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MAIKING現パロ&美大パロ綾滝④。続きます。またもやというか、結構ガッツリ綾→仙描写を入れるつもりなのと、今回は文仙風味。またもや色々な人やらカプが出るかもなのでお気をつけください。ハピエン予定ですが自己責任でお願いします〜ランウェイで踊る④「今日は帰った方がいいかもねぇ」
タカ丸が喜八郎にそう言った。滝夜叉丸は三木ヱ門と出ていったきり戻っては来ていないが、タカ丸が暗に帰ることを促しているのは察することが出来た。タカ丸さんは帰らないんですか、とは何となく聞くことは出来なくて、そればっかりは付き合いの長さである為仕方がないとは思う。
そのまま大人しく部屋から出ると、廊下の先に人影があった。滝夜叉丸もそうだが、三木ヱ門もなんだか目立つため、二人がいると遠くからでも分かるもんだな、なんて考えながらぼんやりとそこを眺めていた。
遠くだから、何を話しているかなんて分からない。けれど俯いていた三木ヱ門の頭に手を置いた滝夜叉丸を見て「そういうやつなんだよなぁ」と思った。
3886タカ丸が喜八郎にそう言った。滝夜叉丸は三木ヱ門と出ていったきり戻っては来ていないが、タカ丸が暗に帰ることを促しているのは察することが出来た。タカ丸さんは帰らないんですか、とは何となく聞くことは出来なくて、そればっかりは付き合いの長さである為仕方がないとは思う。
そのまま大人しく部屋から出ると、廊下の先に人影があった。滝夜叉丸もそうだが、三木ヱ門もなんだか目立つため、二人がいると遠くからでも分かるもんだな、なんて考えながらぼんやりとそこを眺めていた。
遠くだから、何を話しているかなんて分からない。けれど俯いていた三木ヱ門の頭に手を置いた滝夜叉丸を見て「そういうやつなんだよなぁ」と思った。
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MAIKING現パロ&美大パロ綾滝。続きます。またもやというか、結構ガッツリ綾→仙描写を入れるつもりなのと、またもや色々な人やらカプが出るかもなのでお気をつけください。ハピエン予定ですが自己責任でお願いします〜ランウェイで踊る③「滝夜叉丸、僕のモデルになってよ」
ケロッと喜八郎はそう言った。記憶が正しければ彼は「私」に「謝罪」に来たはずだとは思ったけれど、彼は何故かタカ丸が座る向かい側ですらなくてそばに腰掛けているし、すっかり別の話にすり変わっていた。
まあでも、喜八郎の言いたいことは分かる。何故なら私自身、稀代の美青年と言えるほど眉目秀麗だからである。鼻筋は通っており、凛々しく整えられた眉毛。臙脂色の瞳に形が整った輪郭。体は服を完璧な状態で着こなすことができるように鍛えているし、さながら彫刻の如く美しい。確かに、彼が後世まで私の造形を残したいと思うのは仕方の無いことである。
似たようなことをずらずらと口から吐き出し、おくれ毛1つないように縛られた髪をサラッと手で靡かせた。
3709ケロッと喜八郎はそう言った。記憶が正しければ彼は「私」に「謝罪」に来たはずだとは思ったけれど、彼は何故かタカ丸が座る向かい側ですらなくてそばに腰掛けているし、すっかり別の話にすり変わっていた。
まあでも、喜八郎の言いたいことは分かる。何故なら私自身、稀代の美青年と言えるほど眉目秀麗だからである。鼻筋は通っており、凛々しく整えられた眉毛。臙脂色の瞳に形が整った輪郭。体は服を完璧な状態で着こなすことができるように鍛えているし、さながら彫刻の如く美しい。確かに、彼が後世まで私の造形を残したいと思うのは仕方の無いことである。
似たようなことをずらずらと口から吐き出し、おくれ毛1つないように縛られた髪をサラッと手で靡かせた。
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MAIKING現パロ&美大パロ綾滝。続きます。またもやというか、結構ガッツリ綾→仙描写を入れるつもりなのと、またもや色々な人やらカプが出るかもなのでお気をつけください。文仙匂わせあります。ハピエン予定ですが自己責任でお願いします〜
ランウェイで踊る② ぱっとランウェイの上で、照らされた人は、サラサラと高く結んだ髪を揺らしていた。尖った鼻先、大きな目はつり上がっていて、意志を感じる眉毛は凛々しい。ライトが当たった虹彩の色は薄かった。紫が緑に反射するような玉虫色のブラウスだって彼によく似合っていたし、その体つきは細いだけではなく均衡がよくとれていた。
何が言いたいかというと、その造形があまりにも素晴らしいと思った。だからこそ、自分の作品でそれを表したいと考えてしまったのだ。
ぱちん、と音を立ててパズルがはまったみたいな感覚があったし、まるで500年前からこのかたちを探していたような運命的な感覚があって、それを芸術世界では耳にタコが出来る程聞いた。それと、どこかで刷り込まれていたような言葉。
3376何が言いたいかというと、その造形があまりにも素晴らしいと思った。だからこそ、自分の作品でそれを表したいと考えてしまったのだ。
ぱちん、と音を立ててパズルがはまったみたいな感覚があったし、まるで500年前からこのかたちを探していたような運命的な感覚があって、それを芸術世界では耳にタコが出来る程聞いた。それと、どこかで刷り込まれていたような言葉。
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MAIKING現パロ&美大パロ綾滝。続きます。またもやというか、結構ガッツリ綾→仙描写を入れるつもりなのと、またもや色々な人やらカプが出るかもなのでお気をつけください。ハピエン予定ですが自己責任でお願いします〜ランウェイで踊る パッと照明がランウェイを照らす。ここは他でもない自分のためのステージで、自分と、それから自分が身骨を注いだ作品を魅せる、そういう場所だ。
しかし、晴天の霹靂、そこに不躾な侵入者があった。ラベンダーアッシュの髪をふわふわと揺らした侵入者はランウェイの先にいた滝夜叉丸の手を取って腰を捕まえた。まるで、今からワルツでも踊るみたいだった。
「喜八郎!」
会場から焦りを含んだ怒鳴り声がして、ハッとするには薄い反応で、その侵入者は「おやまぁ」と呟いてぱっと手を離した。急なことで頭が回っておらず、体を支えられないままその真ん中でべしゃり、と転んだが、引き起こした本人はケロッとランウェイを降りてしまった。
慌てて立ち上がり、澄ましてみたが、周りも呆気にとられている。平常心、平常心と言い聞かせながら引き返し、優雅な振る舞いを心がけていても、僅かに指先と脚が震えていた。
3611しかし、晴天の霹靂、そこに不躾な侵入者があった。ラベンダーアッシュの髪をふわふわと揺らした侵入者はランウェイの先にいた滝夜叉丸の手を取って腰を捕まえた。まるで、今からワルツでも踊るみたいだった。
「喜八郎!」
会場から焦りを含んだ怒鳴り声がして、ハッとするには薄い反応で、その侵入者は「おやまぁ」と呟いてぱっと手を離した。急なことで頭が回っておらず、体を支えられないままその真ん中でべしゃり、と転んだが、引き起こした本人はケロッとランウェイを降りてしまった。
慌てて立ち上がり、澄ましてみたが、周りも呆気にとられている。平常心、平常心と言い聞かせながら引き返し、優雅な振る舞いを心がけていても、僅かに指先と脚が震えていた。
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MAIKING以前書いた綾滝のアフターストーリー的な浜三木の続き。こちらも気分で更新するので気長に楽しんでいただけたら助かるのと、綾滝やらそれ以外要素も入るかも知れませんのでご了承ください。君を知らずに100年生きるより②「私は田村三木ヱ門だ。これからよろしく、守一郎。」
明朗にそう言った少年の虹彩は、燃える火のように真っ赤だった。そのせいか、それとも初対面の緊張と興奮か、差し出された手を握った時に「熱い」と思ったことを今でも鮮明に覚えている。胸がうるさく音をたてて、聞こえてしまうかも、もしかしたら口からまろび出てしまうかもしれないなんて子供みたいに考えていた。そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、三木ヱ門は嬉しそうに笑っていた。
そこからの忍術学園での生活は目まぐるしく、たくさんの出会いや出来事があった。曽祖父と暮らしていたり、ひとりぼっちで籠城していた頃に比べたら信じられないぐらいに騒がしくて、めちゃくちゃで、楽しくて、ずっと前から居たような気もするし、あっという間だった気もした。尊敬する先輩も、かわいい後輩も出来たけれど、やはり「同級生」という存在は特別で、三木ヱ門から聞いた滝夜叉丸と喜八郎の友情関係に憧れを持ったりしていた。
4262明朗にそう言った少年の虹彩は、燃える火のように真っ赤だった。そのせいか、それとも初対面の緊張と興奮か、差し出された手を握った時に「熱い」と思ったことを今でも鮮明に覚えている。胸がうるさく音をたてて、聞こえてしまうかも、もしかしたら口からまろび出てしまうかもしれないなんて子供みたいに考えていた。そんな自分の気持ちを知ってか知らずか、三木ヱ門は嬉しそうに笑っていた。
そこからの忍術学園での生活は目まぐるしく、たくさんの出会いや出来事があった。曽祖父と暮らしていたり、ひとりぼっちで籠城していた頃に比べたら信じられないぐらいに騒がしくて、めちゃくちゃで、楽しくて、ずっと前から居たような気もするし、あっという間だった気もした。尊敬する先輩も、かわいい後輩も出来たけれど、やはり「同級生」という存在は特別で、三木ヱ門から聞いた滝夜叉丸と喜八郎の友情関係に憧れを持ったりしていた。
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DONE綾滝すれ違いおしまい。加筆したら支部にのせるつもり。浜三木の生産ラインでもあるのでご了承ください。恋とはどんなものかしら⑤終 「私は失恋したんだな。」
久しぶりに子供のように泣いたせいでガンガンと痛む頭とは対照的に、気持ちはさっぱりしていた。さっきまで途方に暮れていたというのに、イマイチ引きずらない所も自身の良さである、と滝夜叉丸は理解している。
どうしようも無いのだから、好きでいるしかないし、結局考えてみたら何をどう振舞おうが4年間見せてきた自分を塗り替えるほどは変われないし、それにその自分だってずっと魅力的だったはずだ。いつもそうだった。結局滝夜叉丸は悩んでも、いつもの素敵な滝夜叉丸に戻ってくるのだ。だから、またその「いつも」を取り戻そうと、タカ丸の部屋にあった鏡を覗き込んだ。
部屋の主は、さっき部屋を訪れた三木ヱ門と共に席を外していた。落ち着くまで居てもいいし、出ていってもいい、と気遣いの言葉を残して。戸の前に居たらしい三木ヱ門は少しだけ様子を伺うような素振りを見せたが、目が合うと慌てて逸らされた。不器用なヤツらしい、不器用な優しさを感じて、また少し目頭が熱くなった。
3196久しぶりに子供のように泣いたせいでガンガンと痛む頭とは対照的に、気持ちはさっぱりしていた。さっきまで途方に暮れていたというのに、イマイチ引きずらない所も自身の良さである、と滝夜叉丸は理解している。
どうしようも無いのだから、好きでいるしかないし、結局考えてみたら何をどう振舞おうが4年間見せてきた自分を塗り替えるほどは変われないし、それにその自分だってずっと魅力的だったはずだ。いつもそうだった。結局滝夜叉丸は悩んでも、いつもの素敵な滝夜叉丸に戻ってくるのだ。だから、またその「いつも」を取り戻そうと、タカ丸の部屋にあった鏡を覗き込んだ。
部屋の主は、さっき部屋を訪れた三木ヱ門と共に席を外していた。落ち着くまで居てもいいし、出ていってもいい、と気遣いの言葉を残して。戸の前に居たらしい三木ヱ門は少しだけ様子を伺うような素振りを見せたが、目が合うと慌てて逸らされた。不器用なヤツらしい、不器用な優しさを感じて、また少し目頭が熱くなった。
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MAIKING綾滝すれ違い続き。ゆくゆくはちゃんと綾滝になるけど綾→仙ぽい描写あり。文仙と同じ生産ラインで作られているので匂わせがあります。浜三木もだしたいよね?もうちょいで終わります。恋とはどんなものかしら④『恋って素敵、だって恋をすると綺麗になるのよ。』
そんなの、嘘ですよ、と言ってやりたかった。だってそんなの、同室の男を見ていればハッキリと分かるからだ。
綾部喜八郎の同室の男こと、平滝夜叉丸は花も綻ぶくのたまよろしく、どうやら最近は恋というものに熱心で、自分のサインやらブロマイドそっちのけで奇妙な本ばかりを読み漁っていた。最初こそ、すぐに飽きるだろうと思っていたけれど、意外や意外、それはなかなか終わる気配を見せなかった。
「もしかして、恋、してるとか…?」
「えぇ…?」
そうだ、確か守一郎がそんな事を言ったんだった。頬に手を当てて、恥じらうような素振りを見せた彼とは対照的に喜八郎は眉間に皺を寄せた。その時はただ「面倒くさいことにならなければいいなぁ」と思うだけだった。
4117そんなの、嘘ですよ、と言ってやりたかった。だってそんなの、同室の男を見ていればハッキリと分かるからだ。
綾部喜八郎の同室の男こと、平滝夜叉丸は花も綻ぶくのたまよろしく、どうやら最近は恋というものに熱心で、自分のサインやらブロマイドそっちのけで奇妙な本ばかりを読み漁っていた。最初こそ、すぐに飽きるだろうと思っていたけれど、意外や意外、それはなかなか終わる気配を見せなかった。
「もしかして、恋、してるとか…?」
「えぇ…?」
そうだ、確か守一郎がそんな事を言ったんだった。頬に手を当てて、恥じらうような素振りを見せた彼とは対照的に喜八郎は眉間に皺を寄せた。その時はただ「面倒くさいことにならなければいいなぁ」と思うだけだった。
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MAIKING綾滝すれ違い続き。ゆくゆくはちゃんと綾滝になるけど綾→仙ぽい描写あり。文仙と同じ生産ラインで作られているので匂わせがあります。全然途中だから完成出来たらいいなの気持ち。恋とはどんなものかしら③ 一晩、悩んでみた結果、やはりスーパースターには失恋は似合わないのではないか、ということだった。
何を隠そうこの平滝夜叉丸は、あろう事か同室の綾部喜八郎に懸想していた。けれどまぁ良く考えれば、自身の次に容姿が整っているようにも思うし、マイペースではあるが天才トラパーと名高く才覚に溢れている。私が、私の次に好ましく思うのは仕方がないことである。
しかし、私の優秀な脳はあることにも気づいていた。それは、彼が先輩である立花仙蔵を慕っているということだ。
ならば、どうすればいいか、二択だった。
よし、と腹を括るなり、滝夜叉丸は読みかけだった本を捲り始めた。どうすれば喜八郎が私に恋心を向けるのか、学び、作戦を立てなければならないと思ったからである。
3518何を隠そうこの平滝夜叉丸は、あろう事か同室の綾部喜八郎に懸想していた。けれどまぁ良く考えれば、自身の次に容姿が整っているようにも思うし、マイペースではあるが天才トラパーと名高く才覚に溢れている。私が、私の次に好ましく思うのは仕方がないことである。
しかし、私の優秀な脳はあることにも気づいていた。それは、彼が先輩である立花仙蔵を慕っているということだ。
ならば、どうすればいいか、二択だった。
よし、と腹を括るなり、滝夜叉丸は読みかけだった本を捲り始めた。どうすれば喜八郎が私に恋心を向けるのか、学び、作戦を立てなければならないと思ったからである。
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MAIKING綾滝すれ違い。続き。ゆくゆくはちゃんと綾滝になるけど綾→仙ぽい描写あり。文仙と同じ生産ラインで作られているので匂わせがあります。全然途中だから完成出来たらいいなの気持ち。恋とはどんなものかしら②「恋って素敵、だって恋をすると綺麗になるのよ。」
ほんとうよ、とその弾む声は言っていた。その鈴の鳴るようなくのたまたちの声を、綾部喜八郎は穴の中で聞いていた。足元、危ないですよ、と呼びかけようかと悩んだが、楽しそうな会話に水をさしてはいけない気がした。
気持ちと同様に、少女たちの足取りも浮ついていたのか、結局穴に落ちてくることはなく、高い声も遠ざかって行った。別に、特段気にかけることでも無いいつもの話だ。そんな事を思いながら上をぼーっと見上げていると、誰か覗き込んでいた。
「ここにいたのか。」
逆光で顔なんて見えないのに、誰かなんて直ぐに分かった。特徴的な声と、それに自分を探す存在なんて数える程度しかいない。そして薄ぼんやりと、「お前も落ちてきてはくれないんだな」なんて考えていたりした。
3689ほんとうよ、とその弾む声は言っていた。その鈴の鳴るようなくのたまたちの声を、綾部喜八郎は穴の中で聞いていた。足元、危ないですよ、と呼びかけようかと悩んだが、楽しそうな会話に水をさしてはいけない気がした。
気持ちと同様に、少女たちの足取りも浮ついていたのか、結局穴に落ちてくることはなく、高い声も遠ざかって行った。別に、特段気にかけることでも無いいつもの話だ。そんな事を思いながら上をぼーっと見上げていると、誰か覗き込んでいた。
「ここにいたのか。」
逆光で顔なんて見えないのに、誰かなんて直ぐに分かった。特徴的な声と、それに自分を探す存在なんて数える程度しかいない。そして薄ぼんやりと、「お前も落ちてきてはくれないんだな」なんて考えていたりした。
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MAIKING綾滝すれ違い。ゆくゆくはちゃんと綾滝になるけど綾→仙ぽい描写あり。文仙と同じ生産ラインで作られているので匂わせがあります。全然途中だから完成出来たらいいなの気持ち。恋とはどんなものかしら「私は失恋したのか」と理解をしたのは、恋をしていたのだと自覚したのと同時だった。その後に池を覗きこんで反射させた自分の顔は、美しく整ったいつものものであるというのに、笑顔がほんの少しだけ滑稽に見えた。
少し前に時を遡り、考えていた事を話すとするならば、この平滝夜叉丸は恋というものをしらないな、と思い巡らしていた。
というのも、この圧倒的な美貌、才能をもってしてモテるな、という方が無理な話であると自覚はしているというのに、自身がその感覚を知らない、というのは些か失礼な気がしたからだ。それから、自分が誰が好きかを考えてみた。同級生は好きだ。でもそれは所謂「同じ釜の飯を食った」仲だからとも言えるものだし、慕ってくれる後輩も、導いてくれる先輩も、等しく好ましく思ってはいるが、話に聞く「甘酸っぱい痛み」とは違うと断言出来た。
4029少し前に時を遡り、考えていた事を話すとするならば、この平滝夜叉丸は恋というものをしらないな、と思い巡らしていた。
というのも、この圧倒的な美貌、才能をもってしてモテるな、という方が無理な話であると自覚はしているというのに、自身がその感覚を知らない、というのは些か失礼な気がしたからだ。それから、自分が誰が好きかを考えてみた。同級生は好きだ。でもそれは所謂「同じ釜の飯を食った」仲だからとも言えるものだし、慕ってくれる後輩も、導いてくれる先輩も、等しく好ましく思ってはいるが、話に聞く「甘酸っぱい痛み」とは違うと断言出来た。
ringofeb9
CAN’T MAKEこういう綾滝書きたいなという雑な話。佳人薄命とは私のためにあるようなものだと豪語する残された時間短い滝とこいつアホだと思いつつも逝かないでほしいなと心のどこかで思ってる綾の話。(現パロ。2人は中学生)
滝夜叉丸の心臓になれたら滝夜叉丸が目を覚ましたのは保健室だった。
「私は……」
「……」
ベッドサイドには砂で汚れた体操服姿の喜八郎が黙って座っている。
「……喜八郎。私は――」
「……アホ夜叉丸」
それだけ言ってから喜八郎は滝夜叉丸の額を指で弾いた。
「何をするアホ八郎!?」
額を押さえながら滝夜叉丸は飛び起きた。
「アホは滝夜叉丸だろ? 見学って言われてた体育の授業に勝手に参加して倒れたアホ夜叉丸」
「そんなにアホアホと連呼するんじゃない! 私は五教科の成績は学年で一番、実技科目の成績も学年で一番のスーパースター、平滝夜叉丸だぞ!?」
「でも、保健体育は座学でカバーしてるよね。全力を出せないから」
「それは仕方ないだろう? 不本意だが運動は制限されているから。……しかし、残り短い命だ。死ぬ前に体育の授業で美しい私の姿を披露するのもいいと思わないか?」
696「私は……」
「……」
ベッドサイドには砂で汚れた体操服姿の喜八郎が黙って座っている。
「……喜八郎。私は――」
「……アホ夜叉丸」
それだけ言ってから喜八郎は滝夜叉丸の額を指で弾いた。
「何をするアホ八郎!?」
額を押さえながら滝夜叉丸は飛び起きた。
「アホは滝夜叉丸だろ? 見学って言われてた体育の授業に勝手に参加して倒れたアホ夜叉丸」
「そんなにアホアホと連呼するんじゃない! 私は五教科の成績は学年で一番、実技科目の成績も学年で一番のスーパースター、平滝夜叉丸だぞ!?」
「でも、保健体育は座学でカバーしてるよね。全力を出せないから」
「それは仕方ないだろう? 不本意だが運動は制限されているから。……しかし、残り短い命だ。死ぬ前に体育の授業で美しい私の姿を披露するのもいいと思わないか?」