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    住めば都

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    住めば都

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    あくねこ、ボスキ夢
    ※2023BDカードのストーリーの内容にかなり触れています。読んで感じたことをこねこねしたので…

    ボスキの誕生日にとある不安を感じた主様が、ボスキと約束を交わす話

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknk夢
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #ボスキ
    boskis.

    そんな"いつか"が来ませんように 仲間たちに囲まれ、盛大に祝われているボスキの姿を眺めながら、女はふと顔を曇らせた。
     祝いの席にはふさわしくない表情であることも、気づいた執事たちが心配することもわかっている。けれどどうしても、わき上がる不安を心の中に留めておけなかった。
     考えていたのは、今日の主役であるボスキのことだ。
     パーティーが始まる前のこと。彼女はボスキと二人で話をする時間を得た。その場で用意していたプレゼントを渡し、話の流れで、彼の髪のセットを手伝うことになった。
     ボスキの過去の話を聞くこともできて、とても有意義な時間だったのだが……ボスキという男の本質をまた一つ知った分、考えずにいられないことがあった。
     ボスキ・アリーナスというひとは、それが自分に唯一できることで、かつ大切なひとのためになるとわかれば、相手を悲しませることになるとわかっていても、実行に移してしまう。そういう意志の強さがある。
     だから――もしも女を守るための方法がたった一つしかないとなれば、たとえそれが自分を犠牲にする方法だったとしても、ボスキは躊躇うことなくその道を選ぶだろう。
     思い至って、女はぞっとした。誰かを犠牲にしてまで生きていたくなどない。ましてやボスキは、彼女の大切な執事の一人だ。
     執事たちに悲しい選択をさせずに済むよう、十分に気をつけているつもりだが、この世に絶対はない。まして、この世界は天使という脅威にさらされている。天使と戦う彼らの力を解放する関係上、女もまた安全地帯に隠れているわけにはいかなかった。
    「主様?」
     呼びかけられて、女はいつしか俯いていた顔を上げた。目の前にいたのはボスキだった。パーティーの主役だというのに、輪を抜け出して来てくれたらしい。
    「どうした、気分でも悪いのか? そんなに飲んでるようには見えなかったが……」
     その言葉に、女は軽く目を見開いた。ボスキを祝うためのパーティーだというのに、彼はいつものように彼女の様子を気にしてくれていたらしい。
    「気分は、大丈夫。ボスキの言うとおり、そんなに飲んでないし。ただ……」
     まさか、ボスキが自分を犠牲にする可能性について考えていた、などとありのままを答えることもできず、言葉を濁す。はっきりしない態度の女に、ボスキは眉を寄せた。
    「ただ? なんだよ」
    「なんて言ったらいいのか……まだ考えがまとまってなくて」
    「そう、か……」
     言語化が難しいことを伝えれば、それ以上の追及はない。新緑の隻眼に、心配を滲ませるばかりだ。
    「ごめんね。せっかくのお祝いの席なのに、暗い顔しちゃって……これじゃあボスキだって楽しめないよね」
     申し訳ない気持ちで無理やりに口角を上げると、ボスキはムッとした表情になる。義手でないほうの手が伸びてきて、むにむにと女の頬を引っぱった。
    「俺の前で表情を偽るんじゃねえ。無理して笑われるほうが、よっぽど腹が立つ」
    「え……ごめん……」
    「まあ一番むかつくのは、あんたにそんな顔をさせてる原因だけどな」
     忌々しいとばかりに舌打ちする姿に、女は苦笑を禁じ得ない。その原因がボスキであることは、彼には黙っておこうと思った。


     三百年ぶりの誕生日は、想像以上にいいものだった。
     祝いの言葉にプレゼント。好物の肉料理と美味い酒がテーブルに並ぶパーティー。中でも一番嬉しかったのは、やはり主人が祝ってくれたことだ。
     その彼女は、パーティーの途中からなにやら憂い顔をしていた。なにをそんなに悩んでいるのやら。訊ねてみたが、うまく言葉にできないとはぐらかされてしまった。
     無理して笑わなくていいと言ったのは本心からだったが、それはそれとして、やっぱり面白くはない。その悩みとやらは、俺の誕生日より大事なことなのか。思ったものの、執事として許される範囲を明らかに超えているから、伝えることはしなかった。
    「着いたぞ、主様」
    「うん…………」
     だいぶ酒が回っているのか、単に眠いだけか、主人はずいぶんぽやぽやした様子だ。ボスキのエスコートで自室のソファに腰を下ろすと、彼女は盛大に欠伸をした。
    「大丈夫かよ……着替えの手伝いにフルーレを呼ぶか?」
     いつもなら、部屋まで送り届けてすぐ退室するのだが。この調子では、彼女はソファに座ったまま寝落ちしてしまいそうだ。
     心配するボスキを尻目に、主人はとろんとした目をぱしぱしと瞬く。そしておもむろに腕を伸ばすと、ボスキの衣装の袖を引いた。
    「ねえ、ボスキ」
    「ん? どうした?」
     見上げる首が辛そうで、ボスキはソファのそばに膝をついた。そうすると、今度は彼のほうが見上げる側になる。
     ボスキは執事たちの中では比較的小柄なほうだが、それでも女性である主人よりは幾分か背が高い。こうして見上げるアングルは新鮮だ。
    「あのね……私はみんなの主様だけどね、命令とかは、あんまりしたくないなって思ってるんだよ」
    「ああ、知ってるよ。あんたはそういうひとだよな」
     脈絡のない話題に、ボスキは首肯を返しながら苦笑を浮かべた。どうやら主人はそれなりに酔っているらしい。
    「だから……だからね。もし私が、これは命令だよ!って言うことがあったとしたら……それは、どうしても絶対に叶えてほしいことだからね」
     ボスキを見下ろす瞳は、相変わらず眠たげだ。けれどそこに宿った光はひどく真剣みを帯びている。
     彼女は今、なにかとても大切なことを伝えようとしている。そう感じて、ボスキは居住まいを正した。
    「それだけは……覚えておいてほしい」
    「わかった。しっかり覚えておく。あんたが命令なんて言葉を使うのは、よっぽどのことだってな」
    「うん……お願いね、絶対ね」
    「ああ、絶対だ」
     しつこく念を押す主人を安心させてやりたくて、ボスキは左の小指を差し出した。彼女は自分の小指を絡めて「指切りげんまん」と上機嫌で歌い出す。
     「嘘ついたら」のところでフレーズがしばし止まって、「ボスキの夕ご飯だけ一週間お肉なし」と続いた。仮初でも「針千本飲ます」とは言えない優しさを愛おしく思えばいいのか、一週間肉なしというボスキが一番堪える罰を考える厳しさ慄けばいいのか、難しいところだ。
     最後の「指切った」は、発音がだいぶ怪しかった。絡めた指が解けると、主人は力尽きたように眠りへ落ちてしまった。
    「……ったく」
     笑みを含んだ嘆息を零すと、ボスキは意識のない体をそっと抱き上げた。ベッドに運んで、布団をかけてやる。結われたままの髪を解いて指を通すと、ほのかに甘い香りがした。
    「おやすみ、主様」
     今日という日の終わりにもう一つ、特別なプレゼントをもらったなと、暢気に考えているボスキは知らない。
    その約束が、女の考えた"いざというときにボスキを守る方法"であったことを。
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    😭💙🙏💙💙💙😭🙏💙💙💙💙💒😭💙😭💙💙💙💙
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしています。
    「おかえり」ユーハン夢。
    予定の時間を過ぎても帰ってこない主様を待ち続けるユーハンの話。

    翌朝、ほかの執事からもユーハンがずっと待ってたと話を聞いて、主様は某ワンちゃんを思い浮かべたとかいないとか。
    待てと言うならいつまでも 主人の帰宅時刻五分前になったのを確認し、ユーハンは出迎えのため本邸の玄関へ向かった。
     今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
     ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
     そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
     事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
    ※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
    向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話

    主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……
    安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
     近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
     彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
     それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
     だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
    「……主様」
    「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
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    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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    ***

    時刻は3時間程前に遡る。

    ある依頼の為に私はハナマルと二人で街に出ていた。依頼の内容を卒なくこなしたハナマルのリクエストにより街で一杯飲んでから屋敷に戻ろうかと話していた時だった。運悪く天使の襲撃に遭ってしまったのだ。相手は知能天使ではなかったものの、数が6体と多かった。いち早く力の解放を行い、ハナマルは見事天使を倒したのだったが…。

    「…悪い、主様。ちょっと疲れちまった。馬車まで歩けそうになくて…何処か泊まれる宿屋ってありそうかい?」
    天使を倒しホッとしたのも束の間、そう言ってハナマルはよろよろした足取りで路地裏に入ると、壁にもたれ掛かりズルズルと座り込んでしまった。大丈夫?と声をかける私の声が聞こえるのか聞こえていないのか、ハナマルは浅い呼吸をするばかりだ。これはマズイと、私は近くにいた通行人に声を掛け急いで宿屋を探す。幸いにも空きのある宿屋を見つけたため、途中で薬等を買込み宿屋へ向かった。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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