水も滴る強い風が吹き荒ぶ。雨も降っているせいで視界は悪く、隣の男が舌打ちをした音が雨音に紛れて聞こえた。
春の嵐と突然の雨に襲われたのはつい先程のこと。次の戦に向けた交渉事のため、情報収集に出かけたその帰り道だ。先ほど舌打ちをした煉骨は、頭巾が飛ばされないよう手で抑えている。隣を走る睡骨の前髪も、強風で後ろへと撫で付けられていた。向かい風で目を開けているのも大変な中、行き先に大きな影を見つけ睡骨は口を開く。
「向こうのでかい欅の辺りに建物が見える」
「立ち寄れそうか」
「なんだろうな、ありゃ……使ってなさそうな……。……近くに鳥居が見えるぜ」
「神社か。ちょうどいい。急ぐぞ」
二人で雨風の中を走り抜け、どうにか神社へと辿り着く。服はずぶ濡れ、足元は泥が跳ねて水浸しだ。神社に人気は無く、二人は閂を開けて中へと入った。
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