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    #毎月25日はK暁デー
    「チョコレートケーキ」「こたつ」「七五三」

    付き合ってるけあき

    ##K暁

    こたつに入ってチョコレートケーキを食べながら暁人の七五三の写真を見ている。
    「いや雑すぎるだろ」
    「何が?」
    「何がってわけじゃねえが……こう、雑だろ」
    同じ言葉を繰り返すKKに暁人は首を傾けた。
    こたつは高騰する電気代を少しでも節約するために安く入手したもので一人暮らしで暁人くらいしか来訪しないというかさせないKKの家にはちょうど良いサイズだ。
    こたつ布団も安価なものですませているが、暁人が肌触りと洗濯できることを重視したので入ってみるとこれがなかなかいい。こたつ初体験だった暁人は時々コタツムリ(KKの命名だ)になって寝かけてKKにベッドにつれていかれるほど愛用している。
    一度ここで事に及んだ時は暑さで死にかけたが。以降はKKが必ず電源を切るので逆にそれが合図になってしまった。
    「こたつは日本の冬に必須だって言ってたのはKKだろ」
    「まあそうなんだけどよ」
    煮え切らない様子で口に運ぶチョコレートケーキはKKの誕生日の市販のものとは違う、暁人特製のブランデーケーキだ。
    みんながKKを祝いたくてパーティーをしたのにケーキなんてガキの食うものだと憎まれ口をきくから(皆もう照れ隠しだとわかっている)大人向けのケーキたくさんあると絵梨佳が反論し、凛子がお酒のケーキの話をしたので試しに作ってみたのだ。
    自炊はそれなりにできる暁人だが菓子作りはほぼ未経験で、しかし菓子こそレシピ通りピッタリに作るものだということは知っていたので案外簡単にできた。
    特にKKは甘い生クリームよりビターなチョコレートのほうが好きで、そちらのほうが作りやすいらしいのも幸いした。
    麻里はブランデーの代わりに生クリームを入れたKK曰く見ただけで胸焼けするケーキを持参して女子会だ。
    つまり暁人は今夜KKの家に泊まりである。
    「ケーキ気に入らなかった?」
    「いや旨いぞこの酒びしゃびしゃケーキ」
    「おじさんってカタカナを頑なに覚えようとしないよね」
    完成後に更に浸しているのは事実だがあまりにもデリカシーがなさすぎると暁人はため息を吐いた。
    そして目の前にあるのは暁人の七五三の五歳の写真だ。
    父方の実家にあったもので、暁人は九月生まれなので五歳になってから撮ったらしい。もちろん記憶にはない。
    「猫又が欲しがるものってよくわかんないな」
    あの夜も令和の書やら招き猫やら集めさせられた。
    この写真も現物は渡せないのでコピーしたが満足したようだった。
    「別にオマエの写真じゃなくてもいいだろ」
    「KKの写真はないんだろ」
    猫又は『着物の男の子』を指定したので麻里と絵梨佳は除外である。エドとデイルが七五三をやっているはずもなく。
    必然的に暁人が先方に頼んで送ってもらったのだった。
    「収集するだけで悪用はしないって約束だし、さすがに今の僕と見た目が違いすぎてるから身代わりにもできないって言ってただろ」
    「オマエはデリカシーがないな」
    「酒びしゃびしゃケーキのKKにだけは言われたくない」
    「だいたい面影あるだろ……目元とか、笑い方とか」
    「親戚のおじさんみたい」
    うるせえなと管を巻くKKが何を不満に思っているかわからないでもないが、かといってどうしたものか。
    「僕の写真が欲しいならあげるし、撮ってもいいけど」
    「別にいらねえよ」
    こうである。わかってたけどねと内心嘆息してこたつの中央にあるクリスマスローズに目をやる。
    KKの誕生花であるそれはあくまで暁人が自己満足で買ってきたものだけれど、押し入れから引っ張り出した古ぼけた花瓶にきちんと飾られている。花の名前は忘れられてしまったがケーキと同じで気にいってくれていることは伝わっている。それで十分だ。
    暁人は最後の一口をすくいあげ、滴りそうなブランデーを軽く吸ってから口に入れる。つい先に舌が出てしまってはしたなかったかなと暁人は頬を赤らめた。
    「ああ、でも」
    とKKも最後の一口を飲み込んでコーヒーに手を伸ばす。
    きっとろくなことを言わないな、という予感が暁人にはあった。
    「ハメ撮りはしてもいいな」
    「……何を嵌めるの?」
    顔ハメパネル?と尋ねる暁人にKKははあ!?と信じられないものを見るような目で暁人を見る。しかし本当に知らないのだから仕方がない。
    KKはオマエ、そりゃあアレだと黒くて苦い液体をすすった。
    「千歳飴みてえな……いやもっと太いが」
    「七五三にそんな儀式あった?」
    「……それじゃあお暁人くん二十代の写真を撮ってみるか」
    KKがこたつのスイッチに手を伸ばしたのでようやく暁人は勘づいたがもはや手遅れだった。
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    na2me84

    DOODLE #毎月25日はK暁デー
    参加させていただきました。お題は『匂い』
    厭世的で嫌煙家の暁人くんのお話。
    sensory adaptation 雨の夜が明け家族とも一夜の相棒とも別れて、僕は日常に戻ってきた。妹を取り戻すことは出来なかったから、今までと全く同じという訳にはいかないだろうけれど、とにかく僕は一人生き残ったわけだ。それに意味があるかはまだ分からない。それでも、とりあえず僕がやらなければいけない事がまだ残っている。向こうで両親と共に旅立つのを見送った妹の現世での抜け殻に病院で対面し、身体も両親の元へと送り出した。その日は青空にふわりと薄い雲が浮かぶ、良く晴れた日だった。この世のしがらみを全て捨てて軽くなった妹は、きっと両親と共に穏やかに笑っているだろう。そうであって欲しい。

     追われるように過ごした日々が終わってふと気が付くと、これからどう生きていけばいいのかすら何も考えつかなくて、自分が空っぽになったように感じた。ほとんど物の無い空虚な部屋を見回して、置きっぱなしになっていたパスケースに目が止まる。すっかり忘れていた。あの夜の相棒の形見、最期に託された家族への伝言。これを片付けなくては。彼とは出会いから最悪で途中も色々あったが、最終的にはその関係は悪くなかったと思う。結局のところ、僕にとっても彼にとっても失うものばかりで、得るものの少ない結果だったとしても。
    5680

    りんご

    DONEK暁デー 『いたずら』 そして表題に戻る系。
    そんなつもりなかった二人がその気になる話です。
    せめて飴くらいは手元に置いとけばよかった!「ご飯? お風呂? それとも僕?」
    「オマエ」

    というわけでこの話は終わった。
    「そんな訳ないでしょ! 何考えてんだよKK!!」
    「いや何なんだよオマエ」
    「こっちが何なんだよ だよ!」
    「なんなんなんだよだよだよ」
    「あああ呪文にするなよ…」
    状況を整理するにしても、普通の生活を詳細に描写する程度のことしかできない。今回の依頼はKK単独の小さなものだったので、資料をまとめることで一日を過ごした暁人は、せめて疲れて帰ってくる相棒のためにと彼の自宅にてご飯や風呂の準備をしていた。合鍵を使って堂々と入り、勝手知ったる様子で冷蔵庫を確認し、風呂の栓を抜いておく。暁人があれこれ始めたことで多少は解消されたが、KKのズボラさは相変わらずだ。買うものの算段を付けて、流しに残っていた食器を洗い、一度外へ出る。必要なものを買い足して再び家へ戻り、手早く下ごしらえを始める。疲れている時はとにかく手軽さ手早さを重視したほうがいいだろう。あの面倒くさがりは手の込んだものを食べるくらいなら、そのまま寝かねない。炊飯器のスイッチを押して、玉ねぎと牛肉を切って皿に移しておく。冷蔵庫へいったん入れて、掃除するべく浴室へ向かった。そこからは家主の帰宅まで散らかったものを拾っておく作業だった。
    2601

    りんご

    DONEまじない、あるいは、のろい (ここまで読みがな)
    K暁デー「スーツ」
    お題的なこともあって結婚と葬送の話をどっちも書きたかっただけです。あっきーがバカ重い感じですが、その環境ゆえにうまく隠すことがうまかっただけで彼の本質はこうだろうなーとか思ったり。いつものごとく二人で喧嘩して、戦って、駆け抜ける話です。
    中の人本当にありがとうございました、お陰で細々と楽しくK暁を追いかけられました。
    呪い短くも長くもない人生を振り返るにあたり、その基準点は節目にある行事がほとんどだろう。かくいうKKも、自らのライフイベントがどうだったかを思い出しながら目の前の光景と類比させる。
    準備が整ったと思って、かつての自分は彼女に小さな箱を差し出した。元号さえ変わった今ではおとぎ話のようなものかもしれないが、それでもあの頃のKKは『給与三ヵ月分』の呪文を信じていたし、実際差し出した相手はうまく魔法にかかってくれたのだ。ここから始めていく。そのために、ここにいる隣の存在をずっと大事にしよう。そうして誓いまで交わして。
    まじないというのは古今東西、例外なく『有限』である。
    呪文の効力は時の流れに飲まれて薄れてゆき、魔法は解け、誓いは破られた。同じくしてまさか、まじないの根本に触れることになるだなんて思わなかった、ところまで回想していた意識を、誰かに強い力で引き戻される。
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