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    totorotomoro

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    POIPOI 39

    totorotomoro

    ☆quiet follow

    載せるの忘れてたので、5と6の順が逆ですが、これで終わってるのでそのまま読めます。初期案は鯉先生が「この人の恋人はおれですよ」って周りにアピールする大人気ないところを入れる予定でした。

    #鯉博
    leiBo

    散文5「あたしね、あたしはね、けっこんするならリーさんがいい! だって料理がおじょうずだもの!」
    「あたしはエンカクさん!しょくぶつをそだてるのがとてもじょうずなのよ」
    「わたしはウンさんがすき!」
     ドクターはその言葉を耳にしてふと足を止めた。
     見ればロドスで面倒を見ている子たちが休憩スペースで四、五人で固まって楽しそうにおしゃべりをしていた。
     種族としてはわかりやすい子だとペッロー、アナティ、クランタといったところだろうか。どの子もまだ十にも満たないかもしれない。
     前後の会話から、オペレーターの中で結婚相手とするなら誰がいいかみたいな話だろうか。微笑ましさについニコニコと眺めていると、一人の女の子が気がついて手を振ってくる。
    「ドクターだ〜」
    「こんにちは」
     振り返すとひとりの子だけ、さっと頬に赤みが走る。おやまさか?と思うと、どうやらそのまさかだったらしい。
    「ドクター! ドクターはどくしんですか?」
     その隣にいた子が好奇心からか、目をキラキラとさせながら手をあげて問うてくる。これはどうやら自分がたどり着く前に会話の中にエントリーされていたらしい。光栄だなと思いつつ、はてどう答えるのが正解なのだろうかとドクターは口籠った。
    「独身だけど、どうして?」
     とりあえず嘘はつかない方が教育上いいかもしれない。そう思って答えると、きゃーと可愛らしい悲鳴があがる。
    「ねえねえ、そうしたら、ドクターにこいびとはいらっしゃるの?」
     ペッローの子がふわふわとした髪を揺らしながら次の質問を投げてくる。
     ここで居ると答えた場合は先ほどから頬を染めている彼女が傷つくかもしれないし、誰だと聞かれるかもしれないし、しかして嘘も言いづらい。ドクターは頭の中でどうしようかなと考える。
    「え〜?」
     とりあえず彼女たちにあわせてかわいく答えてみる。その反応はお気に召したようだ。鈴を転がすような笑い声があたりに響く。
    「ドクター?」
     その中をのんびりと入り込む声。振り返ると、そこには一抱えほどあるサイズのダンボールを持ったリーが立っていた。
    「おや、リー」
    「探しましたよ。ケルシーさんが呼んでますよ」
    「あれ? 打ち合わせがあったかな。───というわけで、ごめんね。行かなきゃ」
     ええ〜と声があがるが、ドクターが手を振ればみんな笑顔で振り返してくる。
    「ばいばーい」
    「ばいばい」
     リーの側に行くと、「こっちですよ」と言いながら彼は歩き出す。ドクターがそれを目で追いながら振り返ると、すでに女の子たちは興味を失ったようにまた違うらしい会話を再開して、きゃあきゃあと笑い合っていた。

     
     リーが曲がった先で開いたままの扉から中に入り、持っていたダンボールを置くと戻ってきて音を立てずに扉を閉めた。入り口で待っていたドクターは肩をすくめる。
    「ごめんね、助かった」
    「いいえ」
     ダミーのダンボールを置いて手ぶらになったリーは再び歩き出す。なんとなくドクターもついていく。
    「ケルシーの用事は?」
    「行けば何かはあるかもしれませんよ。こないだドクターが書いてた書きかけの予算表を見て何かおっしゃってましたんで」
     ドクターの脳裏にケルシーの淡々としたでも容赦のない問いかけが何パターンも浮かんだ。
    「ありがとう。質問を変えようかな。リーはこれからどこへ行くのかな」
    「うーん、特に決めてないですけど、ドクターお腹空いてます?」
    「多少は」
    「そうしたら、おれの部屋で点心食べませんか。食堂で試作作りに手伝ったのをもらったんですよ。あとでガキどもと食べようかと思ったんですけど、みぃんなふられちまったんで」
    「それが本題?」
    「さあて、なんのことですかねえ」
     くすくすとリーは笑うと自分の宿舎がある方を指差した。
    「残念ながら蒸し立てはお出しできませんけど、茶なら淹れたてのを拵えるんで、いかがです?」
    (だってリーさんは、料理がおじょうずだもの)
     先ほどの子どもたちの会話が脳裏によぎる。そうだねとドクターはその会話に心の中だけで返事を返した。
    「じゃあご相伴にあずかろうかな」
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    はるち

    DONE二人で飲茶を食べるお話
    いつだってあなたと晩餐を アルコールは舌を殺す。
     酒の肴を考えてみれば良い。大抵が塩辛く、味付けが濃い。それは酒で鈍くなった味覚でも感じ取れるようにするためだ。煙草も同様だ。喫煙者は食に興味を示さなくなることが多いと聞くが、それは煙が舌を盲目にするからだ。彼らにとっては、食事よりも煙草のほうが味わい深く感じられるのだろう。
     だから。
     酒も煙草も嗜む彼が、こんなにも繊細な味付けで料理をすることが、不思議でならない。
    「今日のは口に合いませんでした?」
    「……いや、おいしいよ」
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     ガタガタンゴツン、ゴッ───ゴトゴトッ……ピッ、ブツッ。

     え、なにこれ。新手のAV?

     沈黙した携帯端末を見下ろして、ドクターはたぷたぷと画面に触れた。直前に連絡してきたのはさっき名乗ったリーの携帯端末からで、最後の物音は端末を床に落としたか何かだろう。かけ直そうかと思ったが、通話の状況的に相手が出るわけもない。
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    この謎を解く頃に、きっとあなたはもういない。

    という感じのなんちゃってSFです。アーミヤの能力及びドクターについての設定を過分に捏造しています。ご了承下さい。
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     交は軽薄の人と結ぶことなかれ
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     軽薄の人は交りやすくして亦速なり
     楊柳いくたび春に染むれども 軽薄の人は絶えて訪ふ日なし
     ――引用 菊花の約 雨月物語


    「どうも私は、死んだみたいなんだよね」

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