私のニンジンちゃん【オル相】「このニンジンの甘酸っぱいやつ美味いですね」
白い皿を持ち上げ、相澤くんは細切りのニンジンをぱくぱくと何度も口に運んでいる。傍らにはよく冷えたグラスのビールが置かれていて、咀嚼と嚥下のコンボはとどまるところを知らない。
あまりの暑さに散歩の途中で日陰を求めて立ち寄ったこじんまりとした南国風レストランは半分ほどの席が埋まっていた。大きな窓に面した眺めの良い席を案内される途中、相澤くんの視線が他のテーブルのグラスに注がれているのを見かけて、苦笑しながら飲んでいいよとメニューブックを差し出せば、いえ、などと言いながら最後の最後にビールひとつ、と我慢できなかった様子で注文する様子が本当に可愛かった。
エアコンの効いた店内だけれど、茹だるような暑さの中を歩いて来た私達にはまだ涼しさが足りない。私は烏龍茶を、相澤くんはビールを清涼剤として、他のお客さんの邪魔にならないよう軽くグラスを合わせ水分補給に勤しんだ。
1298