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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ハウレス夢。
    過労で熱を出したハウレスが主様に看病される話。
    なおハウレスは回復したあと、ボスキやアモンから主様に甲斐甲斐しく世話されたことをさんざんからかわれたそうな。

    担当執事をつついてると、いやそのセリフそっくりそのまま返すよ!?って思うことが多くて、この話もそういうアレから生まれました( ˇωˇ )

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #aknk夢
    #ハウレス
    howles.

    きみに捧げる特効薬 今になって思い返して見ると、朝起きたとき、いつもより体が重いような気はしたのだ。けれど、頭が痛いとか咳や鼻汁が出るとか喉が痛むとか、ほかの症状がなかったものだから。少し疲れが溜まっているのだろうと、ハウレスは軽く考えてしまった。
    「おそらくは、過労だね」
     診察していたルカスが真剣な表情で告げるのを聞いて、ハウレスの主人はひどくショックを受けた表情になった。主様がそのように悲しそうなお顔をされる必要はないのにと、ハウレスは思ったけれど、熱があることを自覚してしまった体はやたらと重だるくて、口を開くこともままならなかった。
     ハウレスの異変に気づいてルカスの元へと連れてきたのは、他ならぬ主人だった。
     この日――。ハウレスは寝起きに体のだるさを覚えたものの、大したことではないと断じて普段どおりに仕事に取りかかった。屋敷中の窓を開けて空気を入れ替え、トレーニングをこなし、主人に起床時間を知らせにいった。身支度を済ませた彼女を食堂までエスコートするために手をとって、そこで眉間に皺を寄せ険しい顔になった主人に手首や首筋、額などを触られた。そうして、有無を言わさずここへ連れてこられたのだ。
    「熱が下がるまで、ハウレスくんは安静にしているように」
     ルカスはそう言って、解熱鎮痛剤を処方した。
    「いえ、そういうわけには……」
     薬を受けとったハウレスは、ぼんやりとする頭で答える。もらった薬を飲めば、熱はじきに下がるだろう。主担当を任されている以上、彼女を放って休んでいるわけにはいかない。もっともそれは半分以上建前で、本音を言えばただハウレスが主人の傍にいたいだけなのだが。
    「バカなこと言わないで! こんな高熱を出すほど疲れを溜めている人を、働かせるわけないでしょう! ハウレスは完全に回復するまで、休むのが仕事! ほかの仕事してるのを見つけたら、もう二度と担当執事にはしないからね!」
    「えっ」
     常にはない厳しい口調でそう言うと、主人は部屋を出ていってしまった。追いすがって許しを乞おうにも、熱に侵された体は力が入らず、椅子から立ち上がるにも一苦労だ。
     もう二度と、担当執事にはしない。主人に投げられた言葉の最後の部分が、ハウレスの耳元でぐるぐると反響した。


     その後。ハウレスはルカスの手を借りて二階の執事室へ戻り、自分のベッドで横になっていた。
     四人で使っているため普段は賑やかな部屋も、今はしんと静まり返っている。今ごろはフェネスもアモンも、自分の仕事をこなしているころだろう。ボスキはどこかでサボっているかもしれないが、ああ見えて彼が自分の仕事には誇りを持って取り組んでいることを、ハウレスはよく知っていた。
     働いている仲間たちのことを思うと、伏せっている自分が情けなく思えてくる。医者であるルカスや同室のフェネスにも、もっと自分を労るようにと繰り返し言われていたのに。体調管理もまともにできない自分に主人は呆れて愛想を尽かしただろうと、ハウレスは弱々しくため息をついた。いつも優しい主人から厳しく叱責されたことが、体調不良で弱った彼にはかなり堪えていた。
     そのとき、誰かがドアをノックする音が聞こえた。声を出すのも億劫で、ハウレスは顔だけを向けてドアを見つめる。やがてドアが開き、訪ねてきた相手が部屋へ入ってきた。現れた小柄な姿に、ハウレスは熱で幻覚でも見ているのかと、思わず自分の目を疑ってしまった。
    「あるじさま……?」
     呼びかけに応じるように、主人は僅かに口許を緩めた。幻覚ではないと気づいたハウレスは慌てて起き上がろうとしたけれど、「そのまま寝ているように」と制されてしまう。
     主人は大きな盆と袋を携えていた。盆はベッド脇の棚に、袋は床に下ろして、彼女はハウレスの額に触れる。熱が高いせいだろう。普段は温かく感じる小さな手の感触が、今はひんやりとしていて気持ちがいい。
    「うーん……さっきより上がってる気がするなあ。これだけ熱が高いと辛いでしょう。ロノが胃に優しいスープを作ってくれたから持ってきたんだけど、食べられそう? 少しでも食べて薬が飲めれば、多少楽になると思うんだけど……」
    「ありがとう、ございます……いただき、ます」
     なんとかそう答えると、ハウレスは今度こそ体を起こそうとした。主人は背を支えたり、クッションを用意したり、額や首筋の汗を拭ったりと、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
     しかし、仕える相手に世話させるわけにはいかない。ハウレスは懸命に「自分でやる」と訴えたが、主人も「休む以外のことはするな」と譲らない。ロノの特製スープを主人の手ずから食べさせられる段になって、ようやくハウレスは諦める気になった。受け入れるしかないことも、世の中にはあるのだ。
    「あの……主様……」
     食事を終え、薬も飲んで人心地ついたハウレスは、このまま看病を続けるつもりらしい主人を仰ぎ見た。世話されることをひとまず受け入れはしたものの、どうして彼女がここまでしてくれるのか、ハウレスには理由がわからなかった。
    「どうして……」
    「他のみんなはそれぞれ仕事があるしねえ。特にやることのない私が看病するのが一番合理的でしょ? それに……ハウレスは頑張り屋さんだから。ちゃんと休んでるか、見張っていないと心配だと思って」
     冗談交じりに答えた主人は、ハウレスの目元に手を翳した。促されるように目を閉じる。暗闇の中でも、すぐ傍に主人の気配があるのがわかった。
    「おやすみ、ハウレス。ゆっくり休んで、元気になってね。……さっきはあんなこと言ったけど、できればハウレスには、この先も私の担当でいてほしいからさ」
     こっそりと打ち明けられた本音に、ハウレスは心底から安堵した。呆れられた、愛想をつかされたと思ったのは、杞憂に過ぎなかったらしい。そうであるならばハウレスがするべきは、ゆっくり体を休めて一日でも早く仕事に復帰することだけだ。
     しばらくして主人がハウレスの目元から手をどけると、彼は静かに寝息を立てていた。担当執事の寝顔を見つめる主人が酷く優しい表情を浮かべていたことは、彼女自身しか知らない。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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