすかにドン、ドン、と響くような音が届いた。
1010「だぁ〜〜〜暑っちい……」
「暑いのは家出る前からわかってただろ。オマエがどうしてもアイス買いに行くって言うから」
「チビだってついてきたくせに、いちいちうっせえな」
ビニール袋をがさがさと揺らしながら二人で家路に着く。家まで待てずにスイカの形のアイスバーをかじり出すコイツに倣ったわけじゃないが、俺も歩きながらアイスを開封した。あまり行儀は良くないが、家に着くまでに溶けてしまっては困る。
ソーダ味の氷菓は口の中をキンと冷やして、一時の涼しさを与えてくれる。隣りのコイツも食べている間はさすがに静かだ。シャク、シャク、食べ進める音が足音に重なる。そこにかすかにドン、ドン、と響くような音が届いた。
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DONEタケ漣です。まわりが見えてなかったのはどっちって話。いつもよりちゃんと恋人してるかもしれないです。解釈違いだったら逃げてください。
レッスンスタジオのロッカールームは狭い。レッスンルームが広い分、面積を削ってしまったのだろうか。並び立つ背の高いロッカーには圧迫感を覚えるくらいだ。
俺でこうなんだから、円城寺さんなんてもっと窮屈なんだろうな。ダンスレッスンのため三人で待ち合わせてスタジオに合流したけれど、着替える前に円城寺さんはプロデューサーに呼ばれ「先に着替えててくれ」と言い残して行ったから、今はコイツと二人きりだ。距離が近いのは、ロッカールームが狭いから、仕方がない。
「…なんか、匂いする。チビから」
「え?」
「花...じゃねえな。葉っぱみたいな匂い」
着替えの途中、不意に話を振られて反応が遅れた。その隙をつくように腕が伸びてきて、俺の頭から何かをつまみ上げる。くん、と鼻をひくつかせ「これか」と頷くと、そのまま首を傾げられた。
1817俺でこうなんだから、円城寺さんなんてもっと窮屈なんだろうな。ダンスレッスンのため三人で待ち合わせてスタジオに合流したけれど、着替える前に円城寺さんはプロデューサーに呼ばれ「先に着替えててくれ」と言い残して行ったから、今はコイツと二人きりだ。距離が近いのは、ロッカールームが狭いから、仕方がない。
「…なんか、匂いする。チビから」
「え?」
「花...じゃねえな。葉っぱみたいな匂い」
着替えの途中、不意に話を振られて反応が遅れた。その隙をつくように腕が伸びてきて、俺の頭から何かをつまみ上げる。くん、と鼻をひくつかせ「これか」と頷くと、そのまま首を傾げられた。
chiocioya18
DONEタケ漣(いちおう)。 ノーパンの漣に心乱されるタケル。ずっとパンツパンツ言ってます。全然えっちではないんですがノーパンを野放しにしておくのもなんなので念の為にパスワードつけます。
pass :パンツを数字で 2578
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DONE漣ハッピーバースデー!!なタケ漣です当日直接がうれしいって話
わたしの書く牙崎はいつまでたってもインターホン鳴らすことを覚えません
芸能界は平日も休日も関係なく仕事が入る。ましてや誕生日なんて単なる一日でしかなく、当日である今日アイツは仕事で地方へ出かけていた。ユニットではなく事務所の他メンバーとの共演でプロデューサーも同行しているらしい。前日入りで、終わりは遅くなるから泊まって翌日に帰ってくる予定。「一日遅れだが盛大にお祝いしような!」と円城寺さんは張り切っていて、明日は男道らーめんでごちそうが振る舞われる。俺も一応、料理を手伝うつもりだ。
アイツがいないと一日が静かだ。寝る前に少しだけのつもりで手をつけたゲームにうっかり没頭してしまい、気づけばもうすぐ日付が変わろうとしていた。そろそろやめるかとセーブしたところで、
ガンガンガン!!
2165アイツがいないと一日が静かだ。寝る前に少しだけのつもりで手をつけたゲームにうっかり没頭してしまい、気づけばもうすぐ日付が変わろうとしていた。そろそろやめるかとセーブしたところで、
ガンガンガン!!
chiocioya18
DONEほのぼのタケ漣に見守る道流さんを添えて。漣からじろーちゃんの呼び方が分からなかったんですが既出だったら教えてください。
アイドルの仕事がオフでも、男道らーめんは営業日だ。昼営業が一段落して、また夜からの開店準備に勤しむ道流が空になったダンボールを出しに裏口から出ると、店脇の路地から猫の鳴き声がした。きっと─チャンプか覇王か名前はまだ決着していないが、顔見知りのあの子猫だろうと当たりをつけて覗きこめば、猫と一緒に室外機の陰にしゃがみこんでいる姿があった。
「漣。来ていたんだな。店に入ってくればいいのに」
「別に。オレ様は覇王に用があっただけだし」
声をかけると顔は上げたものの、すぐにふいと目をそらされる。口ぶりからしても機嫌が良くないようだった。対照的に猫の方は機嫌が良いらしく、道流にもニャアと擦り寄ってきた。
「お、どうした? 腹が減ってるのかな。しかし今あげるとなぁ。もうすぐタケルもおやつを持ってくるかもしれないし…」
1607「漣。来ていたんだな。店に入ってくればいいのに」
「別に。オレ様は覇王に用があっただけだし」
声をかけると顔は上げたものの、すぐにふいと目をそらされる。口ぶりからしても機嫌が良くないようだった。対照的に猫の方は機嫌が良いらしく、道流にもニャアと擦り寄ってきた。
「お、どうした? 腹が減ってるのかな。しかし今あげるとなぁ。もうすぐタケルもおやつを持ってくるかもしれないし…」
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PAST昔出したタケ漣同人誌です。かなり昔のものです。半分猫の連です。イチャイチャしてます。
解釈とか無視して猫の連を愛でたい気持ちで書いた素直な話です。
Love Me Moreこの本の漣はネコチャンなので甘えたです。
普段の解釈を無視してただ猫になった漣を愛でたい気持ちだけで書きました。
全体的にイチャイチャしてます。
---------------
1
オレ様は猫である。名前は牙崎漣。
厳密には人間なんだが、全部が全部人間かと言われるとそれは違う。まぁ猫と呼ぶには人間すぎるんだけど。
そもそもオレ様は人間だと猫だのって枠には収まらないからどっちだろうが関係ない。最強大天才は最強大天才だ。半分だけ猫になれるってだけだ。
一応、これは秘密ってことになってる。最強大天才に隠し事なんてのはいらないが、親父が「このことは心から信頼できる人間以外には言うんじゃない」とか言うもんだから、まぁそのくらいなら聞いてやってもいいかと思ってるだけだ。別に言いたい相手もいないし、言いたいとも思わない。秘密ってか、『言ってないこと』とか『言う必要のないこと』ってのが正しいだろう。
39969普段の解釈を無視してただ猫になった漣を愛でたい気持ちだけで書きました。
全体的にイチャイチャしてます。
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オレ様は猫である。名前は牙崎漣。
厳密には人間なんだが、全部が全部人間かと言われるとそれは違う。まぁ猫と呼ぶには人間すぎるんだけど。
そもそもオレ様は人間だと猫だのって枠には収まらないからどっちだろうが関係ない。最強大天才は最強大天才だ。半分だけ猫になれるってだけだ。
一応、これは秘密ってことになってる。最強大天才に隠し事なんてのはいらないが、親父が「このことは心から信頼できる人間以外には言うんじゃない」とか言うもんだから、まぁそのくらいなら聞いてやってもいいかと思ってるだけだ。別に言いたい相手もいないし、言いたいとも思わない。秘密ってか、『言ってないこと』とか『言う必要のないこと』ってのが正しいだろう。
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DONE寝落ちの翌朝のタケ漣。言わないとわからない話。目が覚めたら朝だった。そんな当たり前の事実が受け入れがたく、漣は目覚めた体勢のまま暫し呆然としてしまった。タケルの家、タケルのベッド。それはいい。目覚める前は夜だったはずで、風呂上がりだったはずだ。準備を済ませてベッドの上でタケルが風呂から出てくるのを待っていたところから、記憶がない。
つまり、漣はそこで寝落ちたのだ。
むくりと起き上がって辺りを見回す。ベッドには漣ひとりしかおらず、寝室にも他の部屋にもタケルの姿はなかった。寝落ちした漣に愛想をつかして出ていったかと考えがよぎるが、そもそもタケルの家だ。漣が追い出されるならまだしもタケルから出ていくのはおかしい。なんにせよ、置いていかれたと悟った漣は言いようのない焦りを覚えた。
2333つまり、漣はそこで寝落ちたのだ。
むくりと起き上がって辺りを見回す。ベッドには漣ひとりしかおらず、寝室にも他の部屋にもタケルの姿はなかった。寝落ちした漣に愛想をつかして出ていったかと考えがよぎるが、そもそもタケルの家だ。漣が追い出されるならまだしもタケルから出ていくのはおかしい。なんにせよ、置いていかれたと悟った漣は言いようのない焦りを覚えた。
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DONE漣が催眠術にかかる話。虎牙道わちゃわちゃにタケ漣風味を添えて。ちゃんとお仕事してる虎牙道書きたいなと思って。(果たしてこれはちゃんとしているのかはさておき)
「...はい力を抜いて...だんだん眠くな〜る...」
催眠術講師を名乗る男が独特の抑揚で唱える。声に合わせて、隣に座るいつもうるさい奴の頭ががくりと項垂れた。スタジオの空気がざわりとうねって、俺も思わずうわ、と小さく声をあげてしまい慌てて口を閉じる。
バラエティ番組の収録。新曲の宣伝のためにTHE 虎牙道でゲスト出演させてもらったのが、催眠術を検証しようという企画の回だった。催眠術なんてまるきり信じていなかったから、演技でもかかったふりをした方がいいんだろうかなんて心配をしていたのだが杞憂だった。その筋では有名らしい催眠術講師は、聞いていると頭がぼんやりしてくる声音とゆらゆらした手の動きだけで、椅子から立ち上がれなくしたり腕が勝手に挙がったりと俺たちを見事に術にかけてみせた。特にコイツは催眠術にかかりやすい体質らしく、コーナーの最後に一人だけとっておきの術をかけられているところだ。
3436催眠術講師を名乗る男が独特の抑揚で唱える。声に合わせて、隣に座るいつもうるさい奴の頭ががくりと項垂れた。スタジオの空気がざわりとうねって、俺も思わずうわ、と小さく声をあげてしまい慌てて口を閉じる。
バラエティ番組の収録。新曲の宣伝のためにTHE 虎牙道でゲスト出演させてもらったのが、催眠術を検証しようという企画の回だった。催眠術なんてまるきり信じていなかったから、演技でもかかったふりをした方がいいんだろうかなんて心配をしていたのだが杞憂だった。その筋では有名らしい催眠術講師は、聞いていると頭がぼんやりしてくる声音とゆらゆらした手の動きだけで、椅子から立ち上がれなくしたり腕が勝手に挙がったりと俺たちを見事に術にかけてみせた。特にコイツは催眠術にかかりやすい体質らしく、コーナーの最後に一人だけとっておきの術をかけられているところだ。
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DONEタケ漣。おとぎ話にならない話。ロマンチックは壊す物なふたり。
「チャンプ。いるか?」
男道らーめんのすぐ脇、チャンプが縄張りにしている路地裏を覗き込んでみる。見知った灰色の猫は居らず、建物の高い壁と陽の射さない暗い地面があるだけだった。
せっかくエサを持ってきたのに。手にした袋の中の猫用ドライフードを見て小さく溜息をつく。まあ、あの野良猫の縄張りはここだけではないだろう。踵を返そうとした俺の後ろから、ニャアと耳に覚えのある鳴き声。振り返れば探していた姿がそこにあった。
「チャンプ!」
名を呼ぶ声にもつい喜色が乗る。ちょこんと座り込んでいたチャンプはもう一度ニャアと鳴くとすくっと腰を上げて俺に背を向けた。あれ、と思ったものの首だけ振り向いて顎で行き先を示してくる。
「ついて来いって言ってるのか?」
2168男道らーめんのすぐ脇、チャンプが縄張りにしている路地裏を覗き込んでみる。見知った灰色の猫は居らず、建物の高い壁と陽の射さない暗い地面があるだけだった。
せっかくエサを持ってきたのに。手にした袋の中の猫用ドライフードを見て小さく溜息をつく。まあ、あの野良猫の縄張りはここだけではないだろう。踵を返そうとした俺の後ろから、ニャアと耳に覚えのある鳴き声。振り返れば探していた姿がそこにあった。
「チャンプ!」
名を呼ぶ声にもつい喜色が乗る。ちょこんと座り込んでいたチャンプはもう一度ニャアと鳴くとすくっと腰を上げて俺に背を向けた。あれ、と思ったものの首だけ振り向いて顎で行き先を示してくる。
「ついて来いって言ってるのか?」
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DONE四心伝2日目鬼族組の撮影前。タケ漣と輝薫がうっすら含まれますがカプなしでも読めるかも…?そうでもないかも…?
公式サイトの紹介文しか情報無い時点で書いてますので追加情報や実際の劇中と矛盾が生じるかもしれません。
赤、赤、赤。飛び込んでくる鮮烈な赤色にぱちぱちと目を瞬いた。
映画『天地四心伝』、315プロの全員が出演する作品の、今日は衣装合わせだ。敢えてなのか偶然なのか、同日撮影の陣営毎に分かれての確認となる。俺たち鬼族は赤基調の衣装に加え、各々赤い角を付けて爪を赤に塗る。この部屋がやけに赤いのはそのせいだ。
「和服か。狩衣は初めて着るな」
「なかなか無いよなー。浴衣とか晴れ着とも違うもんな」
「でもこの角とか、ゲームのキャラみたいでテンションあがらない?」
「それはわかる」
歳が近い奴が多いから自然と話が弾んでしまう。騒がしい俺たちに、年長者の桜庭さんは少し呆れたように言う。
「君たち。盛り上がるのはいいが、早く着替えたらどうだ」
1618映画『天地四心伝』、315プロの全員が出演する作品の、今日は衣装合わせだ。敢えてなのか偶然なのか、同日撮影の陣営毎に分かれての確認となる。俺たち鬼族は赤基調の衣装に加え、各々赤い角を付けて爪を赤に塗る。この部屋がやけに赤いのはそのせいだ。
「和服か。狩衣は初めて着るな」
「なかなか無いよなー。浴衣とか晴れ着とも違うもんな」
「でもこの角とか、ゲームのキャラみたいでテンションあがらない?」
「それはわかる」
歳が近い奴が多いから自然と話が弾んでしまう。騒がしい俺たちに、年長者の桜庭さんは少し呆れたように言う。
「君たち。盛り上がるのはいいが、早く着替えたらどうだ」
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DONEお誕生日おめでとうタケル!なタケ漣です。ベッドの上だけどそういう描写はないからセーフ(のはず)
BNMとかDoSのヘアアレンジを引きずっています。ダニーの髪型だと童顔目立つよね…(好き)
おもむろに、目の前に手のひらが迫ってくる。咄嗟に目を瞑ると額をするりと撫でられた。「くはは」と聞き慣れた笑い声に瞼を開くと金色の瞳が見つめてくる。
「なんだ」
「チビがもっとガキに見える」
そう言って前髪を弄んでくるのに思わずムッとしてしまう。自分が童顔なのは分かっているが、どうやらデコを出すと余計に幼く見えるらしい。仕事でヘアアレンジをされることも増えてきて気付かされた。コイツは逆に、髪を上げると少し大人っぽくなる。埋まらない歳の差がなおさら露見しているようで悔しい。だからわざと額を隠すように、ぐしゃぐしゃと銀の髪をかき混ぜてやった。
「くはは。仕返しもガキだな」
「うるさい。変なことしてないで集中しろ」
1707「なんだ」
「チビがもっとガキに見える」
そう言って前髪を弄んでくるのに思わずムッとしてしまう。自分が童顔なのは分かっているが、どうやらデコを出すと余計に幼く見えるらしい。仕事でヘアアレンジをされることも増えてきて気付かされた。コイツは逆に、髪を上げると少し大人っぽくなる。埋まらない歳の差がなおさら露見しているようで悔しい。だからわざと額を隠すように、ぐしゃぐしゃと銀の髪をかき混ぜてやった。
「くはは。仕返しもガキだな」
「うるさい。変なことしてないで集中しろ」
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DONEタケ漣。炬燵でまるくなる話。くっつきあってるだけです。
「コタツ!」
家主より先に部屋に乗り込んだコイツは、いきなり叫んだかと思えば目を輝かせて廊下をダッシュした。買ったばかりの炬燵がある居間は玄関から真っ直ぐの動線だから見つかるのはわかっていたが、ここまで飛びつくとは思っていなかった。後に続いて居間に入る。コイツは早くも炬燵に潜り込んで、首だけをこちらに向けてきた。
「チビ!さっさとスイッチ入れやがれ」
「なんでオマエに指図されなきゃならねえんだ…」
コイツの態度には腹が立つが、俺も入りたいので炬燵のスイッチを入れた。コイツと逆側に座ってしばらくすると、炬燵の中がじわじわと温まってくる。
「フン。まあまあ悪くねえな。らーめん屋ん家のより小せえけど」
「部屋の大きさが違うんだ。これくらいで十分だろ」
1744家主より先に部屋に乗り込んだコイツは、いきなり叫んだかと思えば目を輝かせて廊下をダッシュした。買ったばかりの炬燵がある居間は玄関から真っ直ぐの動線だから見つかるのはわかっていたが、ここまで飛びつくとは思っていなかった。後に続いて居間に入る。コイツは早くも炬燵に潜り込んで、首だけをこちらに向けてきた。
「チビ!さっさとスイッチ入れやがれ」
「なんでオマエに指図されなきゃならねえんだ…」
コイツの態度には腹が立つが、俺も入りたいので炬燵のスイッチを入れた。コイツと逆側に座ってしばらくすると、炬燵の中がじわじわと温まってくる。
「フン。まあまあ悪くねえな。らーめん屋ん家のより小せえけど」
「部屋の大きさが違うんだ。これくらいで十分だろ」
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DONEタケ漣です。濡れた髪を乾かさない話。余裕のないタケルっていいよね…ということが伝わるとうれしいです。
シャワーの滝で泡が流れ落ちていく。視界を塞ぐ髪先が煩わしく、漣は前髪をかきあげた。タケルの家の浴室、その鏡の中で銀髪からぼたぼたと雫が垂れる。髪の色は父親譲りなのか、それとも姿も見たことの無い母親も銀髪だったのか、漣は知らないし別に知りたいとも思わない。アイドルになってから、この長い髪は漣の一種のトレードマークでもあった。激しいダンスやアクションで揺れて翻り、しかし誰にも捕まえさせない。本人を現したようなその髪を、漣はメイク室ですら容易に他人には触らせない。
ブン、と頭を振って水滴を飛ばす。浴室から出て、脱衣場には着替えは置いていなかった。それもそのはずで、玄関に足を踏み入れてすぐにタケルから「早くシャワー浴びてこい」と風呂場へ押し込まれたので着替えを取りにいく暇がなかった。着ていた服は洗濯機に放り込んでしまった。まあいいか、と漣は全身を雑に拭いたバスタオルを腰に巻き付ける。
1493ブン、と頭を振って水滴を飛ばす。浴室から出て、脱衣場には着替えは置いていなかった。それもそのはずで、玄関に足を踏み入れてすぐにタケルから「早くシャワー浴びてこい」と風呂場へ押し込まれたので着替えを取りにいく暇がなかった。着ていた服は洗濯機に放り込んでしまった。まあいいか、と漣は全身を雑に拭いたバスタオルを腰に巻き付ける。