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    ゆるか

    書くタイプのオタク。ここは文字しかありませんよ!何でも食べる雑食だけど今はダミアニャにお熱です。

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    ゆるか

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    とある考古学者の話の番外編です。
    そういえば以前相互さん宛にちょこっと書いたのを思い出しました。よろしければお口直しにどうぞ。(お口直しになるかな…?)
    ダミアニャ成長if。

    #SPY_FAMILY
    #ダミアニャ成長if
    damianiaGrowthIf
    #ダミアニャ
    dahmia

    とある考古学者の話・番外編 ある日の考古学者の話 二一時三〇分バーリント駅。到着した汽車から一人の男が降り立った。その男はセル巻き眼鏡を外し、上着のポケットに忍ばせると、行儀良く締められたネクタイを緩め、ワイシャツの第一ボタンを外した。後ろに撫でつけた髪をくしゃりと乱し、大きく息を吐き出す。時計を確認し、スーツケースを引っ張りながら改札に向かい歩き出す。オスタニア大学助教授であるダミアン・デズモンドは学会に出席する為に地方に赴いていた。そのまま現地の発掘調査に参加し、本日ようやく帰って来たところである。
    (もうニ週間もアーニャに会ってない……)
     毎日仕事に忙殺されていた為、電話も四日前にかけたのが最後だ。せめて一目会えないだろうか。今から訪ねればまだ起きているだろう。駅前でタクシーを拾い向かえば、二十分程でアーニャが住むアパートに着く。ダミアンはタクシーを捕まえる為、ロータリーに出た。そこに停車している一台のリムジンを見て、小さく舌打ちした。後部座席の窓が音もなく開き、顔を出したのはダミアンの兄であるデミトリアスだった。
    「……兄貴。何でここにいるんだ。」
    「オレに知らない事はない。おかえり、ダミアン。報告を聞こう。」
     ……兄のデミトリアス・デズモンドはデズモンドグループの総裁であり、ダミアンの研究のパトロンである。更にはオスタニア博物館のスポンサーでもあり、兄の依頼を受け発掘調査に行った事もあった。何だかんだと月に一度は呼び出され、食事に付きあい報告をする事になっている。だが、それを今する事はないだろう。何せ一刻も早くアーニャの元へ向かいたいのだ。
    「今帰った所だぞ。違う日じゃ駄目なのか。」
    「パトロンの言う事が聞けないのか?」
     デミトリアスはゆったりと微笑んだ。ダミアンは舌打ちすると、運転手に荷物を預けリムジンに乗り込んだ。パトロンの機嫌を損ねるわけにはいかない。リムジンは滑るように夜の街を走り出した。向かった先はデズモンドグループが所有する三つ星ホテルにあるレストランだ。ダミアンは食事をしながら今回の調査結果を報告した。本当はわかっている。考古学の道に進む為、勘当同然に家を出た弟を兄なりに気をかけ、労う為にいつもこうして呼び出してくれている事を。デズモンドという重圧を一身に背負い、弟である自分を自由にしてくれた兄にはダミアンだって感謝しているのだ。
    「そういえばアーニャに会ったぞ。」
     ダミアンは瞠目して傾けていたグラスをテーブルに置いた。
    「はぁ?!いつ?」
    「お前に長い間放っておかれては淋しいだろうと思ってな。食事に誘ったんだ。」
    「何勝手な事してんだよ!オレのいないところで!」
    「アーニャは美味いものが食べられると喜んでいたが。」
     デミトリアスが弟を揶揄うような笑みを浮かべた。こちらは全くもって面白くないというのに。
    「……ったく、油断も隙もねぇな。帰る。」
     ナプキンを放り投げ、ダミアンは立ち上がった。荷物を受け取り、出口に向かう。その背に兄の言葉が届いた。
    「アーニャは元気そうに振る舞っていたが、淋しそうだったぞ。」
     デミトリアスの言葉を聞いたダミアンは大きく息を吐き出すと肩越しに兄を振り返った。
    「だったらさっさとオレを帰してくれれば良かったんだ。」
    「まぁ、そう言うな。オレだってお前と話をしたかったんだ。花を用意させるからアーニャに持って行ってくれ。」
    「誰が他の男が用意した花なんか持って行くかよ。」
     ダミアンは吐き出すようにそう言ってレストランを後にした。イライラしながらエレベーターのボタンを連打し、やって来たものに乗り込む。組んだ腕の右手の指先でトントンと忙しなく左肘を叩く。やがて一階に到着すると、エントランスに駆け出して客待ちしているタクシーに飛び乗った。目指すはアーニャが住むアパートだ。生憎花屋は閉まっていて用意できなかった。だが、兄が用意した花なんか持って行きたくなかった。幸いな事に明日は休日だ。朝は二人でゆっくりして、花は一緒に買いに行けば良い。時刻はそろそろ零時を回ろうとしている。やがてタクシーは目的地でゆっくりと停車した。車を降り、ダミアンは2階に住むアーニャの部屋の窓を見上げた。
    (……暗い。)
     部屋の灯りは消えていた。街灯に寄りかかり、ダミアンはアーニャの部屋を見つめた。
    (もう寝てるよな。会いたかった……アーニャ。)
     抱き締めて、キスして。それから寄り添って眠りたかった。アーニャの柔らかな熱を思い出し、再び溜息をつく。仕方がないと思いながらも、足はその場に縫い止められたように動かなかった。
    (アーニャ……)
     心の中で呼びかける。その時、アーニャの部屋の窓が開いた。そこから会いたかった人が顔を出す。アーニャはダミアンの姿を見つけると、花が綻ぶように微笑んだ。ダミアンはスーツケースを掴んでその場を駆け出した。二段飛ばしで階段を駆け上がり、アーニャの部屋の前に立つ。そのタイミングでガチャリ、と鍵が開けられる音が聞こえた。開けられたドアの先に、アーニャの姿。ダミアンは引き寄せられるように部屋の中に足を踏み入れ、アーニャの体をかき抱いた。背後でドアが閉まる音が聞こえた。アーニャの体から立ち昇る甘い匂いに、渇いた土に水が染み込んでいくように心が満たされる。背中に回された手がダミアンの背を労るように撫でた。
    「おかえり、ダミアン。」
     聞きたかった声が鼓膜を震わせる。自分はアーニャのようなテレパスではないのに、会いたかった、というアーニャの心の声が聞こえた気がした。愛しくて堪らない。
    「ただいま、アーニャ。」
     ダミアンはそう言って、アーニャの唇にキスを落とした。
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    ゆるか

    PROGRESSとある考古学者の話の番外編です。
    そういえば以前相互さん宛にちょこっと書いたのを思い出しました。よろしければお口直しにどうぞ。(お口直しになるかな…?)
    ダミアニャ成長if。
    とある考古学者の話・番外編 ある日の考古学者の話 二一時三〇分バーリント駅。到着した汽車から一人の男が降り立った。その男はセル巻き眼鏡を外し、上着のポケットに忍ばせると、行儀良く締められたネクタイを緩め、ワイシャツの第一ボタンを外した。後ろに撫でつけた髪をくしゃりと乱し、大きく息を吐き出す。時計を確認し、スーツケースを引っ張りながら改札に向かい歩き出す。オスタニア大学助教授であるダミアン・デズモンドは学会に出席する為に地方に赴いていた。そのまま現地の発掘調査に参加し、本日ようやく帰って来たところである。
    (もうニ週間もアーニャに会ってない……)
     毎日仕事に忙殺されていた為、電話も四日前にかけたのが最後だ。せめて一目会えないだろうか。今から訪ねればまだ起きているだろう。駅前でタクシーを拾い向かえば、二十分程でアーニャが住むアパートに着く。ダミアンはタクシーを捕まえる為、ロータリーに出た。そこに停車している一台のリムジンを見て、小さく舌打ちした。後部座席の窓が音もなく開き、顔を出したのはダミアンの兄であるデミトリアスだった。
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    ゆるか

    PROGRESS趣味全開で書いたパロみたいな話です。
    某考古学者の映画が大大大好きでそんな感じの話が書きたかった(о´∀`о)
    歴史好きが高じて考古学者になったダミアンの話。
    ダミアニャ成長if。年齢は20代後半辺り。ダミアンがガンファイトしたりスパイのような事をしたり何でもします。使ってる武器は趣味です笑って許してね。
    ふわっとした話なので深く考えず読んでくださったら嬉しいです。じわじわ書いていきます。
    とある考古学者の話 1 夜の闇を切り裂くように遠くから汽笛の音が聞こえた。南欧某国、オスタニアとの国境沿いの街。山間部に続く森の中をオフロード車が数台走り抜けている。追う方はこの国で幅を利かせるマフィア、逃げる方はこの国で遺跡調査を行っていた考古学者だ。オスタニア大学の考古学助教授であるダミアン・デズモンドは、山間部の遺跡から見つけ出したロザリオを手に国に帰る所だった。このロザリオは恩師であるジーク・シャーロット名誉教授が長年追い求めていた物だった。昨年不慮の事故で亡くなったシャーロット教授の遺言により、この研究をダミアンが引き継いでいたのだ。博士が残した膨大な資料を読み解き、そのロザリオをようやく手に入れる事ができた。だが同じくロザリオを狙っていた兄弟子であるライナー・エバンズ博士が、通じていたマフィアと共に追って来たのだ。エバンズは研究費を稼ぐ為、遺跡で発掘した遺物をマフィアに横流ししていた責でシャーロット教授に破門にされ、大学を追われた人物だった。エバンズは長年手伝っていたロザリオの研究をダミアンに引き継がれ、逆恨みしているのだ。ダミアンは助手として連れて来たアーニャを伴い、悪路を走り抜けていた。
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