【鬼円】花火見に行く話 ぼこっ。頭に受けた衝撃に倒れかけて、あやういところで踏ん張った。ボールを蹴った染岡が心配半分、呆れ半分と言った表情で声をかけてくる。
「おいおい!大丈夫か?」
「あ、平気平気!悪い、ぼーっとしてて」
「しっかりしろよ、集中しねえと怪我するぞ」
染岡の指摘はもっともだ。苦笑いを浮かべて頷き、改めて構え直す。今度はきっちり染岡のシュートを受け止めながら、このままじゃまずいよな、と、ひとりひそかにため息を吐いた。
『好きな人が、同じように自分のことを好きかもしれない、っていうときにも使うかな』
少し前だ。いろいろあって、鬼道の別荘にひとりで遊びに行った日のこと。『脈がある』という言葉の意味を、父ちゃんに尋ねたときの回答が、それからずっと、頭のなかをぐるぐると巡り続けている。
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