花火は夏の風物詩というが、夏の気配はとうになく、涼やかな秋の空気に夜は冬の気配すら感じる夜に見るそれもまたいいものだ。
悟空とチチ、夫婦で野菜を市場に卸しに行った際、市場の職員にもらった今夏の売れ残りの花火セットで早速楽しませている今夜である。
長男である悟飯はもう成人も近い歳だが、年齢の離れた弟である悟天の世話をよくしてくれているからか、悟天とともに楽しむ術がうまい。また本日はささやかな楽しみながらも悟天の友人であるビーデルも呼んだので三人で楽しめているようだ。
花火には小さいながらも打ち上げタイプのものもあり、悟天が火をつけたがり、悟飯とビーデルがそれを優しく補助するのをチチは微笑ましく見守る。
火がつき、花火が上がるだろうと思った瞬間名前を呼ばれ、反射的に傍らの夫を見上げれば唇が重ねられていた。
ぱぁん、という音と共に光が弾け、夫の黒い瞳の中に、超化したときの翠が見えた気がした。