※11/14手のひらでコロコロされている「さっき、随分と楽しそうだったね」
バベルからの帰り道。今日はゆっくり歩きたいというメフィスト様の少し後ろを歩いていたら、突然そう言われた。
びっくりして顔を上げると、メフィスト様は立ち止まって私を見下ろしている。夜道でちょうど逆光になっているから、どんな顔かはわからない。
「さっき、ですか?」
「うん。その、バチコちゃんとアムリリス様と」
「ああ、女子会ですね」
そう、メフィスト様が報告に上がっている間、私は食堂でバチコちゃんとお菓子のオススメ会を開催していた。そこに通りすがりのアムリリス様がいらして、お菓子を恵んでくださったので女子会になったのである(たまにオペラさんも混ざる。今日はいなかった)。
「……迎えに行ったら、すごい楽しそうだったよ」
「……聞きたいですか」
「え」
「なにを話していたのか、聞きたいですか?」
「うん」
正直ものすごく言いづらい。バチコちゃんには怒られるかもしれないし、アムリリス様は特に隠していないから、まあいいか。
「推しメンの演説会してました」
「え。え? なに、それ?」
「各自の推しがいかに素晴らしいかの演説をしてました。というか、ほぼ身内の自慢話なんですけど。アムリリス様は御子息のアリス様がいかに可愛らしいか、バチコちゃんは弟子のイルマくんがいかに立派な弓使いになったか」
「君は?」
「言わなきゃダメですか」
本人に言うのは恥ずかしすぎるのだけど。ていうかこのヒトわかってて言ってるでしょ。
「うん。ダメ。どうすんの、俺じゃなかったら」
「メフィスト様じゃないことは絶対にないのでどうもしないですよう」
「俺の話してたの?」
「はい。それはもう、いかにかっこいい悪魔かわたくしの持てる語彙の全てで熱弁を振るわせていただきました」
「そっか」
メフィスト様は満足そうにくすくす笑って、また歩き出した。なんの羞恥プレイなの、これ。
「詳しくは帰ってから教えてね♡」
「え」
嘘でしょ。今ので話終わったんじゃないの。
メフィスト様はもう一度振り返って私の手に指を絡めて歩き出した。
「お仕事おしまい。さ、帰ろう」
ずるい。本当にずるいヒトだ。私は今日もメフィスト様の手のひらでコロッコロに転がされている。