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    liku_nanami

    @liku_nanami

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    liku_nanami

    DONE羽鳥さんが少女漫画で人気のシチュエーションを回収していくお話、5の後半。
    『バッドエンドは投げ捨てた5-2』【気持ちがすれ違ってもヒロインのピンチには活躍②】




     無感情にドラッグを見つめ続ける羽鳥さんに、本性をあらわしたのだと分かる嫌味さを顔に滲ませて、工場長が近づいてくる。

    「ご興味がおありですか?」
    「興味は、まぁ、そうですね」

     羽鳥さんが素通りしなかったのは、あえてだと思って間違いない。私が一瞬迷った間に、羽鳥さんは相手に打たれた先手に乗ったのだ。

    「ああ、やはりですか。視察とはいえお忙しい大谷社長直々のお出ましでしょう? いくらシステム開発のためと言っても、何か目的がありそうだとは社長とも話していたんですよ。だって工場に来るカムフラージュの理由を作るために、わざわざ女性まで連れて。ねえ」
    「……」

     マトリである私のことも含めて罠を仕掛けられたのかと身構えたけれど、どうやらそういうことじゃないらしい。なら、これは危険ドラッグ取り扱いの経緯を知る好機だ。捜査権も逮捕権もない相手だと思っているからこそ、工場長も裏を見せることをしている。どんなに向こうが言い逃れするための口に自信があっても、姿も見せずに逃げ回る違法薬物取引の容疑者に比べれば、情報を聞き出すためのとっかかりは掴みやすい。
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