「ここのお店、すごく美味しいって評判なんですよ」
「へぇ…そぉかぁ……」
結局、俺は断れなかった。揺れてしまった。自分を好きだと全身で語るシンクレアに、喜んでいる自分がいる。あの時もそうだったのだろうか。
順風満帆な生活をして、確かに愛を育んで…幸せだったのに。なのにどうしてか熱さに惹かれて、全てが終わるとわかっていて燃え尽きてしまった。
悪い人間だとは思う。むしろ、この世の中にいい人なんて存在しないだろう。流石に俺のように男と不貞をやらかして離婚した、なんて話は聞かないが、大抵股が緩くなってやらかす奴らで溢れている。だからと正当化するつもりは微塵もないが、でも、ありふれているんだ。
「…あの、僕より意識されるとやりずらいんですけど」
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