アイニウルオイヲ俺はひとり、部屋で悩んでいた。
どうしても、どうしてなのか、今日は上手くいかない。
農学部の実習で畑の肥料の入れ替えがあって、上腕筋をいつもより過度に使った。
そのせいで、腕の角度や握力に影響が出ているのか…?
井田は、今日はちょっと遠くの施設を借りて、他校と練習試合で…たぶんあと1時間くらいで帰ってくるとは思うけど、そんなお疲れの彼氏に手伝ってもらうのも悪い。
いっそ道具でも使って…なんて過ったけど、一度道具を使ったらそれ無しじゃ出来ないようになっちゃう気もして、、それに、なんか怖い。
「あー、もーーー…」
ずっと腕を同じ角度にしているからか、だんだん痺れてきた…。
一方で外気に晒され続け我慢の限界を迎えている部分からは、水分が溢れ、無色透明の液体は重力に従って滑り落ちて行く…。
その時、『ガチャリ』と玄関のドアが開く音がした。
予想よりずいぶん前に、井田が帰宅してきたのだ。
「青木?どうした?目が真っ赤だぞ」
「…ああ、そういうことか。」
察しの良い俺の彼氏…。
すぐさま俺の真ん前に座り、急な出来事に少々戸惑う俺の手をちょっと強めに退けて、強引にこじ開けた。
「青木、そのままじっとしてて、動かないで。」
「う、うん。」
…ポタリ。
「はい、下向いて、目頭押さえて。」
「………」
「スッキリしたか?」
「あー、ありがとな井田、試合の後で疲れてんのに。」
「このくらい、大したこと無いって」
「今日肥料替えの時に土が目に入ってさー、学校でアイボンしたんたけど、なんか帰ってからも目にちょっと違和感あって…」
「アカンベー、使えば良かったのに。」
「道具に頼るの嫌だったんだよ。…それに、なんかあれ、顔がお化けみたいで怖いし。。」
「ふはっ!やっぱり青木は可愛いな!」
ギュッと抱き締められた。なんでだろう、運動したあとなのに、すんごい良い匂いがする…。
「井田、良い匂い…」
思わず口に出た。
「ああ、けっこう新しい施設で、シャワー付きだったからそこで流してきたんだ。」
「青木も今日は相当疲れただろ。腕の筋肉が固まってる…今日はキスだけで寝ようか。」
「うん。そうだな。」
「じゃあ寝間着に着替えてくる」
「うん」
言葉のとおりすぐさま着替えてきた彼を、今度は俺からギュッと抱き締めた。行為への熱が上がらぬよう、お互い唇を啄むくらいの、優しいキス…。ちょっと物足りない気もするけど、それは次回に取っておこう。
━━━おわり━━━