ディーノ君と約束の花冠(竜父子) 砦を包み込んでいる最後の戦いに挑む戦士たちの興奮と勝利への意気込みの混じった空気が、砦の最奥に位置するディーノの部屋にも届いてくる。
ディーノは身を起こすと、そっと寝台から抜け出して窓辺へと寄った。目を閉じて耳を澄ます。父であるバランか、もしくは誰か知った者の声が聞こえないかと思ってのことだったが、流石に声までは届かなかった。
「何をしている、ディーノ」
不意に声をかけられて、ディーノの両肩がびくりと跳ね上がる。背後の扉が開いて父が部屋へと入ってきた。
声を探ることに夢中になりすぎて、肝心の父の気配に気づかなかったらしい。己の粗忽具合に、思わずディーノは頬を朱に染めた。
「発熱は続いている。横になって身体を休めていなさい」
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