chiocioya18
DONE雨想。特別なココア。同棲してる設定です。
モバのバレンタインデーの想楽くんがチリパウダー入りココアくれる台詞が元ネタ。
飲むものによって食器を変える。なんでも同じカップで済ますのも便利で楽ではあるけれど、一息入れる時は容れ物にこだわるくらい心に余裕を持っていたい。
今日も気温は低空飛行、温かいものが飲みたくなる。さて今の気分は日本茶か、それとも紅茶にしようか。食器棚から湯呑みとティーカップどちらをとるか迷っていると、廊下に面したドアが開けられすらりとした長駆が入ってきた。
「雨彦さん。おかえりー」
「ああ。ただいま」
外から帰ってきた雨彦さんは、白い顔の鼻先だけを赤くしている。冷たい空気をまとわりつかせたコートを脱いでハンガーにかける背中に訊ねた。
「寒かったでしょー。なにか温かい飲み物でもいれようかー?」
「おや。ずいぶんサービスがいいな」
1274今日も気温は低空飛行、温かいものが飲みたくなる。さて今の気分は日本茶か、それとも紅茶にしようか。食器棚から湯呑みとティーカップどちらをとるか迷っていると、廊下に面したドアが開けられすらりとした長駆が入ってきた。
「雨彦さん。おかえりー」
「ああ。ただいま」
外から帰ってきた雨彦さんは、白い顔の鼻先だけを赤くしている。冷たい空気をまとわりつかせたコートを脱いでハンガーにかける背中に訊ねた。
「寒かったでしょー。なにか温かい飲み物でもいれようかー?」
「おや。ずいぶんサービスがいいな」
komaki_etc
DOODLE雨想、成人式リクエストおちょこ 日曜日、実家には帰らなかった。
正確には、帰る暇がなかった。年始早々仕事が続いたのもあるし、正直成人のお祝いなんて、東京でも出来るのだ。
実家には正月に顔を出したし、そこでお祝いの言葉をかけられて、おしまい。この方が気が楽で助かった。中高の頃の同級生と成人式の会場で会ったら、きっとあっというまにもみくちゃの質問攻めにされて、あることないこと噂が広まって、テレビ中継でその様子が報道されてしまうのだ。ほんの数人の親しい人とだけ連絡がとれればそれでいいし、それは成人式の時じゃなくてもいい。兄さんには「行ったらどうだ」と言われたけれど、行かない選択をしたことを後悔はしていない。
「それでね、九郎先生、一希先生と、袴で写真を撮ってきたんだよー。ほら」
2008正確には、帰る暇がなかった。年始早々仕事が続いたのもあるし、正直成人のお祝いなんて、東京でも出来るのだ。
実家には正月に顔を出したし、そこでお祝いの言葉をかけられて、おしまい。この方が気が楽で助かった。中高の頃の同級生と成人式の会場で会ったら、きっとあっというまにもみくちゃの質問攻めにされて、あることないこと噂が広まって、テレビ中継でその様子が報道されてしまうのだ。ほんの数人の親しい人とだけ連絡がとれればそれでいいし、それは成人式の時じゃなくてもいい。兄さんには「行ったらどうだ」と言われたけれど、行かない選択をしたことを後悔はしていない。
「それでね、九郎先生、一希先生と、袴で写真を撮ってきたんだよー。ほら」
komaki_etc
DOODLE雨想。とりとめもない話傘の降る星 雨の代わりに傘が降ってくるようになって、久しい。
つまりどれだけ濡れても構わないということだねー、と言うと、人は「それは何か違うだろう」と言って眉を顰める。だって、いつでも傘をさせるのだから、同じことだろうに。
兄さんと暮らしているマンションの前の道路に、傘が積み上がっていた。雪かきのように、もしくはイチョウを掃くように端においやっているのは、雨彦さんだった。
「おはよう、北村」
「おはようございますー、どうしてここにいるのー?」
「お前さんに会いたくてな」
雨が降らない世界で、農作物は枯れていく。近いうちに人類は滅ぶのだろう、傘の焼却も追いつかない。雨彦さんは家業が忙しいとかで近頃会えなかったから、実は寂しくて、僕はこっそり祈っていた。だから、僕は傘に感謝した。家まで出迎えに来てくれたのだ。濡れなくてもいいし、僕はこれでいい。
640つまりどれだけ濡れても構わないということだねー、と言うと、人は「それは何か違うだろう」と言って眉を顰める。だって、いつでも傘をさせるのだから、同じことだろうに。
兄さんと暮らしているマンションの前の道路に、傘が積み上がっていた。雪かきのように、もしくはイチョウを掃くように端においやっているのは、雨彦さんだった。
「おはよう、北村」
「おはようございますー、どうしてここにいるのー?」
「お前さんに会いたくてな」
雨が降らない世界で、農作物は枯れていく。近いうちに人類は滅ぶのだろう、傘の焼却も追いつかない。雨彦さんは家業が忙しいとかで近頃会えなかったから、実は寂しくて、僕はこっそり祈っていた。だから、僕は傘に感謝した。家まで出迎えに来てくれたのだ。濡れなくてもいいし、僕はこれでいい。
R_betsu
DOODLE輝薫と雨想 どちらも輝と雨彦の体格を実感すると萌えるという話改めて考えると想楽くん、174cm/62kgなので175cm/63kgの輝とほぼ差がないのに雨彦さんといると、ね〜〜…………すごいね〜〜…………
エキスポからずっと輝ってそういえばバク宙できるんだもんな…と頭を抱えている
komaki_etc
DOODLE雨想、あけおめめしあがれ 二人暮らしを始めて最初の元旦だから、という理由をつけて、初日の出を見にベランダを出た。ベランダの方角は東南だからしっかり日の出が見えるわけではないけれど、空が明るくなるのを一緒に見届けられたらそれでいい。
二人でひとつの毛布をかぶっている。二人羽織みたいに。寝起きの雨彦さんはあたたかくて、抱きしめられるのが心地よかった。
「お、そろそろだな」
空がだんだんと水色に染まっていき、黄色が差し込んでくる。空気は凛と冷たくて、鼻の奥が痛かった。白みだした世界を雨彦さんの腕の中から見ながら、僕は吐息で手をあたためた。
「腕の中 迎えて願う 初日の出」
「ほう、何を願うんだ」
「トップアイドル、でしょー?」
「それ以外で」
976二人でひとつの毛布をかぶっている。二人羽織みたいに。寝起きの雨彦さんはあたたかくて、抱きしめられるのが心地よかった。
「お、そろそろだな」
空がだんだんと水色に染まっていき、黄色が差し込んでくる。空気は凛と冷たくて、鼻の奥が痛かった。白みだした世界を雨彦さんの腕の中から見ながら、僕は吐息で手をあたためた。
「腕の中 迎えて願う 初日の出」
「ほう、何を願うんだ」
「トップアイドル、でしょー?」
「それ以外で」
komaki_etc
DOODLE雨想。スタバのカスタム呪文 新宿は少し歩くだけでスタバにぶつかる。さてどこに行こうか、となった時、「とりあえず」で寄れるのがスタバのいいところだ。
年末年始は晴れが多くて助かる。人ごみは暗めの色のコートやジャケットのせいで真っ黒で、クリスマスの残骸のイルミネーションだけが綺麗だ。鳩の群れみたい、と思った。
そんな中でも、雨彦さんは目を引く。身長のせいでもあるが、やはり芸能人というべきか、華やかなオーラが増したように思う。黒のタートルネックなんて着るんだ。色気がとんでもないことになっている。これは早々に店内に仕舞わないといけない。
仕事と仕事のあいまの、ぶらりとしたデートだった。この程度じゃデートとは呼べないかもしれないが、二人で歩いていたらそれはもうデートとして換算することにしている。そう名付けるだけで、時間つぶしの散歩も特別なものになる気がする。
1757年末年始は晴れが多くて助かる。人ごみは暗めの色のコートやジャケットのせいで真っ黒で、クリスマスの残骸のイルミネーションだけが綺麗だ。鳩の群れみたい、と思った。
そんな中でも、雨彦さんは目を引く。身長のせいでもあるが、やはり芸能人というべきか、華やかなオーラが増したように思う。黒のタートルネックなんて着るんだ。色気がとんでもないことになっている。これは早々に店内に仕舞わないといけない。
仕事と仕事のあいまの、ぶらりとしたデートだった。この程度じゃデートとは呼べないかもしれないが、二人で歩いていたらそれはもうデートとして換算することにしている。そう名付けるだけで、時間つぶしの散歩も特別なものになる気がする。
komaki_etc
DOODLE雨想。一人暮らしの雨彦さん柿 化粧水を、さっぱりタイプからしっとりタイプに変えてみた。秋から冬へ変わっていく今日この頃、乾燥対策をはじめなければならない。
「雨彦さんも使っていいからねー」
雨彦さんの家の洗面所には、勝手に僕のものが増えている。歯ブラシしかり、ヘアバンドしかり。僕が趣味で買ってくる入浴剤も溜まってきた。キンモクセイの香りの入浴剤がまだ残っている、僕に遠慮してあまり使っていないみたいだ。次のを買ってくるから、気にしなくていいのに。
「しっとりタイプの方が、やっぱり保湿力が違うんだろうな」
「そう思うよ―。べたべたするのが嫌で、普段はさっぱりタイプを使ってるんだけどねー。そろそろ冬だから」
「冬の訪れを北村の頬から味わえるってことだな」
1445「雨彦さんも使っていいからねー」
雨彦さんの家の洗面所には、勝手に僕のものが増えている。歯ブラシしかり、ヘアバンドしかり。僕が趣味で買ってくる入浴剤も溜まってきた。キンモクセイの香りの入浴剤がまだ残っている、僕に遠慮してあまり使っていないみたいだ。次のを買ってくるから、気にしなくていいのに。
「しっとりタイプの方が、やっぱり保湿力が違うんだろうな」
「そう思うよ―。べたべたするのが嫌で、普段はさっぱりタイプを使ってるんだけどねー。そろそろ冬だから」
「冬の訪れを北村の頬から味わえるってことだな」
komaki_etc
DOODLEリクエスト「小悪魔想楽くんと振り回される雨彦さん」やれやれ 一人暮らしをするようになって半年、いつのまにか我が家に北村の私物が増えた。
雑貨屋で見つけてきたものやら一人旅のおみやげやらで、リビングにはちまちまと雑貨が飾ってある。それに加え、彼の歯ブラシと寝巻き、数枚の下着も常備されるようになった。洗濯ものを干すとき、見慣れぬそれらに触れるのが少しこそばゆい。
だから――もちろんお互いのスケジュールの都合もあるが――北村はいつでも、我が家に泊まれるようになった。気軽に、今日泊めてよ、などと言ってくるようになった彼を、可愛らしく思ってしまうのだから仕方ない。俺のサイズに合ったベッドなら、男二人並んで寝ることは可能だ。
そんなわけで今夜も、北村はふらりと泊まりにきた。シャワーの音を聞きながら、さてどうしたもんかと考える。
1302雑貨屋で見つけてきたものやら一人旅のおみやげやらで、リビングにはちまちまと雑貨が飾ってある。それに加え、彼の歯ブラシと寝巻き、数枚の下着も常備されるようになった。洗濯ものを干すとき、見慣れぬそれらに触れるのが少しこそばゆい。
だから――もちろんお互いのスケジュールの都合もあるが――北村はいつでも、我が家に泊まれるようになった。気軽に、今日泊めてよ、などと言ってくるようになった彼を、可愛らしく思ってしまうのだから仕方ない。俺のサイズに合ったベッドなら、男二人並んで寝ることは可能だ。
そんなわけで今夜も、北村はふらりと泊まりにきた。シャワーの音を聞きながら、さてどうしたもんかと考える。
komaki_etc
DOODLE雨想、同棲。雑誌の表紙おめでとう乾杯 基本は節約メニューの我が家でも、「もういいや!」となることはある。
僕が表紙を飾る雑誌の発売日ともなれば、雨彦さんは「お祝いしよう」としきりに言って聞かない。これからそんなのいくらでも出るんだから、毎度毎度祝ってたらキリないでしょー、と言っても、「祝いたいんだ」と微笑まれちゃ、それ以上は口を噤むことしか出来なかった。
「で、お寿司ってわけー?」
「出前じゃなくてスーパーのパックで我慢したんだ、節約だろ?」
「そりゃまあ、そうですけどー」
雨彦さんはお寿司に醤油をかけながら、ほら、好きなのをとりな、と僕を急かす。二人で揃えた食器、箸、コップ。おなかがぐうと鳴ったので、仕方なく、という風を装ってサーモンをとった。雨彦さんはイクラに手を伸ばす。
1372僕が表紙を飾る雑誌の発売日ともなれば、雨彦さんは「お祝いしよう」としきりに言って聞かない。これからそんなのいくらでも出るんだから、毎度毎度祝ってたらキリないでしょー、と言っても、「祝いたいんだ」と微笑まれちゃ、それ以上は口を噤むことしか出来なかった。
「で、お寿司ってわけー?」
「出前じゃなくてスーパーのパックで我慢したんだ、節約だろ?」
「そりゃまあ、そうですけどー」
雨彦さんはお寿司に醤油をかけながら、ほら、好きなのをとりな、と僕を急かす。二人で揃えた食器、箸、コップ。おなかがぐうと鳴ったので、仕方なく、という風を装ってサーモンをとった。雨彦さんはイクラに手を伸ばす。
chiocioya18
DONE雨想。むらむら村くんとじらし彦さん。ウインターベアーのもこもこルームウェアでやらしいことしてほし〜〜〜!の願望です。
雨彦さん清掃社住みだと連れ込むのはレアかもなあと思うなど。清掃社の間取りは想像です。
一歩前を歩く雨彦さんの背中をぼんやりと見つめている。足元がふわふわしている気がして、危うく躓きそうになるのを何度か踏ん張って堪えた。雨彦さんの自宅、アヤカシ清掃社にはクリスさんと一緒にお邪魔したことはあるけれど、泊まる目的で訪れるのは初めてだ。
雨彦さんは叔母さんと暮らしているはずなのに僕が行っても大丈夫なのかと尋ねたら「今夜は留守にしてるから問題ないぜ」と、さすが抜かりがなかった。誘われたからといってのこのこと彼についてきてしまっている自分を罠にかかる獲物のようで愚かしいと感じる反面、捕食されるのを期待してしまっているのもまた事実。雨彦さんと恋仲になってから、たまにちょっと自分の性癖の歪みを感じることがあって恐ろしい。
2863雨彦さんは叔母さんと暮らしているはずなのに僕が行っても大丈夫なのかと尋ねたら「今夜は留守にしてるから問題ないぜ」と、さすが抜かりがなかった。誘われたからといってのこのこと彼についてきてしまっている自分を罠にかかる獲物のようで愚かしいと感じる反面、捕食されるのを期待してしまっているのもまた事実。雨彦さんと恋仲になってから、たまにちょっと自分の性癖の歪みを感じることがあって恐ろしい。
ahotamanZ
DONEパバステWebでオグリさんにリクエストさせていただいた「あーんしてもらう」お題のSSを。。。。。かいていただき・・・・・・あまりの萌へに絵を出力したいと思っていたのですが社会の闇が深すぎてこのタイミングになりました おぐりさん本当にありがとうございました・・・!!!!!火砲にします!komaki_etc
DOODLE雨想、雨彦視点オレンジ 金木犀の香りがするという紅茶を頼んでみた。いつもならブレンドコーヒー一択なのだが、北村が季節に合わせて注文を変えるのを見て、なんだか真似してみたくなったのだ。
オレンジの輪切りの乗った茶色の液体を窓際のカウンター席に置き、傘を椅子の背もたれにかける。グリップの部分が木で出来た、大ぶりの黒い傘。その辺に売っているビニール傘を使っていたら、北村に「こういう小物にも愛着を持つの、楽しいよー」と教えてもらい、興味半分で買ったものだ。なるほどたしかに、こんな秋雨の日にはよく似合う、と我ながら感じる。
北村とは十一も違うのに、様々なことを教えられてばかりだ。彼が生きる若々しい人生の一瞬一瞬の、なんと鮮烈なことか。進むがままに身を任せてきた俺の人生とは大きく違う――彼から見た俺もまた、大人の人生を歩む眩い未来に見えていたならいいのだが。
2120オレンジの輪切りの乗った茶色の液体を窓際のカウンター席に置き、傘を椅子の背もたれにかける。グリップの部分が木で出来た、大ぶりの黒い傘。その辺に売っているビニール傘を使っていたら、北村に「こういう小物にも愛着を持つの、楽しいよー」と教えてもらい、興味半分で買ったものだ。なるほどたしかに、こんな秋雨の日にはよく似合う、と我ながら感じる。
北村とは十一も違うのに、様々なことを教えられてばかりだ。彼が生きる若々しい人生の一瞬一瞬の、なんと鮮烈なことか。進むがままに身を任せてきた俺の人生とは大きく違う――彼から見た俺もまた、大人の人生を歩む眩い未来に見えていたならいいのだが。
komaki_etc
DOODLE雨想、ネイルバイオレット 本当にただ、なんとなくだけれど。爪を紫色に塗った。
仕事からの帰り道でドラッグストアに寄った時、爪のケア用品を見ていたんだった。やすりを手に取った瞬間、ちらりと視界の中に入ってきたネイルポリッシュたちのなかに、その紫色はぽつんといた。
明日が一日オフだから塗ったにすぎない。一日も経たずに落としてしまう。自分でも何でこんなことをしているのかはわからないけれど、なんとなく、駅前に花屋ができたせいだろうな、とは思っている。
ひまわりが高々と咲いていた。夏の風物詩、と黒板を用いた看板に絵が描かれていた。駅前の花屋でひまわりを買う人生。楽し気ではないか。なんとなく、それに対抗したくなったのだ。
ネイルポリッシュの名前はなんたらバイオレットというものだった。バイオレット、すみれ。すみれって確か、先天的に香りを感じられない人がいたはずだ。
721仕事からの帰り道でドラッグストアに寄った時、爪のケア用品を見ていたんだった。やすりを手に取った瞬間、ちらりと視界の中に入ってきたネイルポリッシュたちのなかに、その紫色はぽつんといた。
明日が一日オフだから塗ったにすぎない。一日も経たずに落としてしまう。自分でも何でこんなことをしているのかはわからないけれど、なんとなく、駅前に花屋ができたせいだろうな、とは思っている。
ひまわりが高々と咲いていた。夏の風物詩、と黒板を用いた看板に絵が描かれていた。駅前の花屋でひまわりを買う人生。楽し気ではないか。なんとなく、それに対抗したくなったのだ。
ネイルポリッシュの名前はなんたらバイオレットというものだった。バイオレット、すみれ。すみれって確か、先天的に香りを感じられない人がいたはずだ。
komaki_etc
DOODLE雨想同棲ヨーグルト 寝ぐせがとれない夢を見た。
それは梳かしても梳かしてもなおらない、針金みたいなかたちだった。根元に水をつけても、ドライヤーをしても、髪の根元は爆発していた。はやく、はやくしなければ、学校に遅れてしまう。でもこんな髪型のまま学校になんていけない。
心臓が早鐘をうつ感覚で起きた。夢から覚めると、ああ今のは夢だったのだ、と気付くまでに数秒かかる。僕は眼前に広がる雨彦さんの背中に、鼻をこすりつけた。
「起きたかい」
「あ、ごめん、起こしちゃったー?」
「そうだな、もうひと眠り」
雨彦さんは寝返りをうって、僕を抱きしめ直す。今度は胸に鼻をこすりつけた。雨彦さんの匂い。朝のベッドの中では、鬢付け油の匂いはしない。
2030それは梳かしても梳かしてもなおらない、針金みたいなかたちだった。根元に水をつけても、ドライヤーをしても、髪の根元は爆発していた。はやく、はやくしなければ、学校に遅れてしまう。でもこんな髪型のまま学校になんていけない。
心臓が早鐘をうつ感覚で起きた。夢から覚めると、ああ今のは夢だったのだ、と気付くまでに数秒かかる。僕は眼前に広がる雨彦さんの背中に、鼻をこすりつけた。
「起きたかい」
「あ、ごめん、起こしちゃったー?」
「そうだな、もうひと眠り」
雨彦さんは寝返りをうって、僕を抱きしめ直す。今度は胸に鼻をこすりつけた。雨彦さんの匂い。朝のベッドの中では、鬢付け油の匂いはしない。
chiocioya18
DONE雨想。夏の内に溶け彦さん書いておきたかった。モバの一コマを雨想テイストにまとめた感じになりました。
暑い。暑い。暑い。口を開けば鳴き声のようにそれしか言えない。あまりの猛暑に語彙まで溶けてしまったようだ。真夏の容赦ない外気からようやく事務所にたどり着いた雨彦はソファにぐったりと倒れ込む。たまたま人のいない時間帯だったのか、雨彦がソファを占領しても咎められることはなかった。
額に浮かんだ汗は拭ってもまたすぐに噴き出してきて、ソファに体温が移り温くなるのにうんざりする。事務所は冷房こそ効いているが、出入りするアイドルたちの体調を慮って低すぎない温度に設定されている。雨彦としてはもう少し涼しくしてほしいところだが、そんなことで駄々をこねるほど大人げなくはないつもりだ。
冷たい飲み物でも取りに冷蔵庫へ行きたい気持ちもあれど冷房直下のこの場所から離れがたく、動けないでいると「わー、雨彦さんが溶けてるー」とのんびりした声が現れた。
1162額に浮かんだ汗は拭ってもまたすぐに噴き出してきて、ソファに体温が移り温くなるのにうんざりする。事務所は冷房こそ効いているが、出入りするアイドルたちの体調を慮って低すぎない温度に設定されている。雨彦としてはもう少し涼しくしてほしいところだが、そんなことで駄々をこねるほど大人げなくはないつもりだ。
冷たい飲み物でも取りに冷蔵庫へ行きたい気持ちもあれど冷房直下のこの場所から離れがたく、動けないでいると「わー、雨彦さんが溶けてるー」とのんびりした声が現れた。
chiocioya18
DONE雨想。雷雨の朝の話。雨彦さんはインテリ属性なので頭で考えるタイプだとは思うんですが、不意になんかグッときてキスしちゃったらかわいいなあと思います(?)
ガラス越しにもバタバタと激しい雨。時折稲光が走る空からは大型獣が喉を鳴らして威嚇しているような音がしている。窓を打つ水滴を眺めていると、外に出る勇気がどんどん削られていく気がした。それでも今日は一限から、必修の授業が入っている。
「この天気じゃ電車も難儀だろう。学校まで送るぜ」
窓辺から天を睨む僕を見かねたのか、車のキーを片手に雨彦さんが声をかけてくる。朝から送ってもらうだなんて、雨彦さんの家に泊まったという証拠のようで気が引けるけれど、傘も役に立たなそうな雨足を見ていると提案に甘えてしまおうかという思いに天秤が傾く。
「稲妻にペタリ萎れる矜持かな…。悪いけどお願いしようかなー…」
カッ ドォン!!
1040「この天気じゃ電車も難儀だろう。学校まで送るぜ」
窓辺から天を睨む僕を見かねたのか、車のキーを片手に雨彦さんが声をかけてくる。朝から送ってもらうだなんて、雨彦さんの家に泊まったという証拠のようで気が引けるけれど、傘も役に立たなそうな雨足を見ていると提案に甘えてしまおうかという思いに天秤が傾く。
「稲妻にペタリ萎れる矜持かな…。悪いけどお願いしようかなー…」
カッ ドォン!!
komaki_etc
DOODLE雨想リクエスト内緒話ナイショ話 雨彦さんの家でレポートの宿題と戦っていた。なぜここでやっているかと言うと、世間では夏休みが始まったのだ。図書館も事務所も常に人が溢れている。その若々しいオーラが眩しく感じつつも、ひとりで静かに課題に向き合いたい僕は、逃げるようにして雨彦さんの家へと流れ着いたのだった。
「自宅では捗らないかい?」
「兄さんが早めの夏休みでねー。ゆっくり寝かせてあげたくて」
「なるほど。兄貴想いだな」
「近所のカフェも満員で騒がしくて」
街が賑やかになることはいいことだ、活気にあふれて物流が回る。この世界が華やいでいくのだから。ただちょっと、いつも木陰にいたかった僕にとって、木陰まで陽気な雰囲気が流れてくると、息苦しくなってしまうのだ。
2670「自宅では捗らないかい?」
「兄さんが早めの夏休みでねー。ゆっくり寝かせてあげたくて」
「なるほど。兄貴想いだな」
「近所のカフェも満員で騒がしくて」
街が賑やかになることはいいことだ、活気にあふれて物流が回る。この世界が華やいでいくのだから。ただちょっと、いつも木陰にいたかった僕にとって、木陰まで陽気な雰囲気が流れてくると、息苦しくなってしまうのだ。
komaki_etc
DOODLE雨想リクエストあなたのせい 折り紙のうさぎが完成した時には、もう十二時を超えていた。指先がかさかさとして、潤いを求めている。僕はキッチンに向かい、冷蔵庫から麦茶を出した。残りわずかだったら口を付けて直飲みしてしまおうと思っていたのに、二リットルのペットボトルは満タンだった。兄さんはまだ帰らない。
折り紙に集中して肩が凝るだなんて、なんとも間抜けだ。僕は固まった首をぐるりと回し、腕を大きく伸ばした。明日のレッスンではストレッチを念入りに行おう。酸素を取り入れたからか大きな欠伸が出て、それを合図に眠気がやってくる。
明日の授業は午後からだから、のんびりと寝られる。そう思っていた矢先、ぶ、とスマホが震えた。何の通知かなんて、見なくてもわかった。僕はリビングの電気を消しながら、LINKの表示を確認する。思った通り、雨彦さんからだ。
1713折り紙に集中して肩が凝るだなんて、なんとも間抜けだ。僕は固まった首をぐるりと回し、腕を大きく伸ばした。明日のレッスンではストレッチを念入りに行おう。酸素を取り入れたからか大きな欠伸が出て、それを合図に眠気がやってくる。
明日の授業は午後からだから、のんびりと寝られる。そう思っていた矢先、ぶ、とスマホが震えた。何の通知かなんて、見なくてもわかった。僕はリビングの電気を消しながら、LINKの表示を確認する。思った通り、雨彦さんからだ。
chiocioya18
DONE雨想です。COD連動ストーリーの後日談というか、南の島からの帰国前のつもりで書いてます。ネタバレらしいネタバレはないですが気になる方はご注意ください。
雨彦さんはちょっとキザなくらいがいいと思ってるのでコテコテのシチュになりました。ヘキなのでしかたない。
見慣れない部屋の時計を眺めて想楽は小さく溜息をついた。もう寝てもいい時間なのだが、ホテルの広いベッドに転がっていても一向に眠気がやってこない。原因は明白で、昼間クリス達とダイビングした後、休憩のつもりがしばし寝入ってしまったせいだろう。せっかくの海外でのオフを昼寝で過ごしてしまったのはもったいない気もしたが、心地よい疲労感の中の眠りはとても気持ちよかった。
もう朝には帰国の便に乗る。待ち合わせに寝坊するわけには行かないから、そろそろ眠らなければ。こういう時のために本を持ってきていたはずなのになんだか読む気になれなくて、ついに想楽はベッドを抜け出した。
外に散歩にでも行きたいところだが、こんな夜中に一人で土地勘のない場所をうろつくのも気が引ける。適当にホテルの中でも散策しようと廊下に出たところで、見知った長身と鉢合わせた。
1424もう朝には帰国の便に乗る。待ち合わせに寝坊するわけには行かないから、そろそろ眠らなければ。こういう時のために本を持ってきていたはずなのになんだか読む気になれなくて、ついに想楽はベッドを抜け出した。
外に散歩にでも行きたいところだが、こんな夜中に一人で土地勘のない場所をうろつくのも気が引ける。適当にホテルの中でも散策しようと廊下に出たところで、見知った長身と鉢合わせた。
komaki_etc
DOODLE雨想、雨の日ポッカリ 身長しかり、靴のサイズだって結構大きい方だ――と、思う。左右に立つ者が異様なだけで。
僕は玄関で今日の靴を考えあぐねていた。小雨となると、スニーカーは避けた方がいいだろう。撥水加工のあるローファーにするか、それともいっそレインシューズにするか。
レインシューズは、梅雨に向けて最近購入したばかりのものだった。つやつやと光る黒、爪先の丸み。ショートブーツの形で、歩くとがぽがぽする。指の関節がすこし擦れるような感覚があるが、もう一サイズ小さいのは窮屈だったから仕方ない。
予報では雨は一日降る。ならば、うん、レインシューズで行こう。とっておきをおろすというのはどこかワクワクする。広げた靴たちを靴箱に収め、カバンを持ってドアを開けた。世界が広がったと同時に雨の音が耳に入ってくる。やはり部屋の中というのは世界から遮断されているのだ。
1894僕は玄関で今日の靴を考えあぐねていた。小雨となると、スニーカーは避けた方がいいだろう。撥水加工のあるローファーにするか、それともいっそレインシューズにするか。
レインシューズは、梅雨に向けて最近購入したばかりのものだった。つやつやと光る黒、爪先の丸み。ショートブーツの形で、歩くとがぽがぽする。指の関節がすこし擦れるような感覚があるが、もう一サイズ小さいのは窮屈だったから仕方ない。
予報では雨は一日降る。ならば、うん、レインシューズで行こう。とっておきをおろすというのはどこかワクワクする。広げた靴たちを靴箱に収め、カバンを持ってドアを開けた。世界が広がったと同時に雨の音が耳に入ってくる。やはり部屋の中というのは世界から遮断されているのだ。
komaki_etc
DOODLE雨想キャラメル 僕のカバンの中には、常に甘いものが入っている。飴とかチョコとかキャラメルとか、そんな小さなものばかりだけれど、ふとした時に口寂しくなると、それらはちょうどよく僕の心の隙間を満たしてくれるのだ。
「雨彦さん、キャラメルいるー?」
「おお、ありがとさん」
運転中の彼の口に、キャラメルをひとかけら放り込んだ。器用な彼のことだから、助手席の僕の方へ片手を伸ばすことくらい造作もないだろうに。雛鳥のように口を開けた様が少し間抜けでおかしかった。
「最近、よく甘いものを食べてるな」
「そうだねー。なんか小腹がすいちゃうんだー」
適当に誤魔化して、僕もキャラメルを頬張った。ほろ苦い甘さが口の中に広がる。窓の外の街路樹は立派に生い茂っていて、道に濃い影を落としていた。
765「雨彦さん、キャラメルいるー?」
「おお、ありがとさん」
運転中の彼の口に、キャラメルをひとかけら放り込んだ。器用な彼のことだから、助手席の僕の方へ片手を伸ばすことくらい造作もないだろうに。雛鳥のように口を開けた様が少し間抜けでおかしかった。
「最近、よく甘いものを食べてるな」
「そうだねー。なんか小腹がすいちゃうんだー」
適当に誤魔化して、僕もキャラメルを頬張った。ほろ苦い甘さが口の中に広がる。窓の外の街路樹は立派に生い茂っていて、道に濃い影を落としていた。
ahotamanZ
DONEパバステ開催おめでと~ございます!スペースの区切りが京都のおいしいものでかわいかったので、自スペの豆腐にあわせて「北村君のとろあまボイスでおとうふって言ってほしい」というカスの欲望とおいしいものあげておいしいおいしいしてるのを見たい彦さんのまったく意味のない漫画でした 2fuduki_otk
DONE雨の日の雨想のお話。パバステ6のパス限でしたが、全公開に変更しました。
ぜひご覧ください~!
[雨想]雨に唄えば「ありゃー……降ってきちゃったかあー……」
書店で買い物を終えた想楽は、いつの間にか降り出していた雨にため息をついた。
予報ではもう少し遅い時間から降り始めると言っていたのに……とスマホの時計を見てぱちりとまばたきをする。
「うわ、もうこんな時間ー?」
想像していたよりも一時間以上遅い時間が表示されていて、想楽はしまったと表情を曇らせた。
このところ仕事が忙しくて、書店に来るのはずいぶんと久しぶりのことだった。
買い逃していたシリーズものの新刊や、大学で必要な資料、一希に勧めてもらったちょっとマニアックな文学作品など、あれやこれやと探しながら書店の中を巡っていたらついつい楽しくなって、うっかり時間を忘れてしまっていたらしい。
3043書店で買い物を終えた想楽は、いつの間にか降り出していた雨にため息をついた。
予報ではもう少し遅い時間から降り始めると言っていたのに……とスマホの時計を見てぱちりとまばたきをする。
「うわ、もうこんな時間ー?」
想像していたよりも一時間以上遅い時間が表示されていて、想楽はしまったと表情を曇らせた。
このところ仕事が忙しくて、書店に来るのはずいぶんと久しぶりのことだった。
買い逃していたシリーズものの新刊や、大学で必要な資料、一希に勧めてもらったちょっとマニアックな文学作品など、あれやこれやと探しながら書店の中を巡っていたらついつい楽しくなって、うっかり時間を忘れてしまっていたらしい。
chiocioya18
DONE雨想。はじめての朝チュン。布団の中でごろごろしたままいちゃつく推しカプが見たいの一念で書きました。モバのひとコマで歌詠あってたのが好きで似たようなことをさせてみたかった。
閉じたカーテンの隙間から漏れる白い光で朝を知った。時刻を見るのにスマホに手を伸ばそうとして、やっぱりやめる。今日は完全オフで早く起きる必要はないし、なにより隣で眠る人を起こすのは忍びなかった。
雨彦さんの大きな体に合わせたベッドの中にふたりでぎゅうと収まっている。こちら側を向いて目を閉じている雨彦さんの前髪は無造作に額にかかっていて、昨晩の名残りに記憶がぽつぽつと呼び起こされる。昨夜、僕と雨彦さんは初めて繋がった。終わる頃の意識は曖昧だけれど、雨彦さんに介添されながらなんとかシャワーを浴びた気がするし、嘘みたいに痛い下半身があの記憶は事実だと教えてくれている。決して激しくされたわけではないのだが、それでもこんなに身体に響くのだなあと他人事みたいに考えて、今日が休みでよかったと思った。
1533雨彦さんの大きな体に合わせたベッドの中にふたりでぎゅうと収まっている。こちら側を向いて目を閉じている雨彦さんの前髪は無造作に額にかかっていて、昨晩の名残りに記憶がぽつぽつと呼び起こされる。昨夜、僕と雨彦さんは初めて繋がった。終わる頃の意識は曖昧だけれど、雨彦さんに介添されながらなんとかシャワーを浴びた気がするし、嘘みたいに痛い下半身があの記憶は事実だと教えてくれている。決して激しくされたわけではないのだが、それでもこんなに身体に響くのだなあと他人事みたいに考えて、今日が休みでよかったと思った。
komaki_etc
DOODLE雨想 リクエスト「風呂上がりにキス」ごぼごぼごぼ 湯船に浸かると、あー、と気の抜けた声を出してしまうのは何故だろう。おじさんくさいだろうか。まだ「あ」に濁点が付いていないだけマシではないだろうか。お湯に顔面をつけて、あー、と叫んでみると、ごぼごぼごぼと泡が破裂した。
今日あった出来事を反芻するのに、湯舟は向いている。昼間はインタビューがあった。事前にいくつか質問を予想しておいたのが功を奏し、問題なく答えられはしたけれど、面白みにかけてただろうか。学生業との両立は難しくないですか。学校でも毒舌キャラなんですか。いいんだ、僕は僕らしく答えただけだ。プロデューサーに許可も得ている。
あー。ごぼごぼごぼ。髪がお湯の中で揺蕩う。いつまでもこうしていたい、と水の中で思うことがあるのは、人類が海から生まれたからかもしれない。それこそクリスさんが喜びそうな話題だ。
1942今日あった出来事を反芻するのに、湯舟は向いている。昼間はインタビューがあった。事前にいくつか質問を予想しておいたのが功を奏し、問題なく答えられはしたけれど、面白みにかけてただろうか。学生業との両立は難しくないですか。学校でも毒舌キャラなんですか。いいんだ、僕は僕らしく答えただけだ。プロデューサーに許可も得ている。
あー。ごぼごぼごぼ。髪がお湯の中で揺蕩う。いつまでもこうしていたい、と水の中で思うことがあるのは、人類が海から生まれたからかもしれない。それこそクリスさんが喜びそうな話題だ。
komaki_etc
DOODLE雨想。うたたねといつかの喧嘩エクスクラメーション はっと目を覚ますと、雨彦さんの肩に頭を乗せていた。ぐらぐらする頭を必死に正常に戻しながら、今がいつでここがどこなのかを冷静に思い出そうとした。えーと、たぶんここは、雨彦さんの部屋。
「起きたかい」
「寝ちゃってたんだねー……ふわあ」
あくびをひとつ零しながら、ゆっくりと身体を起こすと、肩から重みがぱさりと落ちた。温もりの塊を手繰り寄せると薄手の毛布で、雨彦さんの鬢付け油の香りがする。わざわざかけてくれたんだろうか。壁の時計はまだ帰宅するには早い数字を指していたから、もう一度毛布にくるまってみる。
「寒いか?」
「ううんー……あったかくて気持ちいい」
雨彦さんの肩は頭を乗せるのにちょうどいい位置にある。そうだ、お互いに台本を読んでたんだった、雨彦さんの手元の紙の束をチラっと見て、たくさんのエクスクラメーション――ビックリマークに驚く。そんなに血気盛んなドラマだったっけ。
1873「起きたかい」
「寝ちゃってたんだねー……ふわあ」
あくびをひとつ零しながら、ゆっくりと身体を起こすと、肩から重みがぱさりと落ちた。温もりの塊を手繰り寄せると薄手の毛布で、雨彦さんの鬢付け油の香りがする。わざわざかけてくれたんだろうか。壁の時計はまだ帰宅するには早い数字を指していたから、もう一度毛布にくるまってみる。
「寒いか?」
「ううんー……あったかくて気持ちいい」
雨彦さんの肩は頭を乗せるのにちょうどいい位置にある。そうだ、お互いに台本を読んでたんだった、雨彦さんの手元の紙の束をチラっと見て、たくさんのエクスクラメーション――ビックリマークに驚く。そんなに血気盛んなドラマだったっけ。
chiocioya18
DONE雨想。両思いを察しつつも言わない二人がふわっともやっとした会話してるだけです。少しだけ背をかがめて事務所のドアをくぐる。いつ来てもこの事務所は綺麗なもんだ、と確かめついでに目を巡らすと、ソファには見慣れたユニットメンバーの青年が先に来ていた。まるい頭をわずかに俯かせ、手元の本に集中しているようだ。
「お疲れさん。早いな北村」
「あ、雨彦さん。お疲れ様ですー」
声をかければ顔を上げてこちらに気づいた素振りを見せる。開かれたページは予想に反して文字よりも挿絵が多そうで、「何の本だい?」と尋ねてみると北村は大きな目をぱちりと瞬かせた。
「丁度よかったー。雨彦さん、マッサージはいかがですー?」
「ん?」
***
誘われるまま位置を取り換えてソファに座らされた。背もたれの後ろに立った北村は俺の両肩に手を添える。背後に立たれるのはあまり落ち着かない、まして相手が北村なら尚更──。わずかな緊張を悟られないように口を開いた。
1607「お疲れさん。早いな北村」
「あ、雨彦さん。お疲れ様ですー」
声をかければ顔を上げてこちらに気づいた素振りを見せる。開かれたページは予想に反して文字よりも挿絵が多そうで、「何の本だい?」と尋ねてみると北村は大きな目をぱちりと瞬かせた。
「丁度よかったー。雨彦さん、マッサージはいかがですー?」
「ん?」
***
誘われるまま位置を取り換えてソファに座らされた。背もたれの後ろに立った北村は俺の両肩に手を添える。背後に立たれるのはあまり落ち着かない、まして相手が北村なら尚更──。わずかな緊張を悟られないように口を開いた。
komaki_etc
DOODLE雨想。深夜のドライブデート。深夜にて 夜中に目が覚めることは、ままある。歳のせいなのか体質なのか睡眠は浅い方で、寝つきも悪い。明日は朝の仕事が入っていないから、今起きても問題はないだろう。重い上体を起こし、首をぽきりと鳴らす。
時間を見るためにスマートフォンを手に取ると、LINKが数件溜まっていた。見てみれば北村からのメッセージで、夜道での白猫の写真と月の写真だけがぽかんと送られていた。うたを詠むでもなく、おやすみの文字もなく、北村らしい。
なんとなく。なんとなくだが、今電話をかけたら、繋がる気がした。北村ならまだ起きてるんじゃないかと。こんな真夜中に申し訳なさもあったが、好奇心が勝ってしまった。指がすいすいと画面をすべる。
陽気な発信音を数度聞いている間は、どうして自分がこんなことをしているのかわからなかった。声を聞かないと眠れない訳でもなし、寝る前の電話が日課でもなし。やはり迷惑だったか、起こしてしまうだろうか、と電話マークを触ろうとした瞬間、耳に届いた聞きなじみのある柔らかな声。
1321時間を見るためにスマートフォンを手に取ると、LINKが数件溜まっていた。見てみれば北村からのメッセージで、夜道での白猫の写真と月の写真だけがぽかんと送られていた。うたを詠むでもなく、おやすみの文字もなく、北村らしい。
なんとなく。なんとなくだが、今電話をかけたら、繋がる気がした。北村ならまだ起きてるんじゃないかと。こんな真夜中に申し訳なさもあったが、好奇心が勝ってしまった。指がすいすいと画面をすべる。
陽気な発信音を数度聞いている間は、どうして自分がこんなことをしているのかわからなかった。声を聞かないと眠れない訳でもなし、寝る前の電話が日課でもなし。やはり迷惑だったか、起こしてしまうだろうか、と電話マークを触ろうとした瞬間、耳に届いた聞きなじみのある柔らかな声。
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DOODLE雨想。春の雨、早朝のドライブ早朝水族館 くしゃみをひとつすると、雨彦さんが「寒いか?」と尋ねた。そりゃあ朝の五時なんて、まだこの季節は肌寒いに決まっている。もう少し厚手の服を着て来ればよかった。
「風邪引かないでくれよ」
「お気遣いどうもー」
こんな時間のドライブは、酷くさみしい。歩道も車道も広々としていて、電柱が所在なさげだ。空が少し灰がかっている。仄明るい街並みはまだ寝息をたてていた。
「雨彦さん、眠くないのー?」
「ああ、しっかり目が冴えてるな。昨夜はよく眠れたようだ」
「それはなによりー。僕はまだ眠いなー」
「寝てていいぜ。着いたら起こすから」
ぐんぐんと進む車の心地に、つい頭がうとうとしてくる。身体に響く静かな振動は、ベッドの中とは違う安心感があった。雨彦さんは運転が上手い方だと思う。気持ち悪い揺れを感じたことはない。
1706「風邪引かないでくれよ」
「お気遣いどうもー」
こんな時間のドライブは、酷くさみしい。歩道も車道も広々としていて、電柱が所在なさげだ。空が少し灰がかっている。仄明るい街並みはまだ寝息をたてていた。
「雨彦さん、眠くないのー?」
「ああ、しっかり目が冴えてるな。昨夜はよく眠れたようだ」
「それはなによりー。僕はまだ眠いなー」
「寝てていいぜ。着いたら起こすから」
ぐんぐんと進む車の心地に、つい頭がうとうとしてくる。身体に響く静かな振動は、ベッドの中とは違う安心感があった。雨彦さんは運転が上手い方だと思う。気持ち悪い揺れを感じたことはない。
ahotamanZ
INFO6/2パバステ現地での雨想新刊サンプルです。全年齢/24P/最近雨彦の部屋に本が増えてきたことを知った想楽が、雨彦の家にいくたびに本を借りて、彼を思う時間を増やすお話です。 10
komaki_etc
DOODLE雨想。情事後の朝逃避行 三月なのに雪が降るとは、これいかに。
朝起きて、妙に外が静かな気がして、スマホで天気予報を開く。午前中いっぱい、雪の予報だった。薄い布一枚着込んだだけの上半身が外気に晒されて寒く、またのそのそと布団の中に戻る。
隣に寝転ぶ大きな図体に額を寄せた。彼は体温が低いけれど、寝ていると流石にあたたかい。腹の方に腕を回してみようか考えているうちに、大きな身体はごそりと寝返りを打ち、こちら側を向いた。見上げると、眠たそうな眼が僕を見つめている。
「おはようございますー」
「随分早起きだな」
「寒くて起きちゃってー。雪らしいですよー」
「ああ、なにか外が眩しいと思った」
この家のカーテンは陽をよく通す。寝つきが悪いのなら遮光カーテンにしたらどうだと言ったことがあるけれど、朝日を浴びたいのだ、明るい部屋の方がいい、と言われてしまっては返す言葉もない。キングサイズのベッドの上で、僕らは甘いまどろみを楽しむ。
2406朝起きて、妙に外が静かな気がして、スマホで天気予報を開く。午前中いっぱい、雪の予報だった。薄い布一枚着込んだだけの上半身が外気に晒されて寒く、またのそのそと布団の中に戻る。
隣に寝転ぶ大きな図体に額を寄せた。彼は体温が低いけれど、寝ていると流石にあたたかい。腹の方に腕を回してみようか考えているうちに、大きな身体はごそりと寝返りを打ち、こちら側を向いた。見上げると、眠たそうな眼が僕を見つめている。
「おはようございますー」
「随分早起きだな」
「寒くて起きちゃってー。雪らしいですよー」
「ああ、なにか外が眩しいと思った」
この家のカーテンは陽をよく通す。寝つきが悪いのなら遮光カーテンにしたらどうだと言ったことがあるけれど、朝日を浴びたいのだ、明るい部屋の方がいい、と言われてしまっては返す言葉もない。キングサイズのベッドの上で、僕らは甘いまどろみを楽しむ。