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    かがり

    @aiirokagari の絵文置き場
    司レオがメイン

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    かがり

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    ぷらいべったー引っ越し(2021.6.2)

    「食べることは生きることです!」……
    ケーキバース設定。司くんがケーキでレオくんがフォーク。 猟奇的にはならない。
    イメージとしては学院時代。

    #司レオ
    ministerOfJustice,Leo.
    #小説
    novel

    あまいきみ:司レオ・ケーキバース「ケーキ」と「フォーク」。
    一般的な意味合いから捉えれば「対」とは言い難いその名詞は、特定の体質として使用する際「被食者」と「捕食者」の意味が付随される。
    医学的には確か、長くて複雑な症状名があるそうだが、誰が最初にそう呼んだのか、その俗称は「フォーク」の凶暴性を強調する形で定着した。
    「フォーク」とは、カニバリストでサイコパスな殺人鬼。そんなレッテルは強固で根強く、そうして社会から排斥される。
    だから、それは隠し通さなければならなかった。

    高校2年生の終わり、荒廃した日常の中で、突如として消えた味覚。
    時折、特定の人物からふわりと感じるようになった、「美味しそうな」匂い。

    月永レオは、「フォーク」だった。





    「Leader!」

    一仕事を終えた司の声が、小さな楽屋の中で綺麗に反響する。
    機嫌が良いにしても珍しい声色で、つい顔を上げてみれば、彼が手に抱えた小さなケーキボックスには瀟洒なロゴが印字されていて、ああ、差し入れをもらったんだな、と腑に落ちた。

    いつも何かしらの菓子の匂いを纏っている彼は、そのことで泉から叱責を受けることも多い。
    それでも、嬉しそうに、楽しそうに頬張る後輩の姿は見ていて飽きなくて、つい餌付けのような与え方をしてしまっている。
    時折、お返しとして司から手渡される飴玉やらチョコレートは、やはり味は感じなかったけれど、「あなたの方こそcalorieを摂ってください!」と怒る司を見るのは何故だか好きだった。

    今日の仕事はラジオ番組へのゲスト出演。CDの販売促進のため、随時、ユニット内で2人組を作って数回に渡り出演しており、今回はレオと司の担当日だった。

    「こちら、お姉さまが持ってきてくださったんです。主催の方からの差し入れだそうで」

    ケーキボックスを高々と掲げては、有名なお店の甘味なんですよ、と語る彼の瞳は、キラキラと光を放つかのようで眩しい。
    なまものですので頂いてしまいましょう、と、司はいそいそと楽屋に備え付けの電気ポットからお茶を入れ、レオの隣の椅子へ腰を下ろす。
    そうして手渡された包みをそっと開いてみれば、王冠の焼印が押された、正方形の焼き菓子のようだった。

    「……サクサクしてるな」

    パイ生地だろうか。層の重なりがボリューミーなのに全然パサついていなくて、バターがたっぷり使われているのかなと思う。
    中からトロリと出てきた餡は、判別しにくいけれど、生クリームとジャムであるような気がする。

    隣に座る司はゆっくりと味わうように咀嚼していたが、レオの視線に気づくと己を嗜めるように小さく咳払いをしては、美味しいですねと微笑む。
    こういう時に嘘をついたり誤魔化したりしなければならなくなったことは、フォークになって心苦しく思うことの一つだ。
    無味の甘味を嚥下して、手元を早々に空にしたものの、それでも何故だかまだ、甘い匂いを強く感じた。

    「頬、付いてますよ」

    子供ですか、と呆れるように、司はこちらへ手を伸ばしてくる。
    彼は年齢よりも大人びた言動をすることが多く、時折レオに対して世話を焼くような振る舞いをすることがある。しかし、そこに混在する子どもっぽさこそがレオの好むところだった。

    「わっ……なにをっ」

    だから、ちょっとした悪戯心だった。
    口の端を拭ってくれたスオ〜の指を絡めとり、ペロリと舐めてみせる。
    そんな風にして、わたわたと慌てる後輩の姿を眺めようと、それくらいの軽い気持ちだったのだ。

    しかし、瞬間、ビクリと身体の動きを止めることになったのは、他でもないレオ自身だった。
    ――それは、明確に大きな「刺激」として神経を伝う。

    「…………っ?!」

    久しぶりの感覚は、それでも流石に間違えようがない……味覚だ。
    こんな、こんな事象を引き起こすことができるということは、つまり、彼は。
    混乱する頭のまま、ジンと痺れる舌先で思わず呟く。

    「『ケー、キ』……?」

    ――ぼたり。

    刺激の感覚が抜けず、無意識に唾液が口の端からこぼれ落ちた。
    アッと我に返った時にはもう遅い。
    口から出た言葉が霧散する訳もなく、近い距離で向き合う相手が聞き逃してくれるはずもなかった。

    「あなた……、どうりであまりご飯を食べたがらないと思ったら、『フォーク』だったんですか……?」




    (続)

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    自宅のある埼玉県に行くなら地下鉄の方が簡単なのは解っているが、あの地下独特の圧迫感と今日のむしゃくしゃ具合につけて地上線をおざなりに選んで座っている。新宿駅は時々始発になっているので便利だ。と、新倉はぼんやり開いたままのドアをみている。さっきみた映画がレビュー以上に酷くて今日一日を台無しにしたという気持ちが大きすぎて、動く気力がわかないでいた。
    人の群れにそって歩く妖怪は少なくない。人が草木動物を愛でるように、新倉も妖怪でありながら人間を愛でて、その結果映画鑑賞が趣味になっているわけだが、レビューでボコボコにされてる映画に興味何故か惹かれお金を出してしまったというより、時間を無駄にしたという後悔をわかっていながらに作ってしまった事にひどく落ち込んでいた。カットのテンポも話の流れも無理が多くて途中からいかに口の中で一個のポップコーンを何回、数多く噛めるか、という実験になっていた。そのせいでスタッフロール中慌てて残っているポップコーンをたべるはめになった。みんなスタッフロール最中に席を立って出て行っていたので助かった。私も出たかったがポップコーンに罪はない、寧ろ救いだったナァ。ずっと塩バター派だったが名前を失念した甘い味も美味しかった。
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