2/25寂しさを埋める 今夜はメフィスト様がいない。13冠の集いのためにバベルに行っている。
ついていかなかったのは、他にも仕事が溜まっていたからだけど、こんなに遅くなるなら無理にでもついて行けば良かった。
夜ごはんを終えて、片付けも済ませた。それから30分おきに玄関へ行き、日付が変わる頃には諦めて玄関に座り込んでいる。
……この屋敷に一人でいることはあっても、こんな遅い時間まで一人きりなのは初めてだ。
寂しいし、不安がつのる。もちろんメフィスト様が帰ってこないとは思わないけど、事故とかトラブルとか、そういうことを考え出したらキリがない。
――外から、羽の音がした。急いでドアを開けるとメフィスト様がちょうど着地したところで。
「おかえりなさいませ!!」
「ただいま」
メフィスト様が柔らかく笑う。
良かった。つい露骨に顔に出してしまう。
「ごめんね、遅くなって」
玄関でコート受け取ると、メフィスト様が私の顔を覗き込む。
「いえ、いえ。とんでもない。お疲れ様でございます」
「寂しかった?」
そう笑顔で聞かれて、いつもならごまかすけど、寂しかった。だから素直に頷く。
「寂しかったです」
「珍しい。本当に寂しくさせてたね。お風呂は?」
「温まってますよ。私はまだです」
「今日は一緒に入ってくれる日?」
どうしようか。基本的に風呂は一緒に入らないと決めている。メフィスト様のテンションが上がって、収まりがつかないから。
――けど、寂しかったし。
じゃあ、仕方ないと自分に言い訳をする。
「入ってくれる日、です」
「やった」
メフィスト様は嬉しそうに私の手を引く。その手は冷たくて、ちょっと泣けてきた。
「いやー、本当に大変だったんだよ。ベルゼビュート様とバールが揉めるし、ナルニアくんも喧嘩腰だし」
「それはそれは」
脱衣所で服を脱ぐ前に、メフィスト様にキスをされる。それもすごく冷たかった。
「メフィスト様。寂しかったから、温めてあげます」
「頑張ってきた甲斐があった」
たぶんすぐには寝かせてもらえないけど、この方が満足するなら、それでいい。