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    雨クリワンドロ4/9お題:折り紙
    いつも通りな感じの雨クリ

    #雨クリ
    raincoatClipper

     人の少ない昼下がりの事務所。クリスは雨彦が暇つぶしにと折り紙を折る様子を眺めていた。
    「お前さん、見ていて退屈じゃないのかい?」
    「そんなことはありません!こうして眺めているだけでも楽しいですよ」
     テーブルの上には、既に完成したものがいくつか並んでいる。クリスが見ているからか、作られるのは海の生き物ばかりだ。
     クリスがいくつかリクエストをしてみると、雨彦は小さく笑ってそれに応えてくれる。折り紙が特技なのだという雨彦の表情は、穏やかで楽しそうだ。その表情をクリスが時折盗み見ていることに、雨彦は気づいているだろうか。
    「古論のおかげで、随分と海の生き物のレパートリーが増えちまったな」
     目線で手を出すように促され、テーブルの上で両手を広げる。ぽとりと手の中に落とされた小さな生き物の姿に、クリスは思わず雨彦を見上げた。
    「これはもしやシュモクザメですか?」
    「ああ、この間解説してくれただろう?」
    「覚えていてくださったのですね……」
     先日話の流れで説明したものを、雨彦は覚えていたらしい。クリスの話に耳を傾け覚えていてくれたことが、それをこうして形にしてくれたことが、嬉しいと感じる。
    「それだけ喜んでもらえるなら、作った甲斐があるな」
    「ありがとうございます。雨彦はやはり器用ですね」
     雨彦の大きな手が小さな紙を繊細に操って、一つの形を生み出す様子は、まるで魔法のようにも思えた。
    「次は何を作るのですか?」
    「それはできてからのお楽しみだな」
     新たな紙を用意した雨彦は、それを一度、二度と折りたたんでいく。ならば完成する前に言い当てたいと、クリスはその手元をじっと眺めた。
     男らしく、それでいて白い指が流れるように紙をなぞっていく。その様子に自然と意識が吸い寄せられる。
     その指先の感触を、クリスは知っている。
    「古論?」
    「あ、いえ、何でもありません」
     雨彦が呼ぶ声にクリスははっとした。雨彦に触れられる感覚を思い出してしまった、などとは恥ずかしくて言えるわけもない。
     雨彦は特に気にする様子もなく、再び紙を折り始める。気を取り直してそれに意識を向けても、少しだけ早まった鼓動は鎮まってくれない。
     雨彦の指先の動きばかり、つい目で追ってしまう。一度思い出した光景は、なかなか頭から離れてくれなかった。
     それどころか、また自分にも触れてほしい、なんて。自分のスイッチもどこにあるかわかったものではないなと、クリスは内心苦笑する。
    「雨彦、この後の収録が終わったら、食事でもいかがですか?」
     切り出したそれは、二人だけの誘い文句だ。その意味を正確に汲み取った雨彦は少し驚いたような顔をした。
    「構わないが、急にどうしたんだい?」
    「今日はそういう気分なんです」
     クリスの返事では納得しなかったようで、雨彦は不思議そうな顔でクリスを見てくる。
     それでも、その指を独り占めしたいと思ってしまったことは、雨彦には内緒にすることにした。
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