刳京♀、浮時♀(ただし最後は浮京♀予定) 薄らと差し込んだ陽射しに目蓋を擡げる。見えた土壁の具合に慣れはなく一瞬戸惑うが同じく見えた背中に合点がゆき、特有の気怠さなどものともせずひと息に身を起こした。
「あら。おはよう」
「おはようさん。昨日は助かった」
「そりゃ良かった」
京楽はもう起きてからしばらくしているようで化粧が直っていた。まめな奴と嘆息しないでもないがそんな無益な真似をする趣味もなく、そのままのそのそと壁に寄る。
彼の礼服が掛けてある。刳屋敷が着たが、彼のものではなかった。京楽が用意していたものだ。刳屋敷は昨日に彼女が畳紙から出してくれるまで存在も知らなかった。採寸された憶えもない。
「目算で作ったから肩周りが少し厳しかったよね。まだ増える予定かな」
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