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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    pixivに載せた小説の再掲です。
    CPという感じの描写はめちゃくちゃ薄め。ほぼ無味レベル。これ執事閣下?閣下執事?よくわからないのでCPタグはなし。個人的には+のイメージ。
    リッヒが心を許すのは生涯閣下ひとりなんだろうな、と思いつつ書いたお話しでした。

    #ディスガイア4
    disgaea4

    心を許す証執務の間の休憩。
    珍しく出ていった従者を待ちながら、ヴァルバトーゼは本を読んでいた。
    今の仲間たちには天然な部分が色濃く見えているだろうが、元々彼は頭もよく、知識欲もある。以前も本を読んでいたら、「ヴァルっちって本とか読むの!?」と言われたのは記憶に新しい。
    だが本を読み始めて一刻程。

    「…遅い」

    出ていったフェンリッヒは、10分ほどで戻ると言っていた。
    なのに遅すぎる。そう気付くと本を読んでなどいられなくなり、ヴァルバトーゼはそっと本を閉じた。

    「何かあったか…?いや、あいつに限ってそれはないか」

    そこらの悪魔に絡まれたとて、そう簡単にやられる男ではない。
    信頼があるからこそ思うことだが、一度心に浮かんできたものは消えない。

    ─心配だ。

    傍を離れることがないからか、姿形が見えないと意外と不安になるものだ、とヴァルバトーゼはひとり納得する。

    「…仕方ないな、フェンリッヒの奴め。捜しに行くとするか」

    たまには少し長めの休憩になってもいいだろう、と立ち上がり、歩き出した。
    いつも小言ばかりの彼に、たまの小言をこちらも言ってやろうかと少しばかりワクワクしながら。


    フェンリッヒを捜して歩くヴァルバトーゼだが、彼の姿は捜しても見つからなかった。

    「あれ?ヴァルバトーゼ閣下じゃないッスか?おひとりでどうしたんスか?」
    「ああ、フェンリッヒを捜していてな。見てないか?」
    「フェンリッヒ様ッスか?…30分ほど前に歩いてたのは見たッスけど…」
    「どっちに行った?」
    「あっちッス」
    「そうか。わかった、すまないな」

    プリニーの言葉を聞き、そちらへ歩を進める。
    行く先々でフェンリッヒがどこに行ったかを聞き歩く。
    だが聞く人口を揃えて言うのは、「フェンリッヒが行きそうな場所に心当たりがない」とのことだった。
    それはヴァルバトーゼにとってもそうだった。フェンリッヒは一日のほとんどをヴァルバトーゼの傍にいるのだから、どこに行くのかなど主が知らなければ、誰も知る由はない。

    「むぅ、手詰まり、というやつか…一度戻るか…ん?」

    ふと窓の外を見ると、クーシーが見えた。
    それはフェンリッヒが飼っているものに間違いはなかった。
    こっそり飼っていたと言われ、どこにそんな暇があったのかと驚いた彼にはそのクーシーがそうだとわかった。

    「…ペットなら、フェンリッヒの居場所を知ってるのかもしれんな」

    これが駄目なら戻るか、と心で呟いてから、ヴァルバトーゼはそこへと向かった。

    庭へと下りて、ヴァルバトーゼは駆け寄ってきたクーシーを撫でた。
    主人の主だからか、ヴァルバトーゼは吠えられたことも噛まれたこともない。

    「久しぶりだな。いつも助かっている」
    「クゥーン」
    「…ところで、フェンリッヒ─お前の主がどこにいるかは知らぬか?捜しているのだが、見つからんのだ」
    「ワフッ」

    一声鳴くと、クーシーは歩き始めた。
    ついて来いという意思表示か、とヴァルバトーゼは足を進めた。
    庭木の陰になっていて見えないような場所に足を踏み入れると、そこに捜していた彼はいた。
    もう1匹のクーシーにもたれ掛かり、木陰で俯いている。だが、規則的な寝息が微かに聞こえた。

    「……眠っている、のか」

    普通の行為だが、ヴァルバトーゼは驚く。
    なぜなら、フェンリッヒが眠る姿をほぼ見たことがないからだ。
    フェンリッヒは従者として、主より先に起き、後に寝る。
    加えて休憩があっても眠ったりなどするタイプでは無いので、見たことがない。
    厳密には寝ていたであろう時はあったが、足音が近付いた瞬間に起きてしまうのだ。
    他の者へは警戒、ヴァルバトーゼには礼儀という理由だろうが。

    フェンリッヒがもたれていたクーシーはすでに起きていたらしく、チラリとヴァルバトーゼを見た。
    ゆっくりと彼は従者へ近寄る。触れられるほどの近く。そこまで寄ってもなお起きない。
    なんとなく、そっとその顔に触れた。

    「……ん」
    (…子供か)

    くく、と喉を鳴らしながらヴァルバトーゼが内心思う。身動ぎしながら、その口が小さく動いた。

    「…か、っか……」
    (…夢の中にまで俺がいるのか)

    物好きな奴め、と心の中で悪態をつきながら、ヴァルバトーゼはその身体を起きないように支え、ゆっくりとクーシーがフェンリッヒの下から出ていく。
    クーシーが居た場所にヴァルバトーゼが座り、足の上に頭を乗せた。

    ようやく解放されたのか、フェンリッヒの下にいたクーシーはゆっくり動くと身体を伸ばした。もう1匹も寄ってきて、2匹してヴァルバトーゼを見る。
    言葉もわからないが、言いたいことはわかった。

    「…お前たちの主は、俺が見ておこう。好きに行くがいい」

    どうやら2匹で遊びたかったらしく、その言葉に一緒に駆け出して行った。
    庭にあるのは、静かな寝息だけ。ヴァルバトーゼもその空気に気が抜け、木にもたれかかったままに目を閉じた。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    ─400年とちょっと前。
    まだ暴君と月光の牙だった時。諜報に駆け回っていたフェンリッヒは、ふとうたた寝をしてしまっていた。
    戻ってこないフェンリッヒを捜しに行ったヴァルバトーゼは、陰で寝ていた彼を見つける。

    『…帰ってこないと思ったら、眠っていたか。しかし、こんな所では寒かろうに』

    自分が寝る時に使っている布をかけてやろうかと近付いた瞬間、フェンリッヒは起き上がって飛びかかる寸前で気付く。

    『……!』
    『…っ、ヴァルバ、トーゼ…!?』
    『素早い動きだ。驚いたぞ』
    『……すまない、反射で』
    『いや、俺こそすまない。寒かろうと思ってな』

    すぐに体勢を解き、フェンリッヒが座り込む。

    『…寒くなどない。いつもこの格好だ』
    『そうか。…そんなに素早い反応が出来るということは、眠っている間に命を狙われることでもあるのか?』
    『敵が多いんだよ、傭兵稼業は。というか、アンタだってあるだろ』
    『あるが…問題は無い。俺は強いからな。…それより、眠いなら眠っていていいぞ。どうせまだ出発はせんだろう』
    『は?』
    『なに、今は「仲間」の俺がいるからな、お前の身の安全は保証しよう。眠気に負けて死ぬなど滑稽であろう。それが嫌であれば、今のうちに眠るがいい』

    隣に座ったヴァルバトーゼに、フェンリッヒはただ目を丸くした。

    『いい。人の気配が近くにあると寝つきが悪いし、眠れないんだ』
    『いいから無理にでも眠れ』
    『滅茶苦茶言うな、アンタ…』
    『眠れないのなら子守唄でも歌ってやろうか?』
    『暴君のアンタが子守唄とか…笑わせないでくれ。第一、オレはガキじゃない』
    『む、そうか?笑わせるつもりはなかったのだが…それなら、膝枕とやらでもしてやろうか』
    『……それなら、ってなんだ。アンタはどこからそういう俗な情報を仕入れてくるんだよ。……もういい。眠るから少し黙っててくれ』

    どうにか寝かせようと諦めない心に、ため息をつきながら言うと、ヴァルバトーゼは満足そうにククッと笑うと、『そうか』と返した。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    (あの時言っていたことが、まさか真になるとはな)
    「……ん…?」

    もぞ、と膝の上で動いた気配にヴァルバトーゼも目を開けた。
    すると、起きたフェンリッヒと目が合う。

    「…目が覚めたか?10分程と聞いたが、随分長い散歩だったな」

    語りかけるが、フェンリッヒはどうやら状況把握に時間がかかったようだ。
    把握した瞬間に寝起きとは思えない素早さで起き上がり、すぐに跪いた。

    「閣下、申し訳ありません…!!なんという御無礼を!!」
    「クックッ…いや、気にするな」

    元々怒ってはいない上、滅多に見ることのない間抜け顔も見たし、いい場所も見つけた。
    新鮮な体験をしたヴァルバトーゼはただご機嫌の様子で、フェンリッヒはただ困惑した。

    「…俺になにか言うことはないのか?」
    「は、はい…このような無礼を働かないように─」
    「違う。怒ってなどおらん。お前は誰の前でも寝たりしないだろう。それがここまでしても起きなかった。そこまでお前を酷使していた俺に文句はないのか、と聞いている」
    「とんでもございません。わたくしは閣下の手足も同然です、酷使などとそのようなことは…」
    「…俺の成すことはお前の成すこと、だったか?」

    以前、誓ったことをなぞらえてヴァルバトーゼが言う。

    「だが、お前は自分を俺の手足と言ったが、手足とて休む。お前が休むことに俺は怒りなどせん」
    「…有り難きお言葉を」
    「…以前、まだシモベではないお前と居た頃も、眠っていたことがあったな」
    「……そういえば、そんなこともありましたね」
    「あの時は膝枕をしてやろうと言ったら、怒られてしまったな」
    「閣下から、そのような言葉が出るとは誰も思いませんよ」

    体勢を解けと言われ、フェンリッヒはその場に座る。

    「あれから考えると、お前も俺に大分心を許したということだな。疲れもあるだろうが、こうまでされるまで起きないとは中々だ」
    「…主相手に心を許すなどと、生意気ですが…そういうことなのでございましょう」
    「何を言う。いつも言っているだろう、『信頼』が大事なのだと。一番長く共にいるお前が俺に心を許し、信頼してくれるのなら、これほど嬉しいことはないぞ」
    「前も言いましたが、わたくしはヴァル様のことは第一に信じております」
    「覚えている。お前が信じるのは俺と己の才覚のみだ、とな」

    悪魔なのに素直なヴァルバトーゼは、今の仲間たちのことも信頼はしている。
    だがフェンリッヒは未だに他の仲間たちを信用していない。
    それは悪魔として生きていた環境のせいか、彼の性格のせいか。

    「…よし。フェンリッヒ、長い休憩になってしまったが、そろそろ執務へ戻るぞ」
    「はっ」

    フェンリッヒを連れ、ヴァルバトーゼは執務室へと足を進める。

    仲間が増え、新党・地獄という名前がついた彼らだが、だからといって間柄や関係が変わる訳では無い。
    地獄でプリニー教育係をしているふたりは、今日も仕事がある。
    世界を救ったとて、その暮らしが変わることは望まない。

    ─今日も輝く地獄の月。
    その御許にはふたつの影。誓いと共にいるふたりは、少しの思い出話を経て、少し変わって騒がしくなった日常へと戻っていくのだった。


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    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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