初心な恋人の慣らし方 ここ最近、桜はずっと落ち着きがなかった。
それもこれも桜と杉下が晴れて恋人同士になってからのことである。
遠目に杉下の姿を見かければその行く先を無意識に目で追っていたり。
そうして杉下と目が合えば瞬時に顔を真っ赤に染め上げて物陰や近くにいる誰かの背に隠れてしまったり。
要は桜は分かりやすく初めての恋に翻弄されていたのである。
桜が恋愛的なことに耐性がないのは周知の事実で、だからそんな風に初々しい様子を見せる桜のことを皆温かく見守っていたし、杉下だってそんな桜に呆れこそすれじっと桜がいつもの調子を取り戻すのを待っていたのだ。
しかし、何事にも限度というものはあるわけで。
楡井は今、泣きだしたいような気持ちでいっぱいになっていた。
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