Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nanana

    @na_7nana

    @na_7nana

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 70

    nanana

    ☆quiet follow

    付き合ってない雷コウ。愛も執着も受け取れない大人と聞き分けなんてよくなりたくない子供。

    #雷コウ
    ##ハンセム

    生温い熱は気持ちが悪い(雷コウ) こういうのは困ると伏し目がちに小さく発せられたその声は、手酷く抱いたどの夜の後よりも弱弱しかった。
     風呂上がりの濡れ髪と温まって血色のよくなった真っ白な肌、羽織られたバスローブの胸元の襟を両手で掴んで胸元を開いて見せるそこには多数の鬱血痕が散らばる。
     散々鳴かせて焦らしてわけがわからなくなっているのをいいことに、胸元に普段は男から拒絶されているキスマークを付けた。一つ付けたらどうにも止まらなくて、二つ、三つ、片手じゃ足らない回数男の薄い肌を吸い上げて、見下ろして胸に広がったのは確かに満足感。それが何を意味するかなんてとっくに自分でもわかっていた。
     責めるように見せつけてくる白く湿った平たい胸に広がる赤い花弁がいやに扇情的で困る。体温が僅かに上がるような感覚に蓋をする、もうこの目の前の細っこい男の体力はゼロに近い。
    「こういうのって何?」
     わかっているくせに尋ねた。案の定そんなことは男にもお見通しで、言わなくてもわかるだろうという恨みがましい視線を送られたけれど全部無視をする。そもそも怒られるようなことをしたとも思っていないのだ。
    「この、キスマーク、のことだが」
     キスマーク、という部分だけやけに小さかった。本当に今日はわけがわからなくなっていたらしい。ふらふらとシャワーを浴びに行き、鏡を見たところで自分の胸元の異変に気が付いたのだろう。それで今、この男は青くなっているわけだ。
    「で、そのキスマークとやらの何が困んだよ」
    「困るだろう」
    「だから何が」
    「人に見られたら」
    「服着てりゃあ見えねぇとこばっかだわ。それともなんか?カミサマはどこか人前でお脱ぎになられる予定でも?」
    「そんなのはない!」
    「じゃあいいじゃねぇか」
    「よくない」
     押し問答に水掛け論。割れ鍋に綴じ蓋、は違うな。そんなことを思いながらどこか冷めた目で目の前で喚いている男を見る。そんなちゃちな所有欲の証なんかよりももっと気にすることがあるだろう。
     ひねれば簡単に折れてしまいそうな手首の少し下。ネクタイで縛った拘束の跡が生々しくそこに赤い蛇のように絡みつく。
    「アンタは、」
     自分で思っていたよりも低い声が出た。ひくり、と喉が蠢いて喚いていた男が静かになったのは何か良くないことを言われる予感がしたのだろうか。和食君、と静止をかけるように名前を呼ばれたのに被せるようにして言葉を発した。
    「キスマークキスマークうるせぇけど、じゃあそれはいいのかよ」
     近づいて拘束の痕が残る腕を掴んで捻り上げた。痛いだろうに小さく悲鳴を飲み込んだだけで何も言わない男のオッドアイがこちらを睨み上げる。
    「和食君」
     静かな声でたしなめられて手を離した。目線を合わせないまま捻られた手首をいたわるようにもう一方の手がさする。行為に対しての非難の声はなかった。
     どうしてキスマークを残しただけできゃんきゃん怒るというのに、何度拘束して手酷く抱いて傷跡を残しことに対しては何も言わないのか。
     どうしてキスマークを付けようとしただけで全力で拒否をするというのに、乱暴に扱うことには拒絶を示さないのだろうか。
     そんなもの考えるまでもない。そういう関係だからだ。そういう関係なのだ、それ以上も以下も存在しないそういう関係なのだ。進むことも戻ることも許してもらえないそういう関係。その歪な円から抜け出すことをこの男は許しはしない。
    「……やっぱ、アンタのこと嫌いだわ」
     嫌いだと言われて安心したように息を吐く男の事なんて、俺は本当に嫌いなのだ。嚙み締めた唇から血が滲んで、鉄錆の味がした。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    nanana

    DONE付き合ってない雷コウ。
    次に会った時には、プレゼントされたのだというもっとよく似合うグレーがかった青のマフラーが巻かれていてどうしてか腹立たしかった。
    吐き出した冬を噛む(雷コウ) 以上で終了だ、と男が持っていた資料を机でトントンとまとめながら告げた時、窓の外には白い雪がちらついていた。数年に一度と言われる寒波は、地元である高知にも、今現在訪れている福岡にも珍しく雪をもたらしている。それがどこか新鮮で少しだけ窓の外をぼんやりと眺める。男もつられたように同じように視線を向けた。
    「雪か、どうりで寒いわけだな」
     二人きりの福岡支部の会議室。ちょうど職員の帰り時間なのだろう、廊下の方からも賑やかな声がする。
    「こんな日にわざわざ福岡まで来てくれた礼だ。もつ鍋でもご馳走しよう」
     こんな日に、というのはダブルミーニングだ。一つはこんな大寒波の訪れる日に、という意味で、もう一つはクリスマスイブにという意味だ。雷我がこの日を選んだことに深い意味はない。たまたま都合のよかった日にちを指定したらそれがクリスマスイブだっただけの話だ。夜鳴のメンバーと予定したパーティの日付は明日だったからクリスマスにはイブという文化があるのを忘れていたせいかもしれない。
    2302

    recommended works