不自由な愛の話 剥き出しの肩にかすかな肌寒さを感じて目を開けた。
どうやら障子窓が少し開いたままになっているらしい。閉めなければなと頭の中では考えながら、手足は一向に行動に移せない。それは膝上に乗せて抱え込んでいる重みのせいであり、何よりそれを手放したくない己の心のせいであった。目前に広がる薄い背中に顔を寄せ、その温もりや、深奥でひっそりと脈打つ心音を堪能する。腰に回した腕の、その先、人形の指を弄るように己の指を絡めて遊ぶ感触を楽しむ。そうしてあっという間に微睡みの尾を引かれるように、開けたばかりの瞼が落ちそうになる。
嗚呼でも、多少の寒さくらい自分には大したことではないけれど、巫謠は風邪を引いてしまうかもしれない。泥濘みのような安らぎに浸っていた思考が、そう思い至った瞬間に『動かなければ』と手足に信号を送り出す。
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