プルプルな青木とガチガチの井田「青木、改めて確認するけど、心構えは十分なんだな。」
「うん、俺の気持ちが勢いある“今”が良いんだ。」
「青木…それにしても丁寧に洗いすぎだろ…赤くなってる」
「あ、まじ?後ろ側って見えないから変に擦りすぎたかも…」
「皮膚が落ち着いてからで良いんじゃないのか?別に急ぐことでも…」
「ダメっ!今日がその日だって、前々から心の準備だってしてたんだぞ!」
「そうか…じゃあ、」
「あ、ちょ、ちょっとたんま!!」
「どうした?」
「一応確認だけど、その、井田も手、ちゃんと…」
「心配は無い。念入りに綺麗にしてきた。」
「そ、そうか、良かった。か、感染症とか一応怖いしさ」
「うん、じゃあ…そろそろ良いか?」
「あ!あの!!もう一個確認良い?!」
「うん?」
「血とか…出ないかな?」
「俺も未体験だしそこはな…。でもきちんと焦らずに、復習までした動画見習ってやればきっと平気だと思う。」
「よし、もう決めた!井田を信じる!!」
「青木…」
「……………井田っ!もう一気に!」
「あ…青木、そんなに震えられると、位置の固定もできな…」
「えーーー…だって、怖ぇもんは怖ぇもん…」
「…ふっ。だと思った。」
「へ??」
井田は袋をガサガサし始めた。何かを手にすると、また青木の元へと。そして、青木の皮膚に金属特有のひんやりとした感触が当たった。
「ひやっ!!な、何?!」
「こうなることは分かってたから、ピアスじゃなくて、カフス。これなら出血の心配も無いだろ?」
「い、井田ぁ~~~!!」
「やっぱり俺も、青木の皮膚に傷を付けるのは抵抗あるし」
「ほんとは、本っ当は物凄く怖かったんだああああ!!!」
「よしよし。…それにしても、ピアッサー余っちゃったな。」
「今度、あっくんたちが遊びに来た時にでもあげよっか」
「そうだな、もし相多自身が使わなくても美容師学校ならまわりに要る人も居そうだし」
「だよな。…って、もうこんな時間かよ!井田、付き合わせてごめんな~」
「俺は2限からだから全然構わないが、やばいのは青木の方じゃないのか?」
「そうだった!もう寝なきゃ!!」
「井田もほら、早く!!」
「うん…。」
実を言えば、ピアッサーを持った井田の手の方が震えは大きかった。
『なんか、責任転嫁したみたいで申し訳ないな…今度なんか奢るか』
既に寝息をたてている青木の髪をそっと撫で、『明日くらいは家に戻るか…。いろいろ消費期限の確認もしないとな』
先程とは真逆な、とても緩い決心をしつつ眠りに着いた。
━━━おわり━━━