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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ヴァルバトーゼ閣下のお誕生日の妄想。

    #ディスガイア4
    disgaea4

    【イワシ一匹に含まれる愛は】 窓の外、ゾンビの咆哮が一日の終わりを告げている。唸るような地響きが聞こえて来たのはそれとほぼ同時だった。

    「ん?」

     異音に気づいた部屋の主は手を止め、書類の山積みになった執務机からようやく顔を上げる。耳を澄ますとその地響きは振動を伴い徐々に大きくなっていき、あろうことか彼の在籍する執務室の前でぴたり鳴り止んだ。
     敵襲という文字が一瞬ヴァルバトーゼの脳裏によぎったが、すぐにその可能性を切り捨てる。もしそうであれば時空ゲートを突破された時点でメーヴェルが緊急に連絡を寄越しているだろう。それに、並大抵のことであればフェンリッヒが報告も無しに事を片付けているはず。この騒ぎを彼があえて放置しているということは。……しているということは?
     思案し首を傾げ、立ち上がるとヴァルバトーゼは部屋の扉に手を掛ける。板一枚隔てた向こう側に異様な気配を感じながら慎重に戸を開くと、そこには良く良く見知った者たちの浮き足だった姿があった。

    「ヴァルバトーゼ閣下〜! お誕生日おめでとうございますッス!」

     勢いよくクラッカーの破裂音が響き、続いて火薬の香りが鼻をくすぐった。驚いて目を見開けば見渡す限り、プリニー、プリニー、プリニー。見慣れた魔物たちが各々、イワシを掲げて詰め掛け「おめでとうございますッス!」だの「オレたち、給料持ち寄ってプレゼント買ったッス!」だの、矢継ぎ早に言葉の嵐を浴びせていく。

    「馬鹿者、今クラッカーを鳴らした奴は誰だ!? 引火しても知らぬぞ、まったく……」

     感謝の言葉と共にヴァルバトーゼの腕の中に次々と放り込まれていくイワシ。言うなれば追い剥ぎの逆の状況である。混沌とした事態に「教育方針を間違えただろうか?」と吸血鬼は困り顔で呟くがプリニーの誰ひとり、そのことに気が付かない。

    「良いか、お前たち。良く聞け」

     プリニー教育係はその通る声で等身の低い魔物たちに語り掛ける。無数の視線が彼の真面目な表情に向けられた。

    「お前たちのその忠義は素晴らしいものだ。出荷先の主に仕える際にも大いに役立つだろう。だが」

     ヴァルバトーゼの強い語調にその場にいる全ての者が背筋を伸ばした。

    「今のお前たちに必要なことはなんだ? ──そう、俺の教育を受け、正しく罪を償うことだ。そしていずれは赤い月の下、転生を果たす。……そのためにも必死に働いてHLを稼ぐ必要があると再三教えているな? 無駄遣いをするようならまた厳しい指導を施してやらねばならん」

     魔界、その中でも最下層に位置する地獄。堕ちた人間の魂へ教育を施し、出荷する場所。間違っても此処は馴れ合う場所ではない。もちろん、彼等の気持ちを無碍にするわけではない。ただ、重労働で得た僅かな対価は己がために使うべきだとヴァルバトーゼは信じている。それこそが、この教育者にとって一番の望みであった。
     ヴァルバトーゼの言葉にプリニーたちは一匹、また一匹と頭を下げ、踵を返して行った。そして廊下の前から誰もいなくなったところで彼の元には天啓かのよう、空から声が降ってくる。

    「こんばんは、吸血鬼さん」

     一人の天使がふわり身を翻し、高いヒールの靴で見事に着地する。魔界に似つかわしくない白い羽が一枚、宙に舞った。

    「アルティナ。いたのか」
    「いくらプリニーさんたちの為を思ってとはいえ、そんな厳しい言い方をなさらなくても良いんじゃありませんの?」

     だって、本当は嬉しいんでしょう? と少し上がった口角を指摘するとヴァルバトーゼは口元を押さえすぐに表情を硬くした。

    「プリニーならプリニーらしく、自分のことだけ、HLを稼ぐことだけを考えていれば良いのだ。俺に貢ぎ物などしている場合ではない」
    「あら、素直じゃありませんわね。あんまり一緒にいるものだから狼男さんのツンデレが移ったのかしら?」
    「それこそ誰かさんの金へのがめつさを見習わせたいくらいだ」

     ブルカノを名乗り魔界中の悪魔たちからHLを巻き上げていたことを指し、吸血鬼は愉快そうに笑う。プリニーたちから贈られた安物の、しかし鮮度の良いイワシを一尾掴んで頬張ると、いつもよりもゆっくりと咀嚼して飲み込んだ。

    「あ、あれは正当な徴収だったと何度も言っているでしょう!」
    「ククク、そうだったな。正当な徴収の果てに……はて、お前の上司の趣味でなんというロボを作ったのだったか?」
    「もう、吸血鬼さんってば……!」
    「冗談だ」

     アルティナが頬を膨らませ拗ねれば、堪えきれず二人は声を出して笑い合った。





    「いい加減にしろ、ドロボウ天使……」

     一方その頃。執務室近くの物陰に隠れ、一部始終を眺めていた狼男は苛立ちを隠せないでいた。この調子では、どれだけ時間を与えても足りやしないと頭を掻く。
     フェンリッヒだけに見えている、天使が後ろ手に隠すリボン掛けの小箱。それが素直に差し出されるまで、まだ当分かかりそうだ。
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007