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    そらの

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    そらの

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    そこそこあぶ空1210展示
    ルスボブ
    だんだんと寒くなってきたから

    #TGM
    #ルスボブ
    ruthBob

    冬の始まりと暖かい手空は既に冬空へと移り代わっていた。風も吹きすさぶ中、ボブとブラッドリーは家路を急いでいた。こんなに遅くなるとは思っていなかった。ちょっと寄り道をしていたら空はもう暗くなりかけていた。ボブはそれでも気にせず軽やかに歩き、ブラッドリーはそんなボブに合わせて歩いている。帰り着くにはまだ時間がかかりそうだ。

    「今日は寒いね」

    「そうだな」

    ふたりして吐く息は白い。日が暮れてきているからだろう、気温が徐々に下がっているらしくブラッドリーは思わず身震いした。手が悴む。仕方なしにジャケットの両ポケットにぞんざいに手を突っ込む。何もしないよりはマシだ。ボブはと言えばふわふわの手袋をしていた。いつの間に、と思ったがボブは寒がりなので以前から用意していたのだろう。ポケットに手を入れていても温まることはなくブラッドリーはしきりに手を動かしていた。

    「ブラッドは手、寒くないの」

    「寒い」

    「手袋つけたらいいのに」

    ボブは不思議そうにブラッドリーを見やる。ブラッドリーは寒がりでは無いとはいえ、今日は寒い部類だと思う。ポケットに手を入れていると何かあったら危険だし、ボブとしては手を繋げないことが少し不満であった。二人きりで出かけることなどそんなに多いことでは無い。たまには手を繋いで歩いてみたい。周りのことなど、気にせずに。

    「生憎とそんな洒落たものは無い」

    「えぇ……普通だと思うけど」

    「ないものはない」

    寒い事でやや不機嫌なのか、ブラッドリーの返事は素っ気ない。ボブは口を尖らせる。そこまでキッパリと言いきらなくてもいいだろうに。せっかく二人きりなのにな、とボブは残念がった。それなら少しでも温まれば、ブラッドリーは機嫌を直してくれるだろうか。

    「ブラッド」

    「何?」

    「片方貸してあげる。右手、出して」

    「えぇ……」

    ブラッドリーは多少嫌がりながらもポケットから腕を出しボブの前に差し出す。触れた手は冷えていて確かに寒がっていたことがわかった。ボブは差し出されたブラッドリーの手を取り、自分の手袋をはめてやる。その上から両手を撫でさする。少しでも暖かくなれば、という思いからの行動であった。

    「どう?少しは暖かい?」

    「……まぁ」

    「今はこれで我慢して」

    帰ったら一緒に温まろう、そう言ってボブはブラッドリーを宥める。ブラッドリーも満更では無い様子で手袋をはめられた手を握ったり開いたりしている。ボブの体温が少し残ったそれはほのかな温かさを伝えた。けれど、まだ足りない。

    「左手も寒い」

    「えぇ……」

    もう片方差し出したら自分が寒い、とボブは訴える。そこまで寒いというのならそれこそ手袋を用意しておけばよかったのに。さてどうすればブラッドリーは満足するだろうか、と思案していると、ブラッドリーが小さく笑った。

    「ボブ、右手、出して」

    「え?」

    右手は既に冷えてきていた。そんな手を一体どうするのか。ボブは検討もつかないままに右手を出す。ブラッドリーはポケットから出した左手で、ボブの右手を握りこんだ。そして手を引き、二人はピッタリとくっつく。

    「ん、暖かいな」

    冷えかけていた手だったがブラッドリーの手はもっと冷えていた。それを冷たい、と思いながらボブはそれでも嬉しかった。まさかこういう形で手を握ることになろうとは、少しも思ってなかったのだ。その事に少し照れているうちにブラッドリーは手を強く握ってきた。

    「嫌か?」

    「まさか!」

    ボブも手を強く握り返す。二人ともに、その手を離すまいとして。握り合った手はだんだんと熱を帯びてくる。これで、少しは暖かくなるだろう。心なしかブラッドリーの機嫌も良くなったような気がする。

    「大事な手を、お借りします」

    ブラッドリーはそう言って繋いだままの手を持ちあげる。ボブが一体何をと思う間もなく、ブラッドリーはその手の甲にキスを落とした。驚いたボブは口をぽかんとさせ、赤面する。

    「暖かいよ、ありがとう」

    優しく微笑んだその顔には満足だ、という感情が見て取れた。ボブはそれならよかった、と思いたいところではあったが恥ずかしさの方が勝り腕を勢いよく下ろした。もちろん握ったままの手は離さずに。

    「もう!ブラッドは恥ずかしいことばかりするんだから!」

    もうやめてよ、とボブは空いている左手で顔を隠し、ブラッドリーが覗き込むと顔を逸らす。そこまでのことだったかなぁ、とブラッドリーはくすくすと笑った。吹き抜ける風は冷たかったが繋いだ手は互いの熱を伝え、暖かかった。二人の寒い冬はまだ始まったばかりだ。
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    そらの

    DONEいきなりあぶ空2023展示
    立ち上る紫煙の元を探ってふと、時折匂う、苦味のある香り。それはすれ違った時だったり、隣にいる時だったり、抱き合ったりした時に密かに感じられるものだった。それが何か、解らぬほどボブは子供ではなかった。
    自分にだって覚えはある。一丁前に大人になったと浮き足立った時、つい手を出したものだった。自分には合わずただただ苦しんだだけだったけれど。
    一時だったけれど覚えのあるそれが、時折、ブラッドリーから香るのだ。独特の苦味のある香り───煙草のそれ───が。本人がそれに気づいているのか、それは知らない。言わずにいるだけなのか、言わないつもりでいるのかも、知らない。
    ボブはそれを不思議に思っていた。もう長いと言えるほど生活を共にしているのに、けれどその姿を見た事は一度もない。どこでもだ。ただ感じるのはその匂いだけで、でもその確たる証拠はどこにもなかった。もしかしたら匂い移りしただけかもしれないとも思うが触れるその手からも香るそれがそうとは言わせてくれない。不思議に思うだけで不快に思うことは無いのだから言ってくれればいいのに、とボブは思う。我慢させていたとしたらなんだか申し訳ない。ブラッドリーがボブを自由にさせるように、ボブもブラッドリーの行動を制限したくないのだ。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/お題「いい子」「悪い子」
    たまらんくらい最高のお題だったのでどちらも使いました
    帰り支度 思えばブラッドリーは、僕の知る限りずっといい子だった。
     大人の助けが必要なほど幼い頃から、ブラッドリーは他者を助けることに躊躇いがなかった。家の中では着替えを手伝ってもらっていた子が、外では道端でひっくり返った虫を草木がある場所まで戻してやり、公園では転んだ子に駆け寄り、大丈夫かと声をかけた。小さい頃は家族や僕以外には少し内気だった坊やは、転んで落ち込んだその子を控えめな態度で誘い、一緒に遊んで回った。そのうちその子は坊やの友達になり、名前と住所を教え合った。
     学校に通い始めてからも、ブラッドリーは何も変わらなかった。忙しいキャロルに代わって保護者面談に出席すると、先生からは驚くほどよく坊やを褒められた。「クラスメイト同士の喧嘩を止めて、仲直りまでさせたんですよ」また、意地悪されている子がいれば常に一緒に行動し、いじめっ子にも怯むことはなかったという。優しくて強い心を持ち、それを家族や僕以外にも分け与えられる子。先生の話を聞きながら、僕は誇らしさで胸がいっぱいだった。僕が坊やを育てたわけでもないのに、すぐにでも彼をハグしたくてたまらなかった。帰宅してキャロルに報告する間、僕の隣で話を聞いていたブラッドリーは嬉しそうに小さな鼻を膨らませていた。褒められるためにしているわけではなかっただろうが、それでも大人2人に口々に讃えられることは、彼にとっても大きな喜びだったろうと思う。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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