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    #ブラネロ版お絵描き文字書き一本勝負
    @brnr_60
    お題:「箒」「偶然」

    参加させて頂きます。
    いつも素敵なお題をありがとうございます。


    『間一髪』

    それはほんの、気まぐれだった。

    「ねえ…本当に箒で帰るの?」
    オーエンが怠さを隠そうともせずに眉を歪める。ブラッドリーは自分の箒に跨りながら口角を上げた。
    「いいじゃねえか、たまにはよ。今日は寒くもねえし、絶好の箒旅日和だろ」
    「勝手にやりなよ。ねえ、ミスラもそう思うでしょ」
    「まあ、どうでもいいんですけど」
    ミスラはそう言いながらも、掌に箒を出している。ミスラに扉を繋ぐ気がないなら、オーエンとてどうしようもない。
    「早く来いよ!」
    上から急かす楽しげな声に、何も考えていないようなミスラが先に浮上した。オーエンも仏頂面のまま浮かせた箒に横向きに座って、ふわり、と上空に舞い上がった。


    「おい、山火事か?」
    異変にいち早く気づいたブラッドリーが、怪訝な顔をしてスン、と鼻を鳴らした。焦げたような匂いがするが、いま飛んでいる辺りには見渡す限りの山しかない。そのまま飛ぶと、すぐに山火事の正体が見え始めた。
    「いや、ちげえな…動いて、る…し、誰かいる?」
    遠くの方で赤く燃え盛る小さな山は、うねるように蠢いていた。時折口から火を噴いているようにも見える。そしてそれだけではなく、動く火の山の上で、四つの人影が飛び回っている。そこで初めて、オーエンが興味無さそうに口を開いた。
    「あ、そういえば、今朝ヒースクリフが騎士様に話してたかも。火だるまの怪物を退治しに行くって」
    「へえ、じゃあありゃ東の魔法使いってことか?」
    すごい偶然だ。北の討伐帰りに、東の討伐に遭遇するなんて。

    改めて火の山…もとい、火の怪物とそれを倒そうとする東の魔法使い達の方を見て、ブラッドリーは眉間に皺を寄せた。
    「なんつーか…まどろっこしいな」
    四つの影は、飛び回りながら何度も魔法を放っている。力が弱いから、あの程度の魔物でも四人で協力しなければ倒せないのだろう。
    北の魔法使いたちにしてみればひどくもどかしい戦い方だ。周りに民家もないのだから、思いっきりぶっ放して一撃で倒してしまえばいいのに。そんなことを思いながら東の戦い方を見ていると、オーエンが気味悪く笑った。
    「ふふ…ブラッドリー、ネロが心配なの?」
    「は?なんだそれ」
    「あの頃は楽しそうだったもんね、おまえも…ネロも。またあんな風に暴れたらいいのに。ああ、でも…リケやミチルはどんな顔をするかな?」
    「…くだらねえ」
    「あ」
    ミスラの声が、不穏な空気を破った。ブラッドリーとオーエンは揃って彼を見た。しかし、眠たげな翠眼は明後日の方向を見ている。
    「あれ、いいんですか」
    「あれ?」
    つい、と黒く塗られた爪が、遠くの空を示した。ブラッドリーはその先にあったものに、目を丸くする。
    「は?!」
    「燃えてますよ、ネロの箒」
    「んな、の、見りゃわかんだよ!」
    炎を纏った大きな生き物の遥か上空。小さな人影でも、あの薄青の髪と練習服のシルエットは確かにネロだ。彼が跨っている箒の先は赤く光り、細く黒い煙を上げている。火の粉を食らったのだ。
    「落ちそう」
    オーエンが言う通り、燃える箒は焦りを反映するように危なっかしくふらついている。ネロは魔法で消そうとしているようだが、跨って飛んでいては到底うまくいくはずもない。地面では未だに怪物が火の勢いを失っていないし、時折噴き上がる火柱から逃げているから尚更だ。他の3人も化け物退治で手一杯でまるで助けに行く素振りがない。下手したら気づいてすらいないだろう。
    「ああ、くっそ…!」
    ブラッドリーは箒の先を上げて、ぐりんと向きを変えた。
    ここからで間に合うのか、とか。他の国の討伐任務に手を出すべきじゃないだろう、とか。そんなことは考えていられなかった。
    向かい風の抵抗を最小限にするために身を屈めて、両脚で箒を締める。両手で箒を握り直して、勢いよく飛び出した。

    ブラッドリーが巻き起こした風が、オーエンとミスラの髪を揺らした。
    「…ねえ、これもう箒で帰る必要ないよね?ミスラ、扉出してよ」
    「はあ、面倒ですね」
    「なにそれ、ミスラのくせに」
    「それより、中央の市場に寄ってお茶でもしませんか。奢ります」
    「…ふん、仕方ないな」


    風を切る。冷静な頭で、もしかしたら今までで一番早く飛んでいるかもしれない、と思った。
    ふらつくネロから視線を外さないまま、一直線に飛ぶ。箒の火は勢いを増すばかりで、消える気配がない。

    その時、ぐら、とコントロールを失った箒から、ネロの身体が傾いだ。

    スローモーションのようだった。咄嗟に箒を掴もうとした手は空を切り、黒い練習着を身につけた体が、ゆっくりと火の中に落ちていく。

    「ネ、ロッ!」
    叫びながら、滑り込んだ。
    上空から降ってきた人一人の重みを受け止め、ずん、と箒が沈んだ。腕の中で、ネロの身体はぐったりと脱力している。落下の衝撃で意識を失ったのだろう。
    よかった、間に合った。

    「ブラッドリー!危ない!」
    「うぉっ!?」
    ファウストの叫び声に、急いで飛び出す。咆哮と熱風に強く背中を押されながら大きく旋回する。上空から見下ろすと、炎を纏った怪物は完全にブラッドリーに狙いを定めていた。
    「いいねえ、その目!」
    片腕にネロを抱いたまま、手の中に銃を呼び出す。笑いながら片手で構えた銃口を向けると、怪物も、大きく口を開いていた。
    「“アドノポテンスム”!」
    パァーン…ッ!
    山々の間を、銃声と咆哮が貫いた。



    揺れている。
    ぼんやりとした意識の中で、まず初めに感じたのは、浮遊感だった。俯せて腹を折った状態で何かに乗っている。ぐらぐらと不安定だったが、「ああ、誰かに担がれているんだな」とわかったのは、手首を掴む大きな手と腹の下の温もりのせいだった。
    「…?」
    薄ら目を開く。地面が遠い。間近にある黒いジャンパーがはためいて、裏地の紫が見えた。

    あれ、俺って、どうなったんだっけ。
    東の面子で討伐に来てて、火の怪物が…

    「ーー…とで、仕留め…のに、…」
    思考を遮るように、遠くで、誰かの話し声がした。
    不満げな声は、シノか。続けて、窘めるようなヒースの声も聞こえた。
    「でも、…た、君がー、…だろう」
    これは、先生。
    「おー、まあな。たまたまだ」
    この声だけ、なぜかやたらと近くから聞こえた。というか、腹から響いてくる。聞き覚えのある声だ。いやでも、ブラッドがこんなところにいるはずないか。

    「まったく、ハラハラさせやがって」
    その独り言の近さと優しさに無性に安堵して、ネロはまあいいか、と目を閉じた。
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    CAN’T MAKE悪魔ブvs神父ネ

    微々たる書きかけ
    鬱蒼とした、深い森の奥。
    一人で歩くには些か不安や心細さも芽生える暗い道でも、ネロはランタンを片手に確かな足取りで進む。
    (……いつ来ても、気色悪いな)
    ガァガァと何か分からない鳥が頭上を旋回し、木々が蠢く薄気味悪い森の中は、いつだって見張られているような視線が付き纏う。
    ネロはこの森が好きでは無かった。
    何十、何百回と足を運んでもきっと、それは変わらない。
    (早く終わらせよう)
    小さく身震いして、足を早める。一歩一歩を進めるごとに、足元の枯葉が音を立てた。

    誰もいないのに呻き声のする屋敷。
    毎夜人が変わり残忍になる娘。
    綺麗に血が抜かれ花の手向けられた変死体。
    こういった不可思議な怪奇に苦しめられている人間というのは、存外多い。そうなれば当然、怪奇を相手取る職ーー所謂、悪魔祓いも存在する。何を隠そう、ネロ・ターナーもその一人だった。表向きは神父見習いとして街にある教会に所属しながら、夜な夜な怪奇に赴き悪魔と呼ばれるモノを祓う役目。危険が無いわけではないが、報酬がいいこの仕事を、ネロは気に入っていた。

    しかし、今回ばかりはそうも言っていられない。
    (くそっ、貧乏くじを引かされた)
    1100

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    DONE #ブラネロ版お絵描き文字書き一本勝負
    @brnr_60
    お題:「箒」「偶然」

    参加させて頂きます。
    いつも素敵なお題をありがとうございます。


    『間一髪』
    それはほんの、気まぐれだった。

    「ねえ…本当に箒で帰るの?」
    オーエンが怠さを隠そうともせずに眉を歪める。ブラッドリーは自分の箒に跨りながら口角を上げた。
    「いいじゃねえか、たまにはよ。今日は寒くもねえし、絶好の箒旅日和だろ」
    「勝手にやりなよ。ねえ、ミスラもそう思うでしょ」
    「まあ、どうでもいいんですけど」
    ミスラはそう言いながらも、掌に箒を出している。ミスラに扉を繋ぐ気がないなら、オーエンとてどうしようもない。
    「早く来いよ!」
    上から急かす楽しげな声に、何も考えていないようなミスラが先に浮上した。オーエンも仏頂面のまま浮かせた箒に横向きに座って、ふわり、と上空に舞い上がった。


    「おい、山火事か?」
    異変にいち早く気づいたブラッドリーが、怪訝な顔をしてスン、と鼻を鳴らした。焦げたような匂いがするが、いま飛んでいる辺りには見渡す限りの山しかない。そのまま飛ぶと、すぐに山火事の正体が見え始めた。
    「いや、ちげえな…動いて、る…し、誰かいる?」
    遠くの方で赤く燃え盛る小さな山は、うねるように蠢いていた。時折口から火を噴いているようにも見える。そしてそれだけではなく、動く火の山の上で 2670

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    DONE #ブラネロ版お絵描き文字書き一本勝負
    @brnr_60
    お題:「箒」「偶然」

    参加させて頂きます。
    いつも素敵なお題をありがとうございます。


    『間一髪』
    それはほんの、気まぐれだった。

    「ねえ…本当に箒で帰るの?」
    オーエンが怠さを隠そうともせずに眉を歪める。ブラッドリーは自分の箒に跨りながら口角を上げた。
    「いいじゃねえか、たまにはよ。今日は寒くもねえし、絶好の箒旅日和だろ」
    「勝手にやりなよ。ねえ、ミスラもそう思うでしょ」
    「まあ、どうでもいいんですけど」
    ミスラはそう言いながらも、掌に箒を出している。ミスラに扉を繋ぐ気がないなら、オーエンとてどうしようもない。
    「早く来いよ!」
    上から急かす楽しげな声に、何も考えていないようなミスラが先に浮上した。オーエンも仏頂面のまま浮かせた箒に横向きに座って、ふわり、と上空に舞い上がった。


    「おい、山火事か?」
    異変にいち早く気づいたブラッドリーが、怪訝な顔をしてスン、と鼻を鳴らした。焦げたような匂いがするが、いま飛んでいる辺りには見渡す限りの山しかない。そのまま飛ぶと、すぐに山火事の正体が見え始めた。
    「いや、ちげえな…動いて、る…し、誰かいる?」
    遠くの方で赤く燃え盛る小さな山は、うねるように蠢いていた。時折口から火を噴いているようにも見える。そしてそれだけではなく、動く火の山の上で 2670

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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
    3531

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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
    1852

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