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    東間の保管庫

    雑多に書いたものを置いています。

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    東間の保管庫

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    なんとなく、こんなバニーちゃんもいいかなぁ、と。

    #TIGER&BUNNY
    #バーナビー・ブルックスJr
    barnabyBrooks,Jr.
    #イワン・カレリン
    ivanKarelin
    #兎折

    Dear SWEET「これ、貰いものだけどさ」
    ちょうど15時頃で休憩にコーヒーでも飲もうかと席を立った時、外から戻ってきた虎徹にそう言われて手渡された小袋を困った顔で受け取った。
    「なんですか、これ」
    「オジサン、甘いものが苦手でね。バニーちゃんにあげる」
    「はぁ?」
    「それ、おいしいらしいから」
    それだけ言うとヒラヒラ手を振ってまた出て行ってしまった虎徹に呆れた視線を送り、かさりと紙袋を開けた。手にした時にひんやりすると思っていたのだが、中身を見てバーナビーは溜息をつく。
    保冷剤が一個入った紙袋の中身はプリンだった。店の名前は聞いたことがない。小さな器にクリーム色のラッピングがされているプリンをどうしようかと思案に暮れる。
    甘いものが全く駄目というわけではないが、得意でもない。せっかく虎徹がくれたものだから捨てるのも嫌だし。かといって2個あるプリンを一人で食べるのもなんとなく気が進まない。
    プリンを押し付けてどこかに行ってしまった虎徹に消費を手伝ってもらおうと、紙袋を持ったままバーナビーは部屋を出た。
    すぐに追いつくだろうと思って廊下を進んだが、虎徹の姿は見当たらない。
    「どこに行ったんだろう…」
    あまり時間がたつといたんでしまいそうだ、と手にした紙袋を途方に暮れた顔で見ていると、声をかけられた。
    「バーナビーさん?」
    「先輩」
    驚いて振り向くと、イワンが控えめに笑いながら手を振っていた。ぱあっと笑顔になって小走りで近づくと、こんにちわと会釈をされる。
    「こんにちは、先輩。どうしてここに?」
    「近くに来る用事があったので。タイガーさんはいらっしゃいますか?」
    「虎徹さんはちょっと席をはずしているんですよ。急ぎの用事ですか?」
    ジャケットの中に入れていた携帯電話を取り出そうとすると、イワンが慌てて首を振る。
    「急いでいるわけじゃないから、いいんです。借りていたものを返そうかと思っただけなんで。また後日来ますから…」
    「そうですか…」
    虎徹と物の貸し借りをするほど仲がいいことと、すぐに帰ってしまおうとするイワンにショボンとしてしまう。
    よほどあからさまに表情が沈んだようで、イワンが困った顔をして見上げてくる。
    「すみません」
    「先輩のせいじゃないですよ。虎徹さんが戻ってきたら先輩が来た事を伝えておきますから。あの人のことだから、近いうちには連絡すると思いますよ」
    「はい」
    「えっと、先輩はこれからお暇ですか?」
    「いえ、あの、戻らないといけないんで」
    「…そうですか」
    「でも、ちょっとぐらいなら」
    イワンの言葉に、嬉しくなってつい声が弾んでしまう。
    人通りのあるロビー付近ではイワンが落ち着けないだろうと、バーナビーは自分のオフィス近くの小さな休憩所にイワンを案内する。廊下との境目には観葉植物があって、大きな窓から外が見える場所にソファーセットが置いてある。虎徹がさぼって寝転がっている時にはたいていこのソファーなのだが、今日はいない。
    ぽすんと小さく座ったイワンは、きょろきょろとあたりを見ている。
    「何か飲みますか?」
    カップの自販機しかありませんけど、と肩をすくめてみせるとイワンは小さく笑う。
    「ええと…」
    「マッチャ・オレがありますよ、先輩」
    「じゃあそれで」
    抹茶という単語に頬が緩んだイワンに、バーバビーは自販機を見ながら口を手で押さえる。表情をあまり崩さないイワンの笑顔を見て一気に顔が熱くなった。
    冷静なふりをしてイワンの抹茶・オレと自分のブレンドコーヒーのカップを手にしようとして、片手がふさがっていた事を思い出す。
    「…」
    かさりと振って、テーブルの上に置いた。
    「これ、なんですか?」
    「虎徹さんに押し付けられたプリンなんですよ」
    「プリン」
    少しトーンが上がった声を聞き逃すことはなかった。いつもより、ほんの少し高い声。
    「よかったらどうぞ」
    「え」
    「ティー・タイムにしてはちょっとさみしいかもしれませんが」
    カップを渡して、バーナビーもソファーに座る。
    「まだ冷たいと思うんですが」
    「え、でも」
    「2個あるんですよ。僕一人では2個はちょっと…」
    「甘いもの苦手ですか?」
    「全く駄目って事ではないんですが」
    紙袋から器を取り出してイワンの前に置く。一緒に入っていたプラスティックのスプーンも渡した。
    「いいんですか?」
    「どうぞ。僕も食べますから」
    「じゃあ。いただきます」




    「ただいま~っと」
    ぷらりと戻ってくると、バーナビーがやけに上機嫌でデスクワークをしていて虎徹は首をひねる。さぼったことに小言を言われるかと思ったのだが、嬉しそうに「お帰りなさい」と言われただけだった。
    「バニーちゃん。やけに嬉しそうだな」
    「ええ。ちょっと」
    鼻歌でも歌いそうな、いい笑顔で返事をされて虎徹もつられて笑う。
    「あ、プリン。ごちそうさまでした」
    「美味かっただろう?」
    「ええ。どこの店ですか?」
    「えっと、ブロンズステージの…って、バニーちゃん?」
    「今度買いに行こうかと思いまして」


    「すごく、おいしいです」


    あんなふうに笑ってくれるなら、甘いにおいがする店に行くのもいいかもしれない。
    にこりと笑って虎徹に地図を書いてもらい、満面の笑みで受け取った。
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