「なんかこんなに休むと会社行きたくなくなりそう。」
KKの膝を枕にしつつ暁人がポケットカレンダーを指で辿る。29、30、1…8。
2022年のゴールデンウィークは10連休。大学を卒業した暁人は今年から社会人1年生。初めての長期休暇。
「刑事時代は休みなんてなかったな。」家に帰ることすらままならなかった。ゴーストハンター業に身を置いてからも次々と舞い込む事件に翻弄され、立ち食いそばにすらゆっくりとありつけなかったほどだ。
KKは読んでいた本の隙間からちらと暁人の顔を覗く。
「せっかくなら何処か行こうか、海か、山か、テーマパーク…っていう年でもないか?」
暁人は「それってなんか家族サービスみたい」と揶揄うように笑った。
(なんだよ、かわいい恋人が喜ぶ顔が見たかっただけなんだが)
KKの心のぼやきが聞こえたのか暁人はテーブルの上のスマホを取ると何やら調べている。「でもテーマパークは行ってみたいかな」目当ての記事が見つかったらしい。「これに乗りたい」
暁人から何かをしたい、と提案されることは稀である。KKもここは是非とも叶えてやりたいとスマホの画面に目を落とす。
『4月オープンの最新アトラクション。高さXXXメートルから一気に…』
心の中のクソデカため息を暁人に聞かれないよう万全の注意を払いながら「チケット取っとけよ…」とだけ伝えた。暁人には悪いが、と前置きしつつ、強風で止まることを願う。
「楽しみだな。子供の頃に一度行ったきりだからさ、今度はKKと一緒だし」
そう言いながら体を起こし今度は体ごと大きくKKにもたれ掛かる。
「本当はKKとずっとこうしてるだけでもいいんだけど」
KKはそのまましばらく暁人の身体の重さを堪能すると読みかけの本をテーブルに伏せ、暁人の肩に腕を回す。「…暁人くんは、こうしてるだけでいいのか」そう囁きながらKKが暁人の顎に軽く手を掛け顔を引き寄せる。本当に?と目線だけで問う。
「…だけじゃ…ダメ…かも」暁人が堪らずキスをする。それを合図にKKの指先が暁人のTシャツに滑り込む。蕩けたような暁人の唇から声が漏れると、意地悪くKKの指が止まる。「…かも?」
暁人はKKの首元に顔を埋めると答えた。「…もっと…したい…」
「可愛い恋人の願いは叶えてやらなきゃな。 」