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    LastQed

    @LastQed

    文字を書き散らす、しがない愛マニア。
    【❤︎】
    ディスガイア▶︎フェンヴァル/ヴァルフェン
    コーヒートーク▶︎ガラハイ

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    LastQed

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    ヴァルアルの恋のようなそうでないようなお話。リヒ+ティナ要素もあります。フーデス姉妹も好きだ。恋せよ者ども!

    #ヴァルアル
    varial
    #ディスガイア4
    disgaea4

    乙女はもう恋の行方を知っている【乙女はもう恋の行方を知っている】



    「すき、きらい、すき、きらい」

     少女は熱心に手元を見つめていた。どれだけの時間恋占いに勤しんでいたのか、大量の花びらが彼女の周りを取り囲んでいる。そんな光景に、魔界にも花は咲くのだと当たり前のことを彼女は知った。ユイエの花こそ見当たらなかったが、色鮮やかな花々はアルティナの目を大いに楽しませた。

    「デスコさん、これは?」

     聞き覚えのある澄んだ声にデスコは顔を上げる。良く見知った天使の姿を無数の眼に捉え、少女は無邪気に微笑んだ。

    「おねえさまがデスコをどう思ってるか占ってたデス!」
    「恋占いですね? 素敵ですわ。でもこれは……ちょっとやりすぎじゃなくって?」

     アルティナは苦笑いして足元を見下ろした。柔らかな日差しは積み重なる花々の死骸を照らす。幼さとは時に残酷ですらある。

    「だって……何度やっても『すき』になってくれないんデス……」

     これが地獄から遊びに出かけたきり中々戻ってこない理由かとようやく合点がいく。誰かを想い、しょんぼりと下を向く少女の一途さに天使の頬は緩む。

     デスコがおねえさまと呼んだ人物──風祭フーカがデスコに向き合い、姉妹として愛情をもって接しているのは誰の目にも明らかだった。それでも当の本人は不安なのだろう。人の手によって造られた最終兵器、DESCO。ラスボスのその言いようのないいじらしさにアルティナは胸に手を当てそっと目を閉じる。

    「私も一緒に占ってみようかしら」

     小さな乙女のすぐ隣、クローバーの上にアルティナは何も敷かず座り込む。脚に草花が触れくすぐったい。デスコの気が済むまでそばで見守ることを決心するとアルティナ自身も手慰みに目についた花に手を伸ばす。魔界産の花らしく、蔓が小指に絡みついた。

    「アルティナさんは誰に『すき』になってほしいデスか?」
    「えっ?」

     デスコから思いもよらぬ質問が飛んで来てアルティナの肩は跳ねた。とある吸血鬼が脳裏に浮かび、正直な胸はとくんと鳴る。動揺を誤魔化すよう、花弁を指先で摘み始めるがラスボスは逃げ腰の天使を容赦なく追撃する。

    「やっぱりヴァルっちさんデスか?」
    「い、いえ!? 私は特に誰も……『すき!』」
    「ラブの気配がするデス! デスコも負けていられないのデス!」

     花占いに勝ちも負けもありはしない。それでも競うようにデスコはアネモネのような大輪の花を、アルティナはクレマチスに似た蔓性の植物を手に共に占いをスタートさせた。
     ところが、間も無くして二人の指先は完全に止まってしまった。次は「きらい」。残った花びらは一枚。アルティナはその一枚を残したまま、見て見ぬふりをするように茎ごと土へと放り投げた。そして、再び別の花に手を伸ばす。
     続いてデスコの手元もやはり「きらい」で終わる。たくましい乙女はめげずに次の花を手に取る。そしてまた、すき、きらい、すきと恋の呪文を唱えていく。恋する乙女は強いのだ。けれど、その強さにも限りはある。やはり彼女らは乙女なのだから。





     どれだけの時が経っただろうか。どれだけの花が犠牲になっただろうか。二人の心は既に折れかけていた。二分の一の確率だと言うのにどう足掻いても占いは「すき」を指し示してはくれないのだ。

    「きら…い……」
    「きらい……さ゛ぁぁ……」

     何枚の花びらを散らしたのか、最早覚えてはいない。乙女たちは呆然とする他なかった。何度試しても導かれるのは「きらい」。きらい、きらい、の連続。ここまできらいが続けばきっと次に来るのは「すき」のはずだ、そうに違いない。そうしてまた、花を摘み取る。ギャンブラーの誤謬である。ここまで「きらい」を突き付けられてはもう「すき」で埋め合わせるまで後にはひけない、そんな緊張感がいよいよ二人を追い詰める。

    「……何をこんなにムキになってるのでしょうね」

     子どもの遊びだとしてもこうも巡り合わせが悪いと人は不安になるものだ。アルティナは四百年前を振り返り、姿形の変わってしまったとある悪魔を想う。「きらい」も甘んじて受け入れなければならないのだろう。それを突き付けられたようで、彼女は細い指先に力を込める。

    「遅い」

     伸びやかな花々と穏やかな日差し。その景色に不釣り合いな重たい沈黙を破ったのは、苛々とした声だった。
     ヴァルバトーゼの命でデスコとアルティナを連れ戻しにきたフェンリッヒは次に発する言葉を探す。沈痛な二人の表情に、珍しく気まずそうな顔をしてみせた。

    「どんな遊びだこれは……葬式ごっこか?」
    「違います! 恋占いです(デス)!」
    「……アホ臭い。いい加減戻って来い。特にお前だ、ゾンビ取りがドンビになってどうする」
    「そんな言い方しなくたって良いじゃありませんか!」

     ムキになって声を上げたアルティナに狼男は意表をつかれる。驚いて見た彼女の目は心なしか潤んでいる。その隣、デスコに至っては完全に泣きべそをかいており、フェンリッヒは頭を掻いた。

    「ハァ……」

     大袈裟にため息をつくとフェンリッヒは自身の不機嫌を顔に出す。けれど彼が口にしたのは罵詈雑言などではなかったのだ。

    「一度しか言わないから良く聞け。気の毒なノータリンに教えてやろう」
    「ひっぐ……何を教えてくれるデスか?」

     狼男は薄ら笑う。

    「占いの必勝法だ」





     世の中は法則で出来ている。それは自然の中ですら適用されるのだと狼男は語った。例えばそれは花にも言えることで。花弁の枚数は変異等一部の例外を除き、二つの数列によってあらかじめ定められている。「すき」で始める恋占いにおいて偶数の花弁を持つ花を選べば必然的に「きらい」で終わる。奇数の花弁を持つ花ならば勿論「すき」で終わることが出来る。

    「お前たちはよりにもよって偶数枚の花を選び続けたんだろう。よほど想い人とは縁がないんだろうさ」

     嫌味を放ち、意地悪く笑うフェンリッヒ。しかし悪意に気付かぬデスコは目を輝かせ、逆に彼をたじろがせた。

    「フェンリッちさんは物知りデス! なんでそんなこと知ってるんデスか?」
    「……とにかく、ヴァル様が地獄でお待ちだ。とっととしろ」

     フェンリッヒは何かを誤魔化すようにふいと顔を背ける。目の先に生えていたマーガレットを乱暴にちぎると、アルティナとデスコそれぞれに押し付けた。白い真珠のような美しさは意外にも、悪魔の手元に映えて見えた。その悪魔はアルティナが礼を言うよりも先に噛み付くように放つ。

    「いいか、間違ってもヴァル様を想って占いなどするなよ?」

     いつものようにしっかり牽制を入れるフェンリッヒに何故か安堵して、天使は笑った。それに対して狼男はやはり気に食わないと言わんばかりの顔を見せたがそれでも二人が占いを終えるまで一人で帰ってしまうことはなかった。

    「すき、」

     とくん、胸が鳴る。また「きらい」を目の当たりにするのではないか。そんな不安は花びらがまた一枚と減るごとに増していった。
     けれど花びらが残り三枚だけになって、ようやくアルティナは恋の行方を悟る。少し離れた場所にいるフェンリッヒは気怠そうに欠伸をするだけでこちらを見向きもしない。彼はこの花の導く結末を知っていて、寄越したのだろう。それは地獄で帰りを待つ主を待たせないためかもしれない。それでも、構わなかった。悪魔の中の小さな優しさを天使は想う。

     有難うございます、優しい狼男さん。でも、口に出すと怒るだろうから。

     アルティナは心に宿るぽかぽかと温かな気持ちを祈りに変える。祈りは風に乗り、またこの地に花々を芽吹かせるだろう。
     そよ風がフェンリッヒの銀の髪を揺らす。風の吹く方へと振り返れば、ぱちり天使と目が合った。狼男は心底嫌そうな表情を彼女へと作ってみせた。

    「いちいち気色の悪い視線を寄越すな」
    「『すき』! すきデス! おねえさま!」

     その時、デスコが大きな喜びの声をあげる。はしゃいで飛び跳ねる年相応の無邪気さに悪魔は呆れ、天使は微笑んだ。

    「ウフフ。それじゃあ、伝えに行きましょうか。いっぱいの、好きの気持ちを」

     乙女に混じり居心地の悪そうな狼男がまたひとつ、大きくため息をついた。
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    LastQed

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
    1434

    LastQed

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
    1853

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    LastQed

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    LastQed

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    LastQed

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    LastQed

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025