Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    さよりこ

    GS4腐向けで書いてます。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    さよりこ

    ☆quiet follow

    小渕さんのイラストで書かせていただきました、れいみかです!小渕さん素敵なイラストありがとうございました〜!!

    #GS腐向けフリライ

    一幕「待ちさなさい」
    「ま、まだ何か……?」
     職員室で説教されたあと、ツナギを脱がされスーツに着替えさせられた。ようやく解放されると思った矢先に再び呼び止められ、声が震える。
     氷室教頭はスーツに着替えた俺をじっと見つめたかと思うと「少しかがみなさい」と言った。
    「? はい」
     言われた通りに頭を下げる。
     すると次の瞬間、大きな手が俺の顔を覆った。
    「!?」
    「髪が乱れている。きちんと整えるように」
    「あ、いや、これはもともと――」
     というか、無理やり着替えさせられたせいでもある。普段からくせっ毛だし、改めて整えようとすら思わなかったが、氷室教頭は気になるらしく、俺の縦横無尽に跳ねる髪をどうにかしようとする。
    「ふむ……」
    「…………」
     落ち着かねぇ。
     って言うかなんだこの状況。
     入学式のあとというのもあって、職員室には俺たち以外誰もいない。あの氷室教頭と二人きりの空間でこうして触れられているなんて異様な状況でしかない。
    (そりゃ、あんたはいつもバッチリキメてるけど、俺の髪じゃ難しいだろう)
     扱える人間なんてそうそういない。
     ……はず、なのに。
    「御影先生?」
    「は、はいっ」
    「どうしました? 顔が赤いようですが……」
     分かってるなら早く終わらせてくれ。
     喉まででかかった言葉をぐっと堪える。
    「な、なんでも……、っ……」
    「ああ、少し赤くなっている」
     氷室教頭の指先が耳に触れた。その瞬間、甘みを帯びた刺激が体に走る。
    「〜〜〜〜っ」
     ぶわりと肌が熱を持つ。
     耳はダメだ。誰にも言ったことはないが、俺はその場所が特に弱い。
     ただでさえここに来る途中、思いっきり引っ張られて敏感になっているのに、そんなふうに優しく撫でられたりしたら――。
    「ぁ……っ、ぅ……」
    「申し訳ない。ただ、こうして髪を上げなければ気づかないでしょう。これで……」
     そこまで言ってふと言葉を切る。珍しいなと視線だけを上に向けると、俺と目が合った氷室教頭がハッとして「コホンッ」といつもの咳払いをした。
    「これでいいでしょう。速やかに、教室へ戻りなさい」
    「は、はい」
     やっと開放された。なんだか異様に疲れた……。
     なぜか背を向ける氷室教頭に一礼して職員室を後にする。スーツの中の熱をどうにか逃がしながら廊下を歩いていると、窓ガラスに写った自分の姿が目にとまる。
    「うわ……」
     なんて顔してんだ、俺。
     これからホームルームに戻る。それまでにどうにかしないと。深呼吸をして、ふと氷室教頭が触れていた髪に目を向ける。
    (何がどう違うんだ……?)
     あんなに丁寧に整えていたのに、俺がいつもテキトーに縛っているのとなにも変わらないように見える。
    (もしかして、ただ触ってただけだったりして……)
     なんて、ありもしない事を考えながら、耳にかかる髪を指で整え、俺は教室の扉を開いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
    2524