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    totorotomoro

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    totorotomoro

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    壁ドン顎クイ、上から圧かける。
    全部これ絵で表現が出来たら…!
    ※理性剤について独自の設定をいれてます

    #鯉博
    leiBo

    龍の逆鱗にうっすら触れた リーが読みかけの本から視線を上げると、日付は変わっていなかったがもうだいぶ遅い時間になっていた。
     目を瞼の上からそっと揉み、寝る前に少し酒を飲みたいと思い立った。自室としてあてがわれた部屋に置いたままだった封の切っていない黄酒をあけて、グラスなどの備え付けの備品を取り出してごそごそと準備をする。あとはと最後のつまみを隠してある棚を開けた時に昼間購買部で買い置いたはずのナッツが見当たらないことに気づいた。
     あれと思ったのも束の間。夕方顔を見せにきたアが「うまい」とポリポリ何か食べていたことに思い至る。やられた。
     飲むだけなら酒だけでもいいが、つまみも一緒に食べたい口になっている。購買は夜勤者のためにも開いているだろうが、今からまた着替えて、また戻って着替えるのはとても面倒くさいことのように感じられた。
     しかし飲めないとなると、より飲みたいと喉の奥が疼きだす。
     こうなるとしょうがない。リーは明日アにあったらデコピンしてやろうと考えながら、ため息をついて寝るだけになっていた衣服の合わせに手をかけた。

      ◆◇◆

     はたしてリーは購買まで赴いて、昼間と同じように───この人はここに住んでいるのかと思う程には、常駐している気がする───店番のクロージャと少し話してバックヤードからだしてもらった品物の対価を龍門弊で手渡した。
     その戻りがてら、自販機が列になっているところの前にしゃがみ込んで「うーん」と唸っている仕事着姿のドクターに出会う。行きには居なかったはずなので、リーが通り過ぎてからやってきたらしい。
    「こんばんは、ドクター。お疲れ様です」
    「おや、お疲れ様、リー」
     ドクターがいたのはシリアルバーやインスタントラーメンなどの軽食が詰まっている自販機の前だった。
    「残業でしたか」
     リーが問うと、ドクターはこくりと頷いた。
    「そう。今日はもうおしまいだけどね。君は?」
     ドクターの顔がリーが小脇に抱えた袋から見えているナッツに釘付けになる。
    「おれはもうとっくに店じまいです。寝る前にちいと少し飲みたかったんですけど隠してあった酒のつまみをアにかじられちまったんで、それを買いに」
    「ああ、なるほど」
     ドクターの顔はナッツから自販機に移り、しばしの沈黙の後で「やっぱこれかな」と独り言を言いながら購入ボタンを押してIDをかざした。
     ガタンと落ちてきたのは彼の部屋でよく見るナッツ入りのシリアルバーの包みだった。それを後二本同じ動作をして取り出すと、一本こちらに握らせてくる。
    「なんです?」
    「お裾分け。お酒のアテにはならないかもだけど」
     言いながらカップラーメンも一つ買う。リーは手の中に落とされたシリアルバーを見る。甘いコーティングがされているシリアルバーは酒のつまみとしてはリーがあまり得意ではない部類に入るのと、こんなハイカロリーなもので酒を飲むと肝臓が……とやたらカラフルで一本で栄養素満点と主張の強い包みのバーを眺めて思う。しかし誰でもないドクターがくれたものだとリーは受け止め、笑顔で返事をすることにした。
    「ありがとうございます。夜カロリー摂りすぎるとワイフーに叱られるんで朝にでもいただきます」
    「うん、そうして」
     すべてを見抜いたかのようにドクターは含み笑うと、シリアルバーを白衣のポケットにねじ込み、隣の自販機に移動してIDをかざすと栄養ドリンクを買う。
     流れるような動きで手慣れているが、リーはそのラインナップにひそかな不安が脳裏をかすめた。
    「ドクター」
    「うん?」
    「まさかと思いますけど、それ、全部今から部屋で摂るなんて言わないでしょうね?」
     カップラーメンにシリアルバーに栄養ドリンク。
     どう考えても夜中の日付変更間際に、いち製薬会社の組織のトップが摂るべき飲食物ではない。
    「そうだけど、ダメかな」
     不思議そうに答えるドクターに、リーは返事につまり、そっと目を閉じて眉間を押さえた。肝臓元気で羨ましいと思うか、怖いもの知らずというべきか。
    「……ドクターのご予定を伺います。そんなの飲まないといけないくらい、明日も朝早いんですかね」
    「いや明日は休みだよ。残業規定時間を越えてしまったんで、休みで調整することにしたから」
     いいつつドクターはパキュと栄養ドリンクの蓋を開けるとフェイスシールドを持ち上げて口元に持っていこうとする。
    「いやいやいや、おれの問いかけの意味がわからないあなたじゃないですよね? 飲まないでくださいってことですよ」
     リーがその手を押さえた。
    「飲まないと起きた時に頭がぼーっとするから」
    「その症状は明らかに摂りすぎですよ。それ何本飲みました」
    「今日は……今日は、まだ、これで三本目だよ」
     少しの間と、シールドを持ち上げたことで見える視線が泳いだのをリーは見逃さない。
    「嘘言わんでください。それ、見た感じ五本目でしょう」
    「わかるのか」
    「勘です。その反応からして絶対に三本目じゃないですね。没収します」
     瓶を取り上げるとドクターに届かないように高く掲げる。取り返そうと両手を伸ばすドクターを、それぞれの夜勤の仕事に向かう途中らしい職員たちがちらりと見て、大体を察したのか挨拶をして笑って通り過ぎていく。
    「……理性剤も打ってるでしょう。瞳孔が少し開き気味ですよ」
     彼女たちが通り過ぎてから、リーは立ち位置を少し調整してドクターを自分の背中で彼女たちから見えないように庇うと瓶を持っていないほうの手でドクターの顎をつまんで上に向けた。
    「すごいな、君は医者かい?」
    「探偵ですよ。探偵ってのは、観察が大事なんです」
     照明で眩しそうに薄く目を細めつつも、なぜか嬉しそうに自分の両手でドクターはリーの手を包む。
    「リー、返して」
     劣勢と見るや、情に訴える作戦に切り替えたらしい。しかし理性剤で一時的に頭の中がさっぱりしているだけでいじらしさもかわいらしさもない、理詰めで人を動かそうと感情を少し後ろに置き去りにしたドクターにリーの心がぐらつくことはない。むしろ、リーは笑みを深くした。より平易に簡単に今の感情をいうなら、これで欲しいものを取れると思ったドクターにちょっとだけイラッとした。
    「ダメです。健康に留意するのはみなさんとの約束でしょうが。そっちも今日は没収です。明日返してあげますから」
     リーは片手で蓋を閉めた栄養ドリンクを自分のポケットにしまうと、さっさとドクターから脇に抱えたカップヌードルとポケットのシリアルバーを取り上げる。
    「ひどい! 私の《楽しみ》をとるなんて」
    「ドクター」
     聞き分けのないドクターがかわいいと思えるのは、酔って前後不覚な時や甘やかし尽くして狼狽える素面の時だ。リーから見て、今のドクターはあくまで理詰めの塊であることが見てとれた。こうしたら自分は少しくらいは折れてくれると思ったのだろうとリーは思い、理解はするが自分への理解が浅いとも思った。
    「ドクター、毎日三食健康なメシを食えとか深夜に食うなとは言いません。たまの暴飲暴食も背徳のカロリー飯もいいもんだ。酒も甘味も過ぎなきゃ多いに結構。ですけどね?」
    「り、リー……?」
     リーは人がいないことを確認して、ドクターを防犯カメラから絶妙に見えにくい位置へと背中を押して連れて行く。
    ゆったりと、微笑みのまま。そうしてから自販機を壁にしてドクターを追い詰めた。
     長駆を活かして上から覗き込むように、ドクターのフェイスシールドも取り上げて鼻先なら食べられそうなくらい近い距離で固まったままのドクターの頬を指先で撫でてフッと笑った。
    「理性剤使ったふにゃふにゃ頭で、そんな態度でおれに言うこと聞かせようとするのはいただけません。《楽しみ》? であればおれと部屋にいって、朝までじっくり別の《楽しみ》について話し合いましょうや。どうせ明日休みなんだったら、朝メシも作ってあげますんで」
    「あ、あの、いや」
    「決まりですね」
     今さらリーの逆鱗に指先がかすめてしまっていたとドクターが気づいたころにはもう遅く。
     リーはドクターに先に歩いてくれと道を譲った。
     いつもの笑顔で。

      (END)
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    はるち

    DOODLEロドスでダンスパーティーが開かれるのは公式というのが良いですね
    shall we dance「あなたには、ダンスはどのような行為に見えるかしら?手を相手の首元に添えて、視線を交わせば、無意識下の反応で、人の本心が現れるわ」

    踊ろうか、と差し出された手と、差し出した当人の顔を、リーは交互に見た。
    「ダンスパーティーの練習ですか?」
    「そんなところだよ」
    ロドスでは時折ダンスパーティーが開催されている。リーも参加したことがあり、あのアビサルハンター達も参加していることに少なからず驚かされた。聞けば彼女たちの隊長、グレイディーアは必ずあの催しに参加するのだという。ダンスが好きなんだよ、と耳打ちしてくれたのは通りがかりのオペレーターだ。ダンスパーティーでなくとも、例えばバーで独り、グラスを傾けているときであっても、彼女はダンスの誘いであれば断らずに受けるのだという。あれだけの高嶺の花、孤高の人を誘うのは、さぞかし勇気のいることだろう――と思っていたリーは、けれどもホールの中央で、緊張した様子のオペレーターの手を取ってリードするグレイディーアを見て考えを改めた。もし落花の情を解する流水があるのならば、奔流と潮汐に漂う花弁はあのように舞い踊るのだろう。グレイディーアからすれば、大抵の人間のダンスは彼女に及ばないはずだ。しかしそれを全く感じさせることのない、正しく完璧なエスコートだった。成程、そうであれば、高嶺の花を掴もうと断崖に身を乗り出す人間がいてもおかしくない。
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