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    Asahikawa_kamo

    @Asahikawa_kamo

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    Asahikawa_kamo

    PASTrf四神パロ、朱雀が街でお散歩する話。
    フォロワーさん300人記念としてネップリに登録していたお話でした。
    朱雀散歩「あ、みなと!」
    「みなとだー!」
    「おーおーちびっ子元気か~?」
    「げんきー!」
    「そーかそーか、んならええやん」

     朱雀領南西部にある、桔梗の市。この領で一番に大きい観光名所であり商い処でもあるその市には、時々ミナトと呼ばれる華美な見目の青年が訪れることがあった。市で働く者の間では特に有名で、彼がやってくると近いうちに何故か大きい商機が舞い込むなどという迷信さえあるような謎の男として、まことしやかに囁かれていたのだ。
     とはいえ彼自身が何か市へと干渉するわけではなく、ただ他の客と同じように市で物を買い、飯を食い、時折馴染みの子供と遊んでくれるという、ごくごく普通の客であった。やはり昔馴染みも多いからか、見知らぬ者が増えていれば挨拶をし、見知っていたはずの誰かが居なくなっていたらその所在を訊いたりもするが、それは他の馴染みの商人でも良くやることである。人によっては彼を旅人だと言う者もいたが、それにしては旅人らしい様相もしていない。何処に住んでいるのかも分からないとされているため、市で働く者たちは彼がどこからやってきているのか、何者であるかということをてんで知らないのである。
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    Asahikawa_kamo

    PASTリプきたセリフで一コマ描く のタグでなうさん(@.nau_bookshelf)から頂いたセリフ「ねぇ僕たちはどこから来たんでしょうね」で書きました。
    大分前に書いた現世終焉idの続き、終了した現世で一人生きているmcの話です。前作読んでなくてもふんわり分かると思います。

    前作はこっち☞https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21141522
     ゆるやかにつま弾いた音に、歪みを感じる。調律がずれていると気付いたのは、何も考えずに指先が弦をいくつか弾いた後の出来事だった。チューナーを探すために立ち上がった剣持は、ぎいと鈍く軋んだ椅子を置き去りにしながら車の中を歩き出した。
     ──現世の終焉というものは、今回顧するならば思っている以上にあっさりしたものだったと、剣持は記憶していた。始まったものはいつか終わりが来るだろうとは確かに思っていたものだが、それがまさか隕石の衝突や環境破壊によるものではなく、未知の化物によって荒廃する羽目になるとは剣持も思ってはいなかった。とはいえ特段何かが大暴れしていたわけではなく、それこそ前述の通り隕石の衝突から始まり、その衝撃による地盤沈下と大津波、異常気象から引き起こされた環境破壊による地球荒廃が直接的な原因ではあったのだが。結局のところその諸々が一番最悪な形で噛み合ってしまったのは、聞く話によると桜魔皇国で言う「魔」と呼ばれる未知の化物のせいだった、らしい。ただその辺りのことを剣持本人は色々説明された割にはうまくピンとこなかったので、自分の意識範囲外で何かしらされて、この世界は滅びに向かっているのだなということだけは判断出来ている。
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    PASTあまりにも中二病がすぎるrf異能パロ。気狂いが途中で覚めたためにお話も途中で終わってます。
    特殊設定がすぎる、中二もすぎる、今回の主人公はid。まじで特級呪物と化した。ゆるして。
    異能パロ① 人が異形の生物に変貌する現象は、遡れば十九世紀後半のヨーロッパから始まっているとされていた。とある小さな村で起こったその悪夢の始まりは、現代の魔女裁判を彷彿とされる疑対象の磔刑と火炙りで一度は途絶えたとされていた。が、気付かぬうちに世間の認知外で少しずつ、病魔のように広がっていたのだと誰かは言う。
     『それ』になった者は、関節の痛みから始まる。身体中の関節が軋み出し、気が付かぬうちに短期間で身長が──否、四肢が伸びるのだ。そうして足と手が細長い生物と化した後、全身が白く変化し、人間であった意識も面影も失われては、ただ人を襲うだけの異形と化す。故にそれを人は、白化獣ゲファレナと呼んだ。
     二十世紀も半ばをとうに折り越した日本。首都、東京。紅蓮に沈む夕焼け空を少しばかり見上げていたとある青年は、現代では珍しい黒の羽織りを翻しながら歩いていた。グラデーションになった青緑の裾は、既に失われかけている新緑を彷彿とさせる。揺れるブロンドグレーの淡い光彩は、その奥に潜んでいる青空にも良く似た双眸を隠しながら、少しの風を起こしつつ人気のない雑居ビル群の中を進んでいた。
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    PASTリプきたセリフで一コマ描く のタグで葛餅さん(@.kzmt1110)から頂いたセリフ「きみが見る景色を見てみたかった」で書きました。
    本当の兄弟になりたかった🥂✨の話です。だいぶ解像度の悪いホスクラ描写、モブ姫が出てきます。
     醒めきらない頭が、網膜に光を取り込む。ああ朝かと思った不破の視界には、立ち昇った太陽が映り込んでいた。眩しさに目を細めた彼の隣で、わあと小さな声を上げる女性の声が耳へと滑り込んでくる。

    「ああ、もう朝なんだ。眩しいね、ミナト」
    「……そうだね」

     朝六時過ぎの歓楽街はひどくさみしい。闇夜の中で浮かび上がる不夜城のように、あちこちで誰かの声がしたり、ネオンがうるさく輝いているのが不破の日常であった。誰かの顔色を伺うのは特段苦だと思ったことはなかたが、時折頭の裏がぼうとすることはある。ただそれさえ不破は隠すことが上手く、夜の仕事中にそれが誰かにバレることは一度もなかった。
     既に何件かアフターと称してバーを梯子した後だからか、隣にいた姫は少しばかり酔いが回っているようで口調がふわふわと怪しい。丁度道端を走っていたタクシーを停めて彼女を乗せると、姫は不破の胸ポケットへ紙切れをするりと滑り込ませてからぽんぽんと叩いた。確認せずとも、それが無言のアフター代のつもりであることは何となく察する。おそらく黙ってバーの料金を払っていた不破へのお返しのつもりなのだろう。奢りのつもりだったが、ここで今変に押し問答しても、と一瞬過ぎった不破へ笑いかけた彼女は、ひらりと手を振ってタクシーへと乗り込んで行ってしまった。どこか敵わないなと思ったのは、彼女がもう古い常連客だからかもしれない。
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    PASTリプきたセリフで一コマ描く のタグでLS+さん(@.ls_w_rr)から頂いたセリフ「もっとできるはず」で書きました。
    去年あれだけ魅せてくれた彼だから、今年もてんこもりで魅せてくれるんだろうなという想いを込めて、🌞のとある朝焼けの一コマです。
     はたと窓の外を見ると、濃紺の空の中に橙色が薄掛かっているのが見えた。ああ、気付かぬうちに徹夜してしまったのかと思い出した青空の瞳が、握り込んでいたアコースティックギターを傍らのスタンドに置いて立ち上がり、ベランダに続く勝手口の窓を開ける。からからと引かれたレールの音と共に、身体の芯に染み込んでいきそうなほどの寒々しさが肌をぴりぴりと突き刺した。
     朝焼けにたなびく白い息が、冷えた空気を震わせる。彼は時々、配信の後もこうして気ままにギターを鳴らしていることがあった。頭の中に駆け巡る音を拾って、書き留めて、そしてまた鳴らして。それを繰り返しているうちに朝を迎えてしまうこともしばしばある。ゲーミングチェアから立ち上がる一瞬のうちに見たディスコードにはいくつかの連絡が来ていたが、今それを返すとおそらく一部の面子に怒られるだろうというのは彼自身も何となく勘付いていた。主に紫髪の先輩とか、あとは白髪の同期とかに。故にそれはまあ、後程返すかと何となく考えたりなどしたが。
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    Asahikawa_kamo

    PASTテス勉してるmcとそれを応援するrfの話。
    かち、かち、と時計の鳴る音に混ざりながら、ペン先がノートを滑っている。机に向かっていたその背中が、ふと伸びた。上げた視線の先は壁掛けの時計。既に、午前二時を回っているところだった。
     集中の糸が少し途切れたその緑色がぐっと背伸びをする。流石にそろそろ寝るべきかと巡る思考と、書きかけの勉強の後。ここまで、このページまで解き終わって答え合わせをしてしまったら寝よう。そう思いふと息を細く吐いた彼のスマホが、ぶぶ、と音を立てる。いつもであれば勉強中はそもそも耳にさえ入ってこないその鳴りが、ちょうど休憩中故か気になってしまったので、彼──剣持は、伏せていたスマホを持ち上げてちらりとロック画面を見た。
     剣持刀也はライバーである。しかしそれ以前に、高校生でもあった。この年で仕事をしているとはいえ、彼の本業は間違いなく学生だ。それはライバー仲間誰しもがそうであるだろうが、きちんとどちらも両立できていなければ胸を張って学生兼ライバーだとは到底言えないのである。故に剣持は自分が学生であるということもおろそかにはしたくなかった。今目の前に広がっているそれも、ちょっとした努力の一環。数日後に控えたテストのための追い込み勉強だった。
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