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    absdrac1

    @absdrac1

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    absdrac1

    MEMO青幻+一幻+天谷奴の、天谷奴と夢野、天谷奴と青年の部分
    天谷奴の回想。中途半端な処で区切りますが、この後も回想シーンが続きます。
    何となく納得していない部分があり、本文にする時には書き直すかも。
    プロットを書くためのメモ的なお試し作文です。
    故郷(ふるさと) 天谷奴は北の国の生まれである。寒くて寂しい漁村であった。中学時代までを何もないその土地で過ごし、その後は家出も同然に上京した。実家の方も勘当した積りであったのだろう。爾今連絡を取ってはいない。
     それでも、あの故郷は天谷奴の原風景であった。平素は記憶の深奥に眠っており、ふとした拍子に突如思考の表面に現れる、色彩の薄いぼやけた像であった。港の風景、人の少ない寂れた商店街、古びた家の質素な食卓、……。それらは画廊に掛けられた絵画のようである。既に現実から切り離されてしまった、物語の挿絵であった。視覚に比べ、その他の感覚の方がやや鮮明である。漁船のエンジン音、頬に当たる冷え冷えとした空気、風が運ぶ潮の匂い、打ち寄せる波の音、そう云ったものたちが、物悲しい肌触りとなって心に迫ってくる。幼少の記憶など意識しては思い出せぬものであるのに、それらは繋がりのない断片となって天谷奴の中に生き続けている。厄介なものだと思う。郷愁と云う迄の感情は持たない。只、確かに天谷奴の行動に影響を与える、生きた何かであった。
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    absdrac1

    MEMO青幻+一幻+天谷奴
    天谷奴と夢野の関係について勘ぐる一郎。
    中途半端な処で終わっていますが、現時点のプロットとしては、この後天谷奴の回想が入る予定です。
    プロットを書くためのメモ的なお試し作文です。
    不眠 夢野の容態は回復しつつあった。早朝夢野の様子を見に行った時には、昨夜からの熱が大分下がっていた。昨晩は五分粥を少ししか口にしなかったが、今朝は全粥を半分ほど食べている。
     兄弟三人が朝食を食べ終えた頃、天谷奴がやって来た。夢野が寝込んでいることを伝えると、男は女の部屋へと向かった。
     天谷奴の大柄な後ろ姿を見ながら、一郎は僅かに心配になった。病床の夢野と二人だけにして問題ないのか。これまでの一郎であったら微塵も湧かない疑問である。杞憂だとは分かっている。夢野との付き合いは天谷奴の方が長い。夢野としても、信頼を置いているのは一郎よりも天谷奴の方であろう。
     然し、夢野と天谷奴の関係に就いて、一郎は不思議に思うことがある。作家とその担当編集者と云う仕事上の繋がりを超えた、何かがあるような気がしてならない。だが、一体何が考えられるのだろう。彼らは只の少々親しい仕事仲間であろう。親しいとは云っても、単に仲がよい間柄とは異なる。上辺には現れない処で、別の結び付きを引き摺って動いているように思える。
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    absdrac1

    MEMO青幻+一幻+天谷奴
    天谷奴に唆される一郎。プロットを書くためのメモ的なお試し作文です。
    夫婦の構造 ダンボール箱を置き、汗を拭く。それから次に運ぶべきダンボールに手を掛ける。今日一日、一郎はこの単調な作業を続けている。
     梅雨の晴れ間に外仕事を依頼された。イベントの搬入の手伝いである。日射しが出ていて蒸し暑い。荷物は然程重くないが、汗だけは大量に吹き出してくる。それでも体を動かすことに集中すれば、彼女の姿を瞼の裏に浮かばせることはない。だが、単調であることが拙かった。
     ――残酷な夫婦だよなあ、あいつらは……。
     一郎は、昨日天谷奴から言われた言葉をふと思い出す。
     いや、駄目だ。彼女に関することを考えているじゃないか――。夢中で仕事をしていている合間に、彼女のことを忘れていると確認することは、彼女に就いて思考することに他ならない。どうしたら無心になれるのだろうか。忘れろと思う度に、却って余計に彼女を想う。日中に交わすさり気のない言葉があった。些細な日常のやり取りがあった。そのような中で、ふとした拍子に身体の一部が触れ合うこともあった。様々の時に感ずる相手の体温、匂い、反応、仕草、表情、……、それらの細部までを思い起こしてしまう。ああ、駄目だ、駄目だ――。仕事に集中しろ、無心になれと、自分に言い聞かせる。
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    absdrac1

    MOURNING単に文章が書きたいだけの理由で書いた、目的も主題もなく下らない落書き。
    明確なアウトプットがないと気が済まないので此処で供養します。人が読むような内容ではありません。件のカードの出現が契機になっていますが、一体誰が認めるのやら。
    虹を待つ暇持て余して結露拭く指折り数えた雨の幻想
    大体こう云う話です。
    不遣の雨 窓の結露を指で拭って外を眺める。待ち人は未だ来ない。
     ――こうして待っていても、仕方がないのでしょうか。
     濡れた指先をまだ温かさの残っている手拭きで包んだ。先頃から降り続く晩秋の雨は、徐々に冬を運んでくる。私の居るこの喫茶店の外は、冷たい水の膜で覆われた別の惑星のようだった。
     ――止まないものでしょうか。雨が止まなければ、彼が来られない。
     気分が塞ぎ、それを紛らわそうと短い溜息をわざと吐く。そうして机の上に頬杖を突き、読みかけの本を繙いた。その内容は一人の作家が喫茶店で人を待っているというものであり、現在の私の状況と全く同じであった。
     読み進めるうちに、物語の作家の待ち人が既に亡くなっていることに気付く。この作家は、雨が止んだ後に雲間から青空が見えるのを、即ち、親友の去っていった空が見えるのを待っていたのである。作家の親友が死亡していることは明記されず、喫茶店内での何気ない出来事と、それを見ていた作家の思索が、親友との思い出を絡めて綴られている。
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    absdrac1

    CAN’T MAKEarb前回イベストの天(零)幻。
    あの後こうなって欲しいという願望の儘に書いたが、然程展開しなかった。
    あと、天谷奴のオジサマは庶民派なので、レストランやバーよりも居酒屋に行くのだろうな。
    酒とビジネスと極上の謎と「お酒は殆ど飲まないのですよ」
     既に此の世に酔っております故、と、夢野は彼の瞳によく似た色のカクテルを通して天谷奴を見た。ジャズピアノの音色が静かに響いている。この小説家の舌は鍵盤上のピアニストの指宛らに華麗に動く。
     今日は本当に楽しかったですね。次回作のプロットも思い付きそうですし、貴方のような方にもお会い出来ましたから。そう言って、グラスを傾けてミント・ジュレップを一口飲んだ。
    「おいおい、まだ今日は終わっちゃいないぜ」
     透き通るエメラルド色の酒が小説家の唇を濡らすのを視界の端に収めながら、天谷奴も自分のウィスキーに口を付ける。
     件の催し物の後、ふたりは食事を共にした。天谷奴が仕事で東都に来た時によく立ち寄る高級レストランに入ったが、夢野にとっては偉い作家の伴をする時のみに来る場所であった。「このような場には余り慣れておりませんので」などと断りながらも、食事を口に運ぶ所作は優雅なもので、天谷奴の伴としても申し分ない。
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    absdrac1

    MEMO雪国の青幻です。
    自分なりの幾つかの課題を盛り込んだ習作なので、出来はいつも以上に悪くなっています。
    大体こういったものを書きたいという、メモ程度のものです。
    それでも宜しければどうぞ。
    雪国(仮)『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』
     有名な小説の冒頭を少しだけ読み、作家は本を置いた。彼は今、その小説の主人公と同様に、と或る県境まで来ていた。黒煙を吐き出す汽車の窓からは、燃えるように真赤な紅葉が夕陽に照らされて、漆黒の影を纏い始めているのが見えた。この車両には作家の他に乗客は居なかった。隣の車両からは賑やかな子供の声が聞こえていたが、はしゃいで眠ってしまったのか、何時の間にか聞こえなくなっていた。作家は手帳を開き、万年筆を手に取った。
     俄に暗くなった。汽車が隧道の中へと入ったのだ。作家は耳の詰まったような感覚を受け、唾液を飲み込む。隧道の灯りが周囲を橙色の世界へ変えていた。一定間隔で設置されている灯を通り過ぎる度に、物の影の濃淡が交互に入れ替わっていった。橙に染まった手帳には文字が綴られていく。果てしなく続くとも思われるこの暗闇を抜ければ、其処には見知らぬ街が在る筈だった。
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