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    n_lazurite

    @n_lazurite

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    DONE魔界暮らしの裂浪小話。
    ふよが日に日に冷たくなっていく気がして不安な裂ちゃんに、ならお前が温めてって添い寝要求するふよの話。ふよの執着が重いので注意。

    いつか絶対一線越える気満々ですやん(
    その熱で息づく為に「――酒でも飲めばあったかくなんのかね」
     言葉だけ取れば冗談じみたことを、如何にも真剣な表情かおと声で言うものだから、率直に言って巫謠は呆れた。
     ちゃぷりと水の揺れる音がして、素足を浸した桶の中の湯が朱い掌にすくわれる。それが足首の辺りから丁寧にかけられていく度に、忘れかけた温みが足先から身体の奥へと伝わっていく。それを何度も繰り返されて、両の足はもう十分すぎるほどに温められていると思うのに、裂魔弦は未だ納得がいかないようだった。珍しく難しい顔をしたまま、日に焼けにくい白い足をじ、と注視している。
     もういい、という意思を込めて、つま先を僅かに蹴り上げる。ぱしゃり、と小さく跳ねたお湯のひと粒が裂魔弦の頬に当たった。それを気に留めた様子はなく、けれど巫謠の言わんとするところを的確に察した碧の眼差しが、不服そうに細められる。そのまま暫く無言で見つめ合えば、やがて諦めたように裂魔弦は桶から巫謠の両足を引き上げさせ、間近に置いていた手拭いでぱたぱたと滴る水気を拭っていった。
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    PASTXに載せてるやつを此方にも(初出2025/1/5)
    ご都合時空の裂浪。ふよちゃんの朝支度をするレッちゃんの話。
    朝支度の話 朝。寝起き半覚醒な浪巫謠の姿を見て、裂魔弦は仕方ないなぁと思う――ではなく、むしろこれぞ好機とばかりに相棒の身支度を手伝い始めた。
     寝間着を着替えさせて帯を締め、髪を整えて三つ編みに。装飾をひとつひとつ丁寧に付けさせ、最後に水晶の冠を髪に飾りつければ完成。普段と違わぬ『浪巫謠』の姿へと仕立て上げた裂魔弦は満足げに顔を綻ばせて「出来た!」と声を上げた。
     瞬間、はっと我に返るように、巫謠の翡翠に理性の色が灯った。そうしていつの間にかすっかり身支度が済んでいる己の有り様に気づき、言葉なく驚愕を示す。僅かに丸くなった双眸に気分を良くした裂魔弦は、どうだとばかりに胸を張った。
    「手足があるってのは便利なもんだよなぁ。世話を焼きたい時にいくらでも手が出せるんだからよ。どうした浪、驚いたか? 伊達にお前さんと長年一緒に過ごしてきたんじゃないぜ。普段のお前の装いくらいなら、着させ方もすっかり覚えてるってもんだ。ま、見るのと実践するのとじゃ当然勝手は違うが、初めての仕事にしちゃ上出来だろう?」
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    n_lazurite

    DONEご都合時空な裂浪小話。
    雪遊びをする、本当は「さびしい」のかもしれなかった二人の話。
    雪兎を作る話 一晩降り続いた雪は、翌日には中庭を見事な銀世界に変えていた。
     これに目を輝かせ、身を切るような冷たさもものともせずに飛び出していったのはもちろん裂魔弦で。言霊を繰る珍しい琵琶から、自在に人型へ変化できるいっそう摩訶不思議な琵琶へと進化を果たした彼は、自由に動き回れる手足を得たことで、様々なものへの好奇心を顕にするようになった。
     食べ物を目にすれば、器用に箸を操って口に含み、咀嚼することの新鮮さを面白いと笑い。ある時ふつりと糸が切れたように眠りに落ちたかと思えば、電源を入れた絡繰のようにぱちりと目を覚まして、「俺今寝てた?!」と一頻り驚いてはやはり楽しそうに笑い声を上げる。
     自由になる身体を得たことで出来ることが増えた分、見聞きし触れるもの全てにこれまでなかった新鮮さを垣間見ているのだろう。琵琶であった頃からわざとらしく子供じみた言動を取ることがあったが、人に似た形を得たことでそれが実を得たような気がするのは、巫謠の錯覚ではないだろう。早い話が、琵琶であった頃より子供っぽい行動が増えた、と思う。
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