mine(昨日のカザマ、可愛かったな……)
仕事終わりにカザマのおじいさんの店に向かう。仕事中は何とかガマンできたが、こうして一人になると、昨夜の恋人の姿を思い出しては口元が緩んでしまう。ワイルド系で売っている人気モデルのNanaの時には見せられない姿だ。
だけど、今の俺は七ツ森。しかもマスクで口元が隠れているとなれば、気持ちも顔も緩んでしまうというものだ。
昔の俺はこうじゃなかった。表情だって豊かじゃないし、テンションだってそんなに高くない。あまり目立たない、どこにでもいる普通の男。だけど高校に入って、友達ができて、恋人ができて……自分でも知らなかった自分をたくさん知った。
「あ」
高校時代に思いを馳せていたら、いつの間にか店の前についていた。そっと中に入ると、カザマはカウンターの近くでお客さんと話をしているようだった。店が閉まるまであと少しある。俺は仕事の邪魔をしないように店の隅に移動した。
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