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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    POIPOI 36

    raixxx_3am

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    これ(https://poipiku.com/5919829/9722395.html)の後日談だけど読んでなくても別に大丈夫。「無理に話さなくっていい」はやさしさなのと裏腹に言葉を封じてしまっている側面もあるよなぁとぐるぐる思ったので書きました。
    ふたりともちゃんと話し合ったり、弱さや迷いを打ち明けあえるいい子なんだと思うきっとおそらくたぶんという夢を見ています
    (2024/2/11)

    #きすひよ

    repose「遠野くんあのね、ちょっと……いい?」
     夕食の片づけを終えたタイミングを見計らうように、背中越しにつつ、と袖を引っ張られる。ふたりで過ごす時間にしばしば為される、すこし子どもじみて他愛もないスキンシップのひとつ――それでもその声色には、いつもとは異なったいびつな色が宿されている。
    「うん、どうかした?」
     努めて穏やかに。そう言い聞かせながら振り返れば、おおかた予想したとおりのどこかくぐもったくすんだ色を宿したまなざしがじいっとこちらを捉えてくれている。
    「あのね、ちょっと遠野くんに話したいことがあって……落ち着いてからのほうがいいよなって思ってたから。それで」
     もの言いたげに揺れるまなざしの奥で、こちらを映し出した影があわく滲む。いつもよりもほんの少し幼くて頼りなげで、それでいてひどく優しい――こうしてふたりだけで過ごす時間が増えてから初めて知ることになったその色に、もう何度目なのかわからないほどのやわらかにくすんだ感情をかき立てられる。
    「……いいけど。立ち話もなんでしょう? 向こうでゆっくり話さない? コーヒーかなにか淹れようか? それからでもいいよね」
    「ああ、おねがい」
     答える代わりのようにパーカーの袖越しの肘をそっとさすれば、すこしだけ綻んだ笑顔はしずかにそれを受け止めてくれる。


    「……それでなあに、話って」
     ことり、と音を立ててローテーブルにカップを置きながら尋ねれば、強ばったようすをかくせないまなざしが、それでも、いつものようにじいっとまっすぐにこちらを捉えてくれる。
    「ああ、それなんだけど――」
     いびつに唇を震わせながら、すっかりおなじみのやわらかな口ぶりでの言葉が続く。
    「ほら、少し前に遠野くんが話してくれたでしょう。これからのことで――どうしようかって。気になってたことがあってさ、その時のことで」
    「あぁ、」
     思わずほんのすこしだけ身を強ばらせるこちらを気遣うように、やわらかく笑いかけるようにしながら言葉は続く。
    「あの時さ、遠野くんがちゃんと話してくれて、すごくうれしくって………遠野くんはなんにも悪くないんだよ。感謝してるし、すごくうれしかった、いまでもそう思ってるから。でもさ、後になって――すごくよくなかったって思うことがあって、僕が」
     もどかしげに息を詰まらせるようにしながら、きっぱりと鴫野くんは答える。
    「あの時さ、遠野くんが話そうとしてくれたことがあったでしょ。前につき合ってた人との間になにかあったって。言ったよね、『無理に答えなくっていいから』って。後になって思ったんだよね、なんていうかさ……遠野くんのため、みたいな言い方にしてたでしょ。それってずるかったよなって」
    「そんなこと」
     かぶせるように答えるこちらの言葉を覆うように、鈍いためらいの色を宿した言葉がすぐさま続く。
    「……だってさ、ほんとのことだから。すごく良くなかったって思ってる。甘えてたよなって。無理に話そうとしてくれてるんじゃないかって思ったのは本当だよ。でもさ、それとおんなじだけ怖かったんだよね。どうしようもないことなのくらいわかってて、いまさら嫉妬したって仕方ないんだけど――聞きたくなかったから、僕が」
     消え入りそうな脆さで告げられる言葉に、ぎゅうっと心の奥を締め付けられるような心地を味わう。
    「……鴫野くん」
     囁くように力なくそう呟けば、答えるかわりのように、あやうげに揺れるまなざしがじいっとこちらへと注がれる。
     ほんとうにどうすればいいんだろう、こんな時は。言いしれようのないあまい息苦しさがじわじわと押し寄せてくるのを感じながら、ひとまずは、と深く息をのむ。
    「あのね、鴫野くん」
     わずかに震える掌に自らのそれをそうっと重ね合わせながら、きっぱりと答える。
    「……ありがとう、気遣ってくれて。でもほんとうにいいよ、気にしてなんかないから。ほんとにさ、ただ僕が空回って無責任だったって、それだけだから。だからあの時――無理に話さなくたっていいって鴫野くんが言ってくれたのがすごく安心して、すごくうれしかった」
     気恥ずかしさと息苦しさで、胸の奥がじわりと締め付けられる。どうしようもなくもどかしい、それなのに、すこしも嫌な気持ちになんてならない。
     ずっと知らなかった、知らずにいるつもりだった――〝ほんとうのこと〟を伝えたいと思う時、こんなふうに心が震えるだなんてこと。
    「鴫野くんはさ、ずっと前にも言ってくれたよね。僕がいいかげんな付き合い方しか出来てこなかったと思うって言った時――十代なんてそんなものだし、そもそも恋愛なんて痛み分けみたいなものなんだから、むやみに自分のことばっかり責める必要ないんじゃないのって」
    「……あぁ、うん」
     くすぶった色に染め上げられたまなざしでこちらを見つめながら、ぽつりとあたたかな吐息混じりの言葉がしずかに落とされる。
    「ごめんね、なんか――えらそうだったよね、すごく」
    「思わないで、そんなふうに」
     ひどく遠慮がちに聞こえるそんな答えを翻したい一心で、きっぱりと僕は答える。
    「すごくうれしかったから、あの時。鴫野くんのそういうまっすぐに人にも自分にも向き合えるところだとか、優しいところだとか――僕にはないものがいくつもあって、最初からずうっとそこに甘えてばっかりいるのが情けないな、だなんて思うことがいくつもあって――でも、だから」
     大丈夫、すこしも恐れなくたっていい。だって鴫野くんはこんなにもまっすぐにこちらを見つめてくれているんだから。言い聞かせるような心地で、いびつに震えた言葉を紡ぐ。
    「あのね、鴫野くん。……話してくれてありがとう、ちゃんと。いやだなんて思ってないよ、ちっとも。大事にしてくれてありがとう。すごく嬉しい。すごく好きだよ、鴫野くんこと」
     返せるのかなんてすこしもわからないけれど、という言葉は心の奥にしずかに飲み込む。わかっているから、そのつもりがすこしもなくたって、いたずらに傷つけてしまう羽目になることくらいは。
    「とお」
    「貴澄、」
     ひどく不慣れな響きでおそるおそると名前を呼べば、それだけで、見つめ合ったまなざしの奥にはぼんやりとくすぶったおだやかな熱がともる。
    「好きだよ、ほんとうに」
     信じてほしい、だなんて言葉で伝えるのは簡単なことだけれど。気持ちを届けられるようにと、まなざしと触れ合った指先に、満ちる思いを静かに託すように手を伸ばす。
     いびつに震えた指先で、やわらかな髪をおそるおそるとなぞりあげる。ひどくくすぐったくて、おだやかで――それでいて、なによりも優しい。照れくさそうに瞼を細めてみせる姿をじいっと見つめながら、こめかみへとそっと、ふれるだけの口づけを落とす。
    「ありがとう、話してくれて」
     答える代わりのように、すこし火照ったまなざしがじいっとこちらへと注がれる。
     満ち足りたあたたかな思いが、またこうしてふたりの間の空白を静かに埋め尽くしていく。
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DOODLEきすひよ。いちゃいちゃしてほしかっただけ。相変わらず受けと攻めが不確定。欲望を明け渡しあうことよりも緩やかで優しいスキンシップでお互いを満たしあうことを大切にしているうちにゆっくりその先に進むこともあるんじゃないのかな、ふたりにはそんな関係でいてほしいなという気持ちで生産工場は稼働しています。
    (2024/07/19)
    butterfly kiss「あのね、遠野くん。ちょっとだけ聞いておきたくて」
     ふぅ、とひどく慎重に息を吐き、プレゼントの包みをそうっとほどくようなたおやかさで言葉が続く。
    「遠野くんはさ、僕にしてほしいことってあったりする? その、そういう時に」
     行儀良く膝の上に置いた指をもどかしげに絡ませるようにしながらぽつり、と吐き出されるおだやかな言葉に、息苦しいほどのあまやかな気配が立ちのぼる。こちらをまっすぐに見据えるかのようなまなざしはいつも通りにひどく穏やかで温かいのに、その奥には確かな〝予感〟を帯びた色が隠されているのがありありと伝わるから、いびつに揺らいだ心は音も立てずにぐらりと心地よく軋む。
    「あぁ……えっと、その」
     答えに窮したまま、手元のクッションをぎゅっと掴めば、気遣うようなやさしいまなざしがこちらへと注がれる。
    4603

    raixxx_3am

    DOODLEひよちゃんは幼少期のコミュニケーションが足りていないことと「察する」能力の高さから本音を押し殺すのが常になってしまったんだろうし、郁弥くんとは真逆のタイプな貴澄くんに心地よさを感じる反面、甘えすぎていないか不安になるんじゃないかな、ふたりには沢山お話をしてお互いの気持ちを確かめ合って欲しいな、と思うあまりに話ばっかしてんな僕の小説。
    (2024/05/12)
    君のこと なんて曇りのひとつもない、おだやかな優しい顔で笑う人なんだろう。たぶんそれが、はじめて彼の存在を胸に焼き付けられたその瞬間からいままで、変わらずにあり続ける想いだった。


    「あのね、鴫野くん。聞きたいことがあるんだけど……すこしだけ」
    「ん、なあに?」
     二人掛けのごくこじんまりとしたソファのもう片側――いつしか定位置となった場所に腰を下ろした相手からは、ぱちぱち、とゆっくりのまばたきをこぼしながら、まばゆい光を放つような、あたたかなまなざしがまっすぐにこちらへと注がれる。
     些か慎重すぎたろうか――いや、大切なことを話すのには、最低限の礼儀作法は欠かせないことなはずだし。そっと胸に手を当て、ささやかな決意を込めるかのように僕は話を切り出す。
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    raixxx_3am

    DONEすごくいまさらな日和くんのお誕生日ネタ。ふたりで公園に寄り道して一緒に帰るお話。恋愛未満、×ではなく+の距離感。貴澄くんのバスケ部での戦績などいろいろ捏造があります。(2023/05/05)
    帰り道の途中 不慣れでいたはずのものを、いつの間にか当たり前のように穏やかに受け止められるようになっていたことに気づく瞬間がいくつもある。
     いつだってごく自然にこちらへと飛び込んで来るまぶしいほどにまばゆく光輝くまなざしだとか、名前を呼んでくれる時の、すこし鼻にかかった穏やかでやわらかい響きをたたえた声だとか。
    「ねえ、遠野くん。もうすぐだよね、遠野くんの誕生日って」
     いつものように、くるくるとよく動くあざやかな光を宿した瞳でじいっとこちらを捉えるように見つめながら、やわらかに耳朶をくすぐるようなささやき声が落とされる。
     身長のほぼ変わらない鴫野くんとはこうして隣を歩いていても歩幅を合わせる必要がないだなんてことや、ごく自然に目の高さが合うからこそ、いつもまっすぐにあたたかなまなざしが届いて、その度にどこか照れくさいような気持ちになるだなんてことも、ふたりで過ごす時間ができてからすぐに気づいた、いままでにはなかった小さな変化のひとつだ。
    11803

    raixxx_3am

    DOODLEDF8話エンディング後の個人的な妄想というか願望。あの後は貴澄くんがみんなの元へ一緒に案内してくれたことで打ち解けられたんじゃないかなぁと。正直あんなかかわり方になってしまったら罪悪感と気まずさで相当ぎくしゃくするだろうし、そんな中で水泳とは直接かかわりあいのない貴澄くんが人懐っこい笑顔で話しかけてくれることが日和くんにとっては随分と救いになったんじゃないかなと思っています。
    ゆうがたフレンド「遠野くんってさ、郁弥と知り合ったのはいつからなの?」
     くるくるとよく動くまばゆく光り輝く瞳はじいっとこちらを捉えながら、興味深げにそう投げかけてくる。
     大丈夫、〝ほんとう〟のことを尋ねられてるわけじゃないことくらいはわかりきっているから――至極平静なふうを装いながら、お得意の愛想笑い混じりに僕は答える。
    「中学のころだよ。アメリカに居た時に、同じチームで泳ぐことになって、それで」
    「へえ、そうなんだぁ」
     途端に、対峙する相手の瞳にはぱぁっと瞬くような鮮やかで優しい光が灯される。
    「遠野くんも水泳留学してたんだね、さすがだよね」
    「いや、僕は両親の仕事の都合でアメリカに行くことになっただけで。それで――」
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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