ずるい人 嗚呼、ずるい子どもだなァと、KKはひとりごちた。
子どもとは弟子で助手で相棒な、伊月暁人その人のことだ。短くて長い夜を二心同体で過ごしたふた周りは下の青年は、社会的には成人済みであるがKKからすればいとけない子どもだ。同時にその子どもはKKにとっては唯一で、代えなどない魂の片割れだ。
そう、なのにだ。
今あの子どもはKKを諦めようとしている。勝手にこちらを慮って、気持ちにふたをして距離を置こうとしている。
――ずるいだろう。
と、もう一度KKは思う。
諦められる程度の気持ちでいるのかオマエは。オレはとうにオマエを手放せないというのに? オマエなしに生きていくことなど無理だというのに?
そんなことけして許さない。自分たちは二人で一つで、今更離れていくなんてそんな選択肢あってはならないのだ。
だからKKは暁人の名を呼び、褒める。距離を置かれればその分そっと近づく。気づかれない程度の欲を込めてその身に触れる。
……その度に熱が灯る幼子の瞳に口角をあげた。
諦めろよ、暁人。
優しくしてやろうと思ってた。隣にいるだけでもいいと思ってた。
――だが離れようとするなら話は別だ。
どんな手段を使ったって、あの夜明けの子どもを自分に縛りつけよう。
元よりKKは執念深く、同時に我慢強い男だ。刑事なんて仕事、そうじゃなきゃやってられない。
さあ根比べだ暁人。
少しずつ絡まっていくKKの執着に、逃げようなんていつまで思っていられるのか。
愛と呼ぶにはどす黒くて粘ついたこの想い。同じ気持ちを抱いてほしい。
「堕ちてこいよ」
きれいなだけの想いで逃げてゆくというなら、同じ色に染めてやりゃあいい。
「オレは『ずるい大人』だからな」